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『さあ、これで―――
獣人族と鬼人族の争いに終止符が
打たれました。
あ、団体の最高責任者であるモンド伯爵が今、
リングに上がり……
獣人族代表のビルド選手と、鬼人族代表の
ウラ選手の健闘を称え―――』
ランドルフ帝国帝都・グランドール……
そこで『神前戦闘』のイベントが行われて
いたのだが、
『おや?
誰かがリングに上がってきましたね。
あれは―――
ビルド選手が所属するミスリルクラス
パーティー、『月下の剣』のリーダー?』
実況からの解説で、リングを見守っている
ギャラリーたちがざわつき始め、
『何の用だ?
お前をリングに上げる許可を出した
覚えはないぞ!』
マイク型の魔導具で、八の字のヒゲを持つ
父親は、ブラウンの短髪にハチマキのような
布を頭に巻いた息子を叱りつける。
『許可ぁ?
ンなものなくて結構だ。
何せ俺は、これからこの団体を頂くん
だからな』
一方のエードラムも、マイクパフォーマンスで
モンド伯爵に応戦する。
そしてギャラリーたちからはどよめきのような
声が上がり、
『何だと?
何を言っている?
平民のお前が……』
『平民だろうが貴族だろうが、お前の息子に
違いないだろ?
その俺が親父のこの団体を受け継いで
やろうって言っているんだ。
感謝してもらわなくちゃな?』
そして息子は義兄でもある、ダークブラウンの
毛並みを持つ獣人族に手を差し伸べ、
『ビルド。
お前は自他共に認めるこの団体のトップだ。
俺とお前が組めば、この団体を牛耳る事が
可能となる。俺に協力しろ』
ビルド選手はその手をじっと見つめる。
『あーっと、これは―――
事実上、この団体での獣人族実力トップである
ビルド選手への誘いだ!
どうするんだビルド選手!?』
実況がその様子を煽り、客席はヒートアップ
していく。
すると彼はくるりと、モンド伯爵の方へ
振り返って、
『こ、これは……
ビルド選手、モンド伯爵と手を握ったあー!!
パーティーのリーダーである、エードラム様の
誘いを断ったぞ!!』
『どうやらビルド選手は、モンド伯爵に
つくようですね』
ツナツナビール🍺
289
そこで歓声が一気に上がるものの、
ビルドは団体の最高責任者の腹を蹴ったかと
思うと、
そのままスタナー、いわゆるプロレス技の
アゴ砕きをモンド伯爵に敢行、
『あ、あーっと!!
モンド伯爵にビルド・スタナーをかけた!?』
『伯爵動きません!
ちょっとマズい動きになってきましたよ』
今度は鬼人族のウラ選手がマイクを持ち、
『何のつもりだ、ビルド!!』
『見ての通りだが?
彼は俺のリーダーであり、そして
妹の婿でもある。
俺が協力するのは当然だろう?』
獣人族の選手は彼の目の前で、エードラムと
握手を交わす。
『こ、これは―――
ビルド選手、団体の乗っ取りに協力する事を
宣言したあー!!』
『ちょっとマズいですよコレは。
ビルド選手ほどの実力者が敵に回るなんて』
さらに彼のリーダーは鬼人族の選手に向けて、
『ウラ、お前も鬼人族のトップだろ?
ビルドとお前が俺に協力すれば、この団体は
思いのままだ。
こっちに来ないか?
そんな親父についていてもいい事はないぞ?』
『ふざけるな!
俺は貴様らの思い通りにはならん!!』
『……そうかよ、残念だ』
と、エードラムがマイクを下ろすと同時に、
『あーっ、あーっとこれは!?
ウラ選手を後ろから攻撃したのは、
同じ鬼人族の選手たちだー!!』
『これは、すでに他にも協力者がいると
いう事ですか』
そしてウラ選手もリング上で倒れ、
『何の手も打っていないわけないだろ。
すでに俺に同意している連中もいるんだよ。
この団体はこれからは、俺とビルドの
体制下で―――』
そうパーティーリーダーが言いかけたところに、
今度は獣人族の選手たちが乱入し……
彼とビルド選手に襲い掛かる。
『こ、今度は獣人族が同じビルド選手や、
エードラム様を襲ったぞ!?』
『どうやら、選手全員が全員彼に賛成した、
というわけではなさそうですね』
そうしてリング上では、鬼人族・獣人族の
混合チームが、モンド伯爵とエードラム側に
別れて対峙する。
『これはどういう事だー!?
