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♣¯☾¯♣ 黒羽快斗side
「はじめまして、速水寧音と言います。よろしくお願いします」
先生の後に続いて、音をたてずにやって来たソイツは、どこか不思議なオーラを出していた。
♣¯☾¯♣
「寧音ちゃんって、どこの高校から来たの?私、中森青子って言うんだ」
爽やかな栗色の髪、透き通るような空色の瞳をした転校生に話しかける幼馴染の声が聞こえる。
転校生というものに興味は無いが、一応聞き耳をたてる。
「中森ちゃん、うちは、大阪にある私立改方学園高等部から来たん。よろしくお願いします」
「へぇ!大阪から来たんだ!ここら辺の事で知らない事とかあったらなんでも聞いてね!」
「おおきに」
転校生によって短く終わったその会話は、オレだけでなく周りにも聞こえており、当然オレの隣にいる白馬の耳にも届いていた。
「私立改方学園高等部と言ったら、西の高校生探偵の服部平次くんが有名ですね」
「服部くんの事を、ご存知で?」
「えぇ、まぁ。僕も高校生探偵として活動していてね。彼とは何度か会った事があるのだよ」
「そうなんやな。ちなみに、君は?」
「名乗っていませんでしたね。僕は白馬探と言います」
「白馬くんやな。隣の彼は?」
白馬と転校生の会話を聞きながら、2人を横目で見ていたオレの事を急に転校生──寧音は見た。
驚きはしたが、お得意のポーカーフェイスで隠した。
「彼は黒羽快斗くんです。マジックが得意でクラスのムードメーカー的存在でほぼ毎回の全国模試1位の座に降臨しているのも彼ですね」
「お、おう」
白馬に願ってもいない自己紹介をされ、一応返事をする。
「全国模試1位……頭がえぇんやな」
素直にそう言われ、少し驚く。
そう言われたのは久しぶりだな。
青子にもよく言われるが、素直にそう言われるのは久しぶりだった。
「黒羽くんて、マジックするんやな。見せてもろてもえぇ?」
「おー、いいぜー」
寧音にそう言われ席を立つ。
まずは簡単に手の中にトランプを出現させた。
♣¯☾¯♣ 速水寧音side
「黒羽くんて、マジックするんやな。見せてもろてもえぇ?」
ダメ元でそう言ってみる。
だが、人がよすぎる彼は「おー、いいぜー」と笑顔で了承した。
まず彼は席を立つと同時に手の中にトランプを出現させた。
実際に見ると、より驚きが倍増する。
彼は滑らかな手つきでトランプをシャッフルさせ、カードを地面と平行にして見えないようにした。
「どれが1枚取ってオレに見られない様に数字やマーク確認して元に戻して」
言われた通りにランダムにカードを1枚取り、数字とマークを確認する。
スペードの5だった。
それを、元に戻してと言われたが先ほどあった場所とは違うところに入れる。
こういうのはよくある。
“ボク”が取ったカードが何かあてたりするやつだ。
ただ、彼はそんなんじゃなくもっと高難易度のマジックをするはずだ。
「んじゃ、three…two…one……zero!」
彼がzeroと言った瞬間、ボクのセーラー服の胸ポケットの中からポンと言う音がした。
ポケットの中にはトランプのカードが入っており、スペードの5だった。
「うわぁ、どうやってやったん?いつの間に」
「へへへっ、すげーだろ?」
「せやせや」
「黒羽くんは、もっと大掛かりなマジックもできるんですよ」
「へぇ、そうなんや。凄いなぁ」
知ってる。
知ってるよ。
黒羽くんが凄腕マジシャンだって事も、
世間を騒がせる怪盗キッドだって事も、
ボクの義理の従兄弟だって事も。
──だって、『___』だから。