テラーノベル
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#百合
第4話 「夏の日の優しい栞」
昼休みのチャイムが鳴る。
教室には一気に笑い声が広がり、生徒たちがお弁当を広げ始めた。
あやは机の上に開いたノートを見つめたまま固まっていた。
「……。」
真っ白だった。
午前中。
宇宙論の授業を聞いているうちに、一つの仮説が頭へ浮かんだ。
そこから先は止まらなかった。
宇宙。情報。観測。世界線。
(これ!繋がるかも!?)
内心ワクワクしながらペンをノートに走り書きしながらひとつの仮説を組み立てているうちに
気づけば授業は終わっていた。
「や…やってしまった…」
あやは冷や汗をかきながら空白のノートを眺めた
確かここのログ期末テストに出たはず…
ふにゅうという虚しい小さな悲鳴をあげ
額を机へこつんと預ける。
「授業はちゃんと聞いてたのに……。」
黒板の内容だけが、綺麗に頭から抜け落ちている。
「エルならノート取ってるかな……。」
隣の席を見る。
「……あ。」
いない。
そうだった。
今日の昼休み。
エルは楽しみにしていた**『もぎゅもぎゅ学・特別講義』**へ参加している。
「梓……!」
今度は廊下へ視線を向ける。
しかし、生徒会室へ向かう梓の姿がちょうど角を曲がって消えていった。
今日は昼休みの生徒会会議の日だった。
「あぁ……。」
完全に詰んだ。
あやは机へ突っ伏した。
「誰か……ノート……。」
教室を見渡す。
けれど、誰に借りればいいのか分からない。
そのときだった。
ふと、一人の女子生徒の姿が教室で目に入った。
おっとりしているような可愛らしい小柄な少女
柔らかな少し猫毛なむぎ色の髪 優しそうなセージグリーンの瞳
胸元には宇宙学とかかれた一冊のノートを抱えている
あやがもの欲しそうに少女のノートをじっと眺めていると
ぱちっと少女と一瞬目があった
慌てて視線を逸らす
少女はゆっくりこちらに近ずいてきた
「これ……探してるの、ノートだよね?」
やわらかい陽だまりのような声がゆっくり語りかけられる
「え……?」
図星で思わずフリーズしていると
少女は優しく目を細めてくすりと微笑む
「授業中、ずっと黒板をみずに、なにかを熱心にノートに書いてたから……。」
「……見てたの?」
あやが驚く。
少女はこくりと頷いた。
「うん。」
「でも、サボってたようには見えなかったから。」
「すごく真剣だったから……気になって。」
そして。
そっとノートを差し出した。
可愛らしく丸い文字で名前がかかれたノート
ところどころ押し花の栞が挟まれている
「良かったら、私のノート使う?」
「え……いいの?」
あやが目をぱちくりさせる
「うん。」
少女は柔らかく微笑む
「ありがとう……!」
あやはノートを受け取る。
「えっと……名前……」
「栞。」
少女は小さく答えた。
「栞ちゃん……。」
「本当にありがとう」
あやは大切そうにノートを胸に抱えた
「あ…お礼と言ってはなんなんだけど、一緒にお昼ご飯食べない?」
「作ってきたサンドイッチ..あるから一緒にたべよう」
ちらちらとしおりの様子を伺いながら
「うん、もちろん」
栞はあやの提案に一瞬目を丸くしたが
すぐに、優しい眼差しを向けて頷いた
屋上。
晴天の中 柔らかな風が吹いていた。
二人は並んで座る。
「栞ちゃん。」
あやはサンドイッチを渡しながら首を傾げる。
「ノート、本当にありがとう」
あやは安堵したように自分の分のサンドイッチを頬張る
幸せそうにもぎゅもぎゅとサンドイッチをかみしめている
「ふふ、美味しそうに食べるね」
その光景をみて、栞も1口サンドイッチを口にする
口の中いっぱいに優しいお日様みたいなたまごサンドの風味が広がる
「美味しいね 」
思わずもう一口食べて
「良かったぁ」
それを聞いてあやが嬉しそうに再びサンドイッチを頬張る
幸せであたたかいひだまりのような時間が流れる
「あ..そう言えば」
あやがふと口を開き、不思議そうに首をかしげる
「どうしてノート私に貸してくれたの?」
栞は柔らかく微笑む
そよ風が、栞のむぎ色の髪を優しくなでる
「なんでだろう、困っている人を見ると放っておけないの」
「あと……なんだか、すごく楽しそうだったから気になっちゃって」
「楽しそう?」
あやが目をぱちくりさせると
栞は少しだけ微笑んだ。
「うん」
「まるで、誰も見つけてない景色を一人で見つけたみたいだった。」
その言葉に。
あやの目が輝く。
「……実はね。」
鞄から一冊のノートを取り出す。
「これ!」
そこには。
宇宙の構造。
情報の循環。
観測と世界線。
あやが考え続けてきた仮説が、びっしりと書き込まれていた。
「私の宇宙理論!」
少しだけ得意げに胸を張る。
栞はノートを受け取る。
そして——
ページをめくる。
「……。」
「……?」
しばらく静かに読み込んでいた栞の瞳が、少しだけ輝いた。
「……面白い。」
「え?」
「すごく面白い。」
栞は優しくページを撫でる
「だよねぇ!?」
あやは瞳を輝かせながら身を乗り出した
「私たちはね こうして一緒に宇宙のこと探求したりする特別なパートナーになること『宇宙同期』って呼んでるの!!」
「宇宙同期..か..」
栞の目が優しく細められる
「ねえ、これからもさ、新しい理論できたらみせてほしいな」
少し照れたようにはにかむ栞
そのことばにあやの瞳が輝く
「もちろんだよ!!」
ーー宇宙論のノートの隅には宇宙猫の落書きが小さく残っていたーー
コメント
1件
読了しました〜!今回はあやのノートのピンチから始まって、栞ちゃんの優しさにほっとしました☺️「誰も見つけてない景色を一人で見つけたみたいだった」っていう栞ちゃんの言葉がすごく素敵で、あやの宇宙への情熱をちゃんと受け止めてくれる人に出会えて嬉しくなりました。ふたりで屋上でサンドイッチ食べてるシーン、ひだまりみたいで温かかったです。ノートの隅の宇宙猫も可愛い🐱 次も楽しみにしてます!