睨む化物と凛の間に静かな沈黙の時間が流れたやがて、化物が先に口を開いた。
「君は食べ物の匂いがしない…味も薄そうだし肉も締まっていないこのままじゃ不味い」
不味いその言葉が凛には奇妙なほど救いようのない言葉のように聞こえた。
「じゃあどうすれば食べられる私になるの」と化け物に聞いてみた。
化物はしばらく凛を観察したあと、「君一人では無理だ」と淡々と言った。
「そっか…」凛は肩お落とすと、背を向けた。
その時「待て」鋭く落ち着いた声が、凛の背中を止めた。
「君が食べ頃になるまで、毎日面倒見てやる」
凛は、ゆっくりと振り返る。「私を食べてくれるの」
「ああだから、生きて俺の元にいろ私が美味しい食べ物にしてやる」
凛の胸に、確かに光る燈があった。それは希望なのか絶望の始まりなのか自分でも分からないただ、化物の言葉は、この上なく必要とされている感覚に近かった。
こうして死にたい少女と、少女を食べごろに育てたい化物との奇妙な共同生活が静かに始まった。
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