テラーノベル
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──────いえもん視点──────
【最高神】は話を続ける。その饒舌な口は止まることなく、 ペラペラと情報を話す。まるで、俺たちを脅威とみなしていないように。話してしまっても何も問題がない、という事実をつきつけられていた。
「はははwいやー次は何について聞きたい?遺言としてその言葉、受け取ってあげるよ。」
そう【最高神】が言うと、俺の口が勝手に動き出す。
「───!!お前!過去を知っているなら覚えているだろう!下界には手出ししないと…!!契約違反だ!」
その声は紛れもなくノイズだ。俺の思考を蝕むように、ノイズの記憶が頭に入っていく。パンクしてしまいそうな情報量。処理しきれない。
「ん?…あぁ、勇者の方か。契約、か。くっふふw滑稽だったぞ。力を手に入れて、魔王を殺して。ぜーんぶ神の掌の上だと言うのに。お前は所詮はコマに過ぎなかった。それだけだとは思わないか?」
そう言って、俺を見て嘲笑の笑みを浮かべる。ノイズは押し黙ってしまう。───え、勇者?おとぎ話の中の登場人物の?そう疑問に浮かぶが、すぐにかき消される。───神がいるんだから勇者もいるだろう。謎の納得感があった。
「…ッ!!それでも、契約を守ってこそ完璧な───」
「なぜ、人間ごときの契約を聞かなければならないんだ?お前に聞く。お前は豚が、牛が、鳥が食べないでくださーい、殺さないでくださーいといったら食べないのか?野菜が切らないでーって言ったら大人しく切らないのか?───そんな間抜けなことはしないだろう?」
まるで、正論のようにそいつはいってくる。俺たちの常識という物差しでは測れない。その事実を突きつけられる。
「あぁ、勇者。ひとつ教えてやろう。お前は神に愛されたわけじゃない。むしろ嫌われていたんだ。精霊王との賭けのために生まれたただのコマに愛着が湧くと思うか?死んで欲しいやつを愛すと思うか?」
「───あぁ、そうかよ。俺も神が嫌いなんだ。同じだな。」
「ははw人間ごときが好き嫌いを語るな。今すぐにでも消してやりたいが…お前と、本体の魂に神の力が入ってるからな。すぐに殺せなくてすまないな。」
そう言って、誠意の欠けらも無い謝罪を神は吐き捨てる。謝罪と言うよりも、煽りのために使われたものでしかないが。
「あぁ、それと『茶川いえ』。お前はな、初代様のお気に入りみたいだぞ。良かったなw」
そう言って、そいつは俺を真っ直ぐと見つめる。矢のごとく鋭いそれは俺を貫いてしまいそうだった。
「お前の能力は【主人公補正】。どんな危機に瀕しても神が、幸運が味方する。実に厄介だとは思わないか?」
最初にまず俺に能力があったことに驚く。俺は、ただの能力なしのただの人間だったはずなのに。突然過去を塗りつぶされたかのように真実を突きつけられる。俺の中が見透かされている気分。心底気持ち悪い。
まあ、つまりと最高神は続ける。
「お前の今までの努力はな、ぜんぶ、ぜーんぶ能力のおかげだったんだよ!めめ村のやつがなんでお前を殺さないと思った?仲間?絆?───違う。能力によって無意識下に殺せなかったんだよ。最終的にお前は全員と仲良くなった。お前のおかげ?みんなのおかげ?───違う、能力という神の力のおかげなんだよ!」
「───え?」
そんなはずない。即座に否定しようとした言葉が出てこない。心のどこかであった疑問が、知りたくない事実を、最高神によって無理やりこじ開けられていく。違うなんて言えない。だって、実際俺も何故だろうと思っていた。人間の俺に優しくしてくれて、平等に扱ってくれて。実力を評価してくれて。それが、実は俺ではなく、能力の影響?───もう、訳が分からない。心が乱されていく。穢されていく。黒く塗りつぶされていく。
そんな俺に追い打ちをかけるようにそいつは話を続ける。
やめろ、聞きたくない。そんなことを思ってもそいつの言葉はするりと耳元へと囁かれる。
「死神はな、お前の中にいる勇者にそっくりだからお前を仲間に入れたんだ。見られていたのは、評価されてたのはお前じゃない。中にいる勇者だ。」
「───違いまッッ!!」
「違わないさ!だとしたらお前らは人なんか平気で見捨てる!人のことを言えない口だけなんだよ!!私は真実しか言わない。だけど、お前たちは?嘘で補い、真実を語らず、仲間の振りをする。───どっちが悪なんだ?」
めめさんが即座に否定する言葉を言ってもそいつは意にもとめずに俺だけに詰め寄る。確実に心を壊そうとしているのだろう。目的はわかった。こいつの言葉は嘘である。───そう思っても、溢れる涙は止まらない。だって、本当だと思ってしまったんだから。
「あぁ、まだまだ教えてやろう。お前の中にいる勇者はお前の前世だ。過去だ。普通ひとつの体に魂は2つも入れない。常識だ。だが、実際にお前の体には2つの魂がある。それはお前たちが同じ魂だからだよ!簡単な話だ!はっはっはっwだが、同じ魂なのに価値は平等じゃないみたいだぞ?可哀想にな〜掌の上で踊らされちゃって。」
───やめろ、やめてくれ。聞きたくない聞きたくない聞きたくない。何度も唱えているのに、その悪魔の囁きは止まらない。ずっと脳内でうずまき、心を抉る。痛い、痛い痛い。
周りの声なんて聞きたくない。嫌だ嫌だ嫌だ!!
