Slup後編
今回はウパさん→←Sさん なのですが
途中描写でレイレイのようなものが存在します。
スレウパです。くどいですがスレウパです。
前編を読んでから後編読んでください
レイマリさん視点から続きます
ウパさん視点は一旦お休み
sideライム
「レイマリさん、この前は手ひどくフッてごめんなさい。付き合うのはできないですけど…最高の友人としてなら、いつまでも側にいますよ」
「えっ…い、いいんですか…?」
そんなあまりにも俺に都合の良すぎる提案が、レイラーさんから出された時、自分が夢の中にいるような気がした。
レイラーさんに想いは届かなかったけど、側にいてくれるのなら___もう独りじゃなくなるなら、十分すぎるくらいだった。
「これからは、私が側にいますよ。…同じ想いは、返せないですけど…」
「いいや!十分すぎますよ!!ありがとうございます!レイラーさん!」
この時、浮かれに浮かれまくっていた俺は気付けなかった。
レイラーさんが、俺を可哀想な目で見てきていた事。それと___とある人が、俺の前から姿を消した事に。
違和感を覚えたのは、一週間が経った頃だった。
いつも付けてるヘアピンが無くなったような、些細な違和感。側にあって当たり前のものが、急に無くなってしまったような、言いようのない焦りと不安感。
「レイマリさん今度めめ村メンバーで遊びに行きましょう!」
「おー!いいですね〜。あ、その日ってウパさんの都合どうでしたっけ?ウパさん最近、めめ村にも顔出してないじゃないですか」
どうしようもできない感情に呑まれそうになった時、レイラーさんの声が現実に引き戻してくれた。
いつもいつも、レイラーさんは私を救ってくれる。その声で、その手で、その態度で。特に素敵なのは、瞳だ。
あの宝石のような赤い瞳が___。
___あれ?おかしいな。
レイラーさんの瞳は、水色だ。浅い海が光を反射しているような、淡くて綺麗な瞳。赤い瞳と間違えるはずがない。
俺は、レイラーさんの瞳で救われてたはず。でも、記憶の中に残っている瞳は赤色で。
赤い瞳をしていたのは___誰だった?
「…レイマリさん?急に難しい顔して、どうかしましたか?」
急に座り込んで唸り始めた俺を心配してくれたのか、レイラーさんが隣にしゃがみ込もうとする。
「…ダメッ! 」
「え?な、なんですか!?」
しゃがもうとした所を俺に妨害されて、レイラーさんが尻餅をつく。一拍遅れて、自分が何をしたのか理解した。
「あ、す、すみません!」
何をしてるんだ、俺は。レイラーさんは、ただ自分を心配してくれただけだというのに。
でも、ダメだったのだ。隣に座るのは、レイラーさんじゃなかったはず。レイラーさんじゃなくて、他の人でもなくて、俺の隣にいて欲しい人がいたはず。
どんな人だ?どんな声をしていた?どんな髪色だ?髪型は?服装は?
少なくとも、レイラーさんじゃない。レイラーさんは、俺の隣にいて欲しい人じゃない。
俺が隣にいて欲しい人は___
寂しい時に慰めてくれる人だ。悪戯好きな、子供のような声をしている。髪色は水色。髪型は、肩まで届くくらい。
俺の、俺の側にいつも居てくれたのは__。
___レイマリさん!ほら、桜が満開ですよ!
バチ、と目の前に電流が走った。
束の間見たのは、桜を背にして笑う君の姿。
なんだ、覚えてるじゃないか。
俺が、俺が好きなのは_____
「ウパさん……」
ウパさんだ。ウパパロンさん。レイラーさんじゃない、他の誰でもない、ウパさん。
ポロポロと涙が零れる。会いたい。ウパさんに会いたい。会って、抱きしめたい。
「…ようやく気付いたんですね。まったく、遅すぎますよ」
やれやれ、といった顔でレイラーさんが立ち上がった。こちらに歩いてくると、俺の前で仁王立ちする。
「これからバカなレイマリさんのために、全てを話してあげます。聞き終わったら、とっととウパさんの所へ行って、謝罪してきなさい!」
そう言うと、レイラーさんは語り始めた。
side ローズ
「…レイラーさん…」
私は重い口を開いて、語り出した。
「…レイマリさんを、フッたって聞きたんですけど。流石に酷くないですか?レイマリさんは、ちゃんとレイラーさんの事が好きだったんですよ!?」
最初はオブラートに包んで言うはずが、話しているとレイラーさんへの嫉妬や憎悪で、感情を剥き出しにして怒鳴ってしまっていた。
自分の感情すら上手くコントロールできないことに、自己嫌悪する。半ば八つ当たりで来たとはいえ、流石に怒鳴るつもりはなかった。
「…すみません、怒鳴るつもりは…」
「いや、私も悪いので…」
自業自得とはいえ、気まずい空気に耐えられなくなる。
