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「今日ぐらい遊んだっていいじゃないか」
そう言って笑う君の顔はとても辛そうで、とても……
彼は今日死ぬ
病気でもなんでもない
ただの呪いだ
誰がその呪いをかけたのか、どんな呪いなのか、分かるものはいない
ではなぜ彼が今日死ぬと言うことがわかるのか……
彼の勘だ
全く笑える
なにが勘だ
苛立ちながらも子供達や数多い友人たちと楽しそうに遊んで彼の方を見ていると何故だか涙が出てきてしまった
私は彼が嫌いだ
とっても。
視界に入るだけで腹が立つ
それに彼と私は正反対の性格をしていて、相性が全く良くない
一緒に過ごしたのもたったの一ヶ月だ
なのに何故泣いているのか
決して悲しいわけじゃない。
悲しいわけじゃないんだ…
あぁ、止まらない
ここから離れないと
私は早足で人通りの少ないところへ行った
路地裏へ入り、頭を勢いよくぶつける
いたい。
それでも涙は溢れるばかり
「ああっ!!くそっ!!!」
後ろから、人の気配がした
というか、さっきからしていた
見なくてもわかる
彼だ
長年過ごしてきた友達を置いて泣いている私のところへ来るなんて、なんて趣味の悪い
「なに」
彼に背を向け問う
「俺のために泣いてくれてるのか?ん?笑 」
ほんとイライラする
「なんであんたなんかのために泣かなきゃいけないの」
嫌いだ
「てか、なんで私のところに来たのよ」
「早くお友達のところに行きなよ」
「えぇー、どうして?」
「俺はお前に会いたくてついてきたのに〜」
プチンッ
何かが切れる音がした
そして次の瞬間、私は彼の頬を叩いていた
涙でぐちゃぐちゃになった顔で
「ふざけなさいよ!」
「私がどんな気持ちで、今ここにいると思ってんの!?」
「なのにあんたはヘラヘラ笑ってさ!」
「こっちの気持ちを少しでも考えたらどうなの?」
「……ごめんなぁ笑」
「被害者ヅラしてんじゃないわよ、」
「だから嫌いなのよ」
あぁ、止まらない。
全てが溢れてきちゃう
こんなこと言いたいんじゃないの
貴方のこと好きなの。
愛してるの
出会った時から、ずっと……
貴方がいなくなるなんて嫌よ
私には耐えられない
いかないで、いかないでよ
私を見て
あぁ、でも全部私のせい
貴方となんて出会わなければよかったのに
「貴方となんて出会わなければよかったのに」
「…………流石に傷つくぞ」
「えっ、あ、ごめん、違うの今のは…」
ここで嘘ついたら貴方は後悔するかしら
そんなことしてはダメよ。
なんて、頭ではわかっていてもうまくいかないもので口に出してしまった
「いや、違わないわ」
「あんたなんかに出会わなければ私も自由気ままに生きれたのよ」
「そう、全部あんたのせいよ!」
「全部全部、」
「あんたが勝手に私の呪いを貰ったのが悪いのよ」
あぁ、そんな顔しないで
「私が気づかないとでも思った?」
「気づくに決まってるでしょ」
「魔力も簡単に使えて、血も吐かなくなって、息苦しさがない」
「確かにその前日に実験してたからほんとに治ったのかと嬉しかった」
「でも、違和感がずっと残ってるの何かわからない違和感が」
「それでも気づかないふりをしてた」
「だんだん、確信が湧いてくるの」
「どれだけ私が絶望したかわかる??」
「私はこんなの望んでなかった」
「どうしてこんなことするのよ泣」
「……サユに生きて欲しいから」
「サユを、愛してるから」
「っ、なんでそれを今いうのよ!!」
「あんたは本当に私のことをわかってない!」
「あんたに生きて欲しいのはこっちのセリフよ!!」
「あんたを愛してるのも………泣」
「ねぇ、いかないで」
私は縋るように彼に寄って行った
「ライないない世界なんて嫌よ」
「おいてかないで、私も連れてって」
「おねがいよライ」
「おねがい、」
「ごめん……」
「………………」
「ねぇサユ」
「一生のお願い。ずっと俺だけを見てて」
「……あんたなんて大っ嫌い泣」
「サユ、愛してる」
そう言い、私たち抱き合いながら唇を重ねた
最初で最後のキスだった
彼は、消えていく
呪いによって死ぬ者はなにも残らない
私は彼のいないただの服を抱き、塵となって彼の後を追うようにして闇の中へ帰る
そうか、そうなのか、呪いだったのは私か……
人に模し、彼に恋をして、彼に呪いが移ってしまった
そして、彼はそれに気づいていた
彼が今日死ぬというのをわかっていたのも…
私は呪いを移したんじゃなく、彼自身が転移させたのだ
自殺
はぁ、私は利用されただけか…
愛した男に、
なんと、哀れなのは私の方だったか、
呪いで死んだ以上、呪うことすらできない
200年後
「今日ぐらい遊んだっていいじゃないか」