家のリビングからは、テレビの笑い声が漏れていた。母と父が並んで座りお笑い番組を見ている。
凛は、同じ空間にいるのに、そこに自分の場所は無いように感じていた。
嫌われているわけじゃないただ、自分がいてもいなくても彼らの日々は変わらないそう思ってやまなかった。学校でも同じだ友達と言える人物が誰一人もいない。
そう思った瞬間、ただ消えたいという願いがゆっくりと胸に溶けてまさっていく。
静かに息をつき、立ち上がる「道具があればもう少し簡単なのかな」そんな考えが浮かんだのは、それが逃げではない何かに思えたからかも知れない。
その日の夜、凛は玄関をそっと開け外に出た。親たちはすっかり眠っていた。
「あの店なら何かあるかも」そんなきたいを胸に抱きながら誰もいない夜道を一人歩き出した。
昔潰れた飲食店。
立ち入り禁止のテープだけが朽ちたまま残り、近所では「幽霊屋敷」とも呼ばれている。
今の凛には、そんなことなどどうでも良かった。
道具が一つ手に入れば、それで十分。明日には、消える方法くらい見つけられるかも知れないそう考えて凛は店の中に入って行った。
店の中は、しばらく手入れされていないので真っ暗で、床には調理器具や生ごみが放置されたままになっていた。床を歩くと、床がきしむ音が店内に響いた。
凛は何か使えそうなものはないかと辺りを探索していると、店内の奥の方からカチャカチャと金属が触れ合うような音が響いていた。
誰かがいるでも怖いと言う感情は湧かない。むしろ、胸の奥がざはついた…それはもしかしたら、自分にとっては願った展開かも知れない。
凛は、息を潜め音の方へゆっくりと進む。半壊したドア越しに覗き込んだそして、凛は足を止めた。
そこにいたものは、人間の形をしているけれど、どう見ても人間ではない存在だった。
そいつは、凛と同い年くらいの少女だった物を前にして淡々と食事をしていた。少女だった物の腹を丁寧にナイフで裂き内臓や腸などを抉り出しては口に運んでいた。
化物に食べられている少女はまだかろうじて意識はあったらしく口をぱくぱく動かし体は激しく痙攣を起こしていた。そのため化物がいる空間は、彼女の体から出ている尿やべんでとても臭かった。
やがて化物は、少女を食べ終わると凛の方に顔を向け一言「君今何か見た」その目は完全に化物の目だった。
普通の人ならすぐに逃げるか怯えて動けなくなるかなのだか、凛は違った。凛はこの時生まれて初めて心の底から笑顔で笑っていた。「ねえ…私も食べてよ」
コメント
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私、怖くてもホラー好きなんで見ちゃうんですよね… 最高ですっ!