レイラーさんが気まずそうに目を泳がせたあと、小さく俯いてあの、と声をかけた。
「…でも、レイマリさんの好きな人は私じゃないと思うんです」
「そんなわけ___」
「聞いてください!」
私が言葉を遮ろうとした時、レイラーさんが初めて怒鳴った。小さな拳を握りしめて、プルプルと震えていた。
「レイマリさんは、私といる時や、他のメンバーといる時、いつもウパさんを探してたり、見つめてたりしてるんですよ!?」
「それに、ウパさんを見てるときは、すっごく幸せそうな顔してるし、甘えてるし、ウパさんの隣を死守してるし!!」
これが好きじゃないわけないじゃないですか!と、レイラーさんが一息ついた後叫んだ。
「……そんなわけ、ないじゃないですか」
なんとか絞り出した声は、弱々しく震えていた。レイラーさんの言葉を信じたい。信じられない。だって、私があんなに側にいたのに、レイマリさんは一人ぼっちと感じていたのだ。
私なんて、いてもいなくても変わらない。
レイラーさんの言葉を信じてしまいたかったが、現実はこれだ。夢を見てはいけない。これ以上、傷つきたくなんてない。
それに___レイマリさんにとって、私が側にいるより、レイラーさんの方が幸せになるに決まっていた。
だから、私は___
「…レイラーさん、一生をかけての頼みがあるんです」
_私は、レイマリさんの前から、消えよう。
「…レイマリさんの側にいてあげてくれませんか?恋人としてが無理なら、友人としてでもいいですから」
ポタポタとフローリングに小さな水溜まりができてゆく。視界が歪んで、全てが曖昧になる。絞り出した声は、嗚咽に染まっていた。
「えっ、な、泣かないでくださいよ…。泣くほど辛いなら、ウパさんがレイマリさんの側にいたらいいのに…。きっと、レイマリさんだって、そっちの方が…」
「…いいから、お願いですから、レイマリさんの側にいてあげてください…。迷惑は百も承知ですけど、どうか…」
どうか、レイマリさんの笑顔を曇らせないで。私が愛してやまない、あの笑顔を。
レイラーさんは、しばらく困惑して辺りを見回したり、手をワタワタと動かしたあと、ため息をついて
「…わかりました。友人として、レイマリさんの側にいますよ」
「…ありがとうございます…」
そう呟いて、ノロノロと帰り支度を始める。これ以上レイラーさんの家にいても、迷惑をかけるだけだ。
「…本当に、いいんですね?」
去り際、レイラーさんが放った一言が、いやに私の心に残っていた。
side ライム
「___って、訳 です」
レイラーさんの口から全ての真相を聞いたとき、俺は罪悪感で死にたくなった。
ウパさんは、ずっと俺の幸せのことを考えていたのに…俺は、子供のような八つ当たりや我儘ばかりで…。ウパさんがどれだけ俺のために心を削ってくれたのかを、理解してなかった。
「…ウパさんは今どこに!?」
「…自分の家にこもってますよ」
レイラーさんが言い終わるか終わらないかのところで、俺は既に駆け出していた。
角を曲がり、狭い路地道を走り抜け、いつもの交差点をまっすぐ通り抜けると、見慣れたウパさんの家が見えて来た。
震える指でチャイムを押す。
しばらくしたあと、トタ、トタ、とゆっくりな足音が聞こえ、ドアが開かれる。
もう、俺とウパさんを阻むものは無い。
sideローズ
ピンポーン。
チャイムの音が、来客を知らせる。
「………」
寝過ぎて頭痛がひどい頭を抑えて、 ノロノロとドアの方に向かって、ゆっくりとドアをひらく。
ドアを開くと、次の瞬間体中に訪れる衝撃と人の温もり。その温もりが、いつか私が手放した温もりだと気付くのに、時間はかからなかった。
「ウパさん!!!ごめんなさい、ごめんなさい…!!俺、ウパさんの事が好きだったのに…。勘違いして、見ないようにして、迷惑と我儘ばかりで……ごめんなさいっ!」
ぎゅうぎゅうと私を抱きしめながら、叱られた子供のように泣いているレイマリさん。
俺、ウパさんの事が好き。
それはずっとずっと望んでいた、幸せな夢。ずっとずっと望んでいた、優しい温もり。
今、私とレイマリさんを阻むものは無い。
なら、伝えてしまおう。私の、この想いを。
「__私も、私もレイマリさんが好き…!」
そう言い終わると、目から涙が溢れてくる。私は今度こそ温もりを手放さないよう、レイマリさんを抱きしめ返した。
きっとこれは、夢じゃない。
幸せな現実を、二人で歩いていける。
コメント
22件
なーるへそ、思ってる好きとは〜っていうのは相手が違うって言う意味があったのね
やっぱりすごいな〜 恋愛分かんなくても何となく感情移入できる
遅れに遅れてごめんなさい…!!