「───ふざけるなッッ!!」
その瞬間、俺の耳をつんざくように強い怒号が響いた。その声の主はルカさんで、その目には怒りが浮かんでいた。
「価値が違う?仲間じゃない?掌の上?───何言ってんだよ!価値が違う?仲間じゃない?そんな訳ない!俺達は、いえもんは仲間だ!中身がなんであれ、種族がどんな奴でも!思い出は、絆はある!掌の上?違う!それなら俺達はとっくに殺されて終わりなはずだ!お前も予想外なんだろ…?俺達が3人もこの場にいることがッ!!」
「吸血鬼風情が何を語る?神の何を知ってそう言うんだ?私はあくまで真実を話しただけだ。私は、お前たちの全てを知って───」
「嘘だな…!!」
最高神の話をルカさんは途中で切り返す。そして、震える声で笑いながら言う。
「なら、俺を残すのは悪手だろ…ッッ?」
そう言って、ルカさんは笑って俺たちに向き直る。───血を吐きながら。
「がハッ…はは、は。やっぱり。上手くいきました。俺たちに神の力が宿っているのは本当みたいです。───ただ、ちょっともう───。」
そう言いながらルカさんは地面に膝をつく。最高神は初めて慌てた表情を見せる。
「な、何をした!お前の力はたかがしれている…!!お前自身の弱点を消したところで私になんの意味が───」
「俺の能力は2つですよ?ふふっ。解析不足みたいですね…。」
そういってルカさんは大声で宣言する。
「お前に俺の弱点全てを与えた───!!!感情も、寿命も、日光も、銀も、ニンニクも、十字架も───それに、俺、本当の力取り戻しちゃったみたいです。」
皮肉ですよね、とルカさんが続ける。
「ヒナが死んだことで、俺は能力が覚醒したみたいなんですよ…。ふふ、ははは。俺も、神に愛されちゃってましたよ。」
「何を、しやがった…?なんで、なんで私は怯えて───」
「お前に、この世界にある全ての弱点を与えました…!!───代わりに、俺の寿命は、もう無理みたいでしたが…。すみません。あとは頼みました…。めめさん、いえもんさん」
そう言ってルカさんは無表情で死ぬ。───感情という物を弱点として認識し、最高神に付与したのだろう。───自身の感情をけずって。
ルカさんは、最後の最後までかっこよかったのだ。───翻弄された俺と違って。勇敢に、仲間を信じたのだ。
「───ちゃんと、仲間じゃんか…。」
つぶやきに近い声が、そう喉を通った。
ここで切ります!ルカさん退場です!けど大活躍でしたね!うーん正直バッドエンドルートで行こうと思ってたんですが…ルカさんがこんなに頑張ってくれるなら…まあ、メリバにはいけるかもしれません!あらゆる弱点の付与。対価は寿命。うーん強いですね!強いて言うなら1人しかその力は使えないこと…。今回は敵1人だったのでそんな弱点なかったですね!ルカさんの弱点付与を使ったのがヒナさんにみせたのと神界で使ったの計2回だけなんですよねー。完璧を自称するくせに抜けてるところがあったんですねー。まあ、正確には仲間を完全に頼ってなく、ただの駒としか見てないからでしょうけど。
それでは!おつはる!
コメント
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ルカさん退場か・・・でも最後の最後に最高神に弱点を大量につけて逝ったから多分いえもんさん達勝てる・・・よね?なんでだろう、普通なら勝てるはずなのに仲春さんの作品だと勝てなくて闇落ちも想像できる・・・
皆がるかさんのタヒを探ったり悲しんだりしてる中【主人公補正】っていう能力のせいで初代最高神が師匠なんじゃないかと思い始めてきた私。
本当に全てが完璧なら反抗する存在って多分現れないわよね