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〖グレーゾーン〗
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①
名前:青空 / ソラ
年齢:13歳
性別:男性
口調:標準語
セリフ:「」
②
名前:瑠唯 / ルイ
年齢:15歳
性別:女性
口調:関西弁
セリフ:『』
③
役割:先生(学校・病院)
セリフ:〈〉
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第一話
〔 青空視点 〕
「今日こそ忘れない」って10回も家で確認した。
家をでる直前の、玄関でも見た。
時間割もみた。鞄も確認した。
それなのに、教室に着いた瞬間、視界が狭くなる。
先生の口元だけがやけに大きく見える。
机の木目がやたら鮮明になる。
〈……提出物は?〉
「ぁ、はいっ」
「ぇと……」
ちゃんと、入れたはず…
でも、探しても探しても、でてくるのは違う日の提出物。
綺麗に入れたつもりだったのに、角がくしゃってくたびれて。
確認…したよね…?
やりすぎなほど、何回も。
鞄を探しながら、昨日の給食当番ちゃんとやれたかな、って関係ないことが頭をよぎる。
母さんの「気をつけて」も、まだ耳に残ってる。
提出物
昨日の給食当番
母さんの「気をつけて」
先生の口の動き
全部同時に浮かんで、順番がない。
〈…また、忘れました、か?〉
〈いい加減、やってきたらどうだ〉
〈お前以外みんなできてることだぞ〉
僕の名前は、呼ばれない。
〈はぁ…〉っと、何回聞いたか分からないくらいのため息に
僕は涙を堪えることしかできなかった。
クラス中の
椅子の音、ページをめくる乾いた音、呼吸の音。
僕宛じゃないのに、僕の耳に重く響く。
周りを見ても、誰も目を合わせてくれない。
言おうとした言葉は、喉にしがみついて
でてきてくれなくて。
でたのは泣く前の震えた息だけ。
チャイムがなって、授業が始まる。
先生の声が、遠い。
黒板に文字が増えていく。
写さなきゃ、って分かってる。
分かってるのに、手が動かない。
どこから写せばいいのか。
どこが大事なのか。
全部おなじ大きさで頭に入ってきて、
何も選べない。
隣の席の子のノート、ちらっと見えた。
きれいに色分けされてた。
赤、青、緑。
ちゃんと整理されてた。
僕のページは、白いまま。
〈青空、ちゃんと写してるか?〉
また、名前が呼ばれる。
今度は怒りじゃなくて、確認する声で。
心配されてる、って分かる。
でも、その〈心配〉の重さに
僕はもう、押しつぶされそうだった。
後ろの席から、小さな声が聞こえた気がした。
“…あいつまた?”
聞こえないふりをした。
聞こえてたけど。
休み時間になって、みんなが動き出す。
僕だけ、まだ机の前にいた。
ノートの白いページを見てた。
どうして、これだけのことが
僕にはできないんだろう。
僕の手には、くしゃっとなったプリント一枚。
頬から落ちた水で、インクが滲んで。
僕は顔をあげれなかった。
涙が乾いて、
頬がひりついて。
机の木目がまた見えるようになる。
どれくらい、そうしてたんだろう。
気づいたら、黒板の字が次々と消えてく。
チョークの白い粉が、ふわって落ちて。
それを、ただ目で追うだけだった。
また明日が来る。
それだけで、もう、怖かった。