枢軸国として彼と共にしているが、なんだか最近俺の心は焦りのような恐れのようななんとも言えない感覚に襲われる。
本の文字を追っている間もチラチラと彼の姿が視界に入る。
日本刀の手入れをしている顔は”美しい”この言葉に尽きる。
捻りのない褒め言葉と言われればそれまで。
だが足りない頭で必死に考えた言葉がこれなのさ。
くっきりとした目は刀を凝視し雑念がない。
再び読書に戻ろうとしてもその表情は脳裏に浮かび続けている。
異性でもないのに意識させられてしまうのだ。
「私が居ると集中できませんか?」
唐突だった。
態度で表したことはなかったが勘というものだろうかどうやらバレバレらしい。
「いや…まったく」
「そうですか?」
なんとなくからかわれているような言われ方でむず痒い。
クスッと笑ったようなおかしな調子で言われては弄ばれているようだ。
この第三帝国を侮っているのだろうか。
「お前こそ俺がいて気が散らないのか?」
「図星ですか?」
頭が真っ白になった。
こうやって心中で考えていても、それは全て照れ隠しなのだろう。
なんだか気持ち悪い。
「どういう意味だ?」
「そのままの意味ですよ?」
「生意気になったな」
「そうですかね?」
そんなこと知りたくもないのに何故教えるのだ。
東洋のくせに。
参った、 こう言っては誤魔化してるとしか思えない。
「俺の勝手だろ」
にやつきそうな唇を抑えるのに手が一杯だった。
「そうですか」
日本刀を鞘に収めゆっくりと立つと、
「私はイタリアさんの部屋へ行きますね」
「は?」
思わず本音が出てしまった。
あいつはどうも気にくわない故につい反応してしまう。
「なにか問題でも」
「いやなにもない」
襖の前から動かず振り返りじっと微笑みながら私の目を見る。
「ふふ」
「なんだ?」
「貴方の下からはいなくなりませんよ」
そう言い残し部屋をあとにした。
変に胸が締め付けられる。
額が熱い…
無自覚にも俺は彼に気があるのかもしれない。
ここ最近の妙な感覚は大体把握できたがとても煩わしい。
今も鼓動は内側から叩かれるように大きい。
ばれたことに対する焦りか彼の突拍子のない言葉に対する同様かは定かではない。
「はぁ…」
栞を挟み忘れたせいで、なんページだったかはもう忘れた。
見ると手汗でシワになっていた。
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