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〖グレーゾーン〗
第二話
〔 青空視点 〕
チャイムが鳴って、教室を出る。
廊下は少しだけ騒がしくて、 みんなの声が重なってた。
その中で、 ひとつだけ、やけに静かな足音があった気がした。
すれ違ったはずなのに、 顔は見てない。
ただ、少しだけ。
見られていた気がした。
理由は、わからないけど。
帰宅と同時に、靴も揃えずに部屋へ入る。
ドサッとバッグを投げ捨てては、
倒れるようにベッドへ沈む。
先生の声
クラスメイトの声
椅子の音
プリントの音
廊下の声も音も
全部が、意味もなく頭を巡る。
「…うるさい…っ」
枕に突っ伏して、必死に息をした。
ただ、吸って吐くだけ。
それだけのことなのに。
今日こそは、宿題を終わらせる。
そう決めたのに、なんでか、動けない。
どんだけ時計進んだかな…
ようやく重たい足を動かせて
ぐちゃっとなったプリントを全部机に並べる。
「…もっと…綺麗にっ…」
一度気になったら無視することはできなくて。
なかなかに手強いプリントのシワを伸ばす。
「………あッ」
ビリッという音が部屋に響く。
「…っ…やぶけたぁ…」
瞬間、視界がにじむ。
こんな、ことだけで……。
…机の上のプリントは、まだたくさんある。
次こそ…
そう思っては鉛筆を握る。
タイトル書けた。1文字ずつ、綺麗に。
ノートを遠ざけたり、近づけたりして見た。
うん、いい感じ。
…なんか、足りない。
そういえば、隣の席の子のノート、カラフルだった。
「ぼくのペン……どこ…?」
さっきは中々動けなかったのに
今は走り出せそうなくらい元気。
最後に片付けたのはいつかわからない棚の中を
手当たり次第に出して、
僕のペンを探す。
「んっ、あったぁ…!」
雑に収納されたペンを掲げる。
「……ぁれ…?」
周り、ぐっちゃぐちゃ。
いつのかわかんないプリント
使いかけの消しゴム
誰かからのプレゼント
…まあいっか、また後で。
先に、宿題。
「よし、どう書こうかな〜」
くるくるとペンを回す。
ちらっと横目で見えた、ペンがたくさん入った筆箱。
「…片付けからしよ、」
赤、青、緑、黄色。
色ごとを分けて、たまにペン回ししたりして。
「……あ」
まただ。
わかってたのに。
今日こそは宿題するって決めてたのに。
「ん〜…いっぱい書いちゃお」
ここに赤使って、ここには青。
どんどん色が広がってく。
「んふふ〜……、あれ…」
気づいたらもう窓の外が暗くて
部屋は真っ暗だった。
電気はいらない。
…母さんが、部屋に来ちゃうから。
宿題は、全然終わってなくて
破れたプリントと、少し書いてお絵描き用紙になったプリント。
「…おこられちゃう…?」
破れたプリントと、
少しだけ書かれた文字と、
きれいに色分けされた線。
それだけは、ちゃんと残ってた。
誰も、今日の僕を知らない。
頑張ったことも。
破れたことも。
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