どちらにも獣人族と鬼人族の選手が
いるぞ!?』
『なるほど―――
種族関係無く、自分が支持する側に
ついたのでしょう』
やがて二手に別れた一方がマイクを持ち、
『……いいじゃねーか。
これは新旧、新たな体制を求める側と
古い体制にしがみつく連中の戦いだ。
世代交代について来れないヤツは、
容赦なく潰すぜ!!』
そうエードラムが啖呵を切ると、
『これは大変な事になったぞ!!
獣人族・鬼人族を巻き込んでの、壮大な
親子ゲンカの勃発だー!!』
『新旧、どちらの体制が勝つのか―――
獣人族・鬼人族入り乱れてのこれからの戦いに
目が離せません!!』
実況がそう告げると、客席の興奮は最高潮に
達した。
「シン殿!!」
「シンさん、すげぇ盛り上がりましたよ!
ありがとうございます!!」
団体関係者専用のブースで待機していると、
リングに上がっていた父子が戻って来て、
私に礼を告げる。
「見てたよ見てたよー」
「役者だのう、2人とも」
「最後、観客全員が立ち上がって
いたもんねー」
童顔の妻と、モデルのような目鼻立ちの
ドラゴンの方の妻、そして黒髪ショートに
真っ赤な瞳を持つ娘が口々に感想を述べ、
「あれ?
ビルドさんは?」
「あっちは選手だからな。
まずそちらの控室に行っておる。
間もなく来るだろうが……」
モンド伯爵が着席し、続いてエードラム様が
飲み物を用意し始める。
「えっ!?
い、いやいいですよこちらは平民ですのに、
そんな事をさせるわけには」
「それを言ったら俺だって平民ですよ。
それに、これくらいさせて頂かないと
気が済みません!」
と、そこへノックの音が響き、さっきまで
リングにいた獣人族の選手が姿を現す。
「シン様!」
「ビルドさん。
どうもありがとうございました、
私の提案に付き合って頂いて―――」
「礼を言いたいのはこちらの方ですよ!
俺としても、リーダーと妹が結婚した以上、
家庭問題は気になっていたので……
まさかこんな方法で解決してしまうとは、
思いもしませんでした!」
2メートル近い、文字通りプロレスラーが
ブンブンと頭を下げるのは、それだけでも
迫力があり、
「しかしこうまで盛り上がるとは、
思ってもみませんでした」
そこでメルとアルテリーゼが、
「『じゃあいっそ、次の神前戦闘の
シナリオにどうですか?』って
言ったのはびっくりしたけど」
「こんなにハマるとはのう」
「おとーさんのする事に間違いは無いねー」
最後にラッチもドヤ顔で胸を張る。
私が提案したのは……
どうもこういった、貴族の父と平民の息子という
確執は、どこにでもあるらしく、
当然と受け止められる反面―――
モンド伯爵家のそれも周知の話だったようで、
ならばいっそ、それを次の『神前戦闘』の
展開に、ストーリー仕立てで組み込んで
しまおうと提案したのだ。
すでに『神前戦闘』は、格闘を演じる
エンターテイメントとして広く普及しており、
そこで父子対決として出してしまえば、
『ああ、本当は仲良かったんだな』と、
逆に見てもらえると思ったのである。
「獣人族対鬼人族のストーリーも、そろそろ
刺激が薄れてきていたからなあ。
そこへ来てドカン! とこの展開だ!!
しかも今までは獣人族対獣人族、または
鬼人族対鬼人族のカードは組めなかった
のだが、
これでいろいろなカードが考えられると、
企画部も喜んでおったよ」
モンド伯爵様が団体経営者としての顔で
そう語り、
「俺と親父の陣営につく者たちを、種族混合に
すると言った時は驚きましたが。
話を聞いて納得しました。
シンさんには頭が上がりませんよ」
今度はエードラム様が、改めて頭を下げてくる。
「そ、そういえば選手たちの反応は?」
照れ隠しで、私が獣人族の選手に話を向けると、
「いやもうみんな―――
『何それ面白ぇ』『いいじゃん』
『んじゃ俺エードラム様の側ね』って、
ノリノリでした。
女性選手枠も今後、このストーリーに
組み込んでいくという事で……
そちらも興味津々でしたよ」
どうやら現場の人たちにも好評のようで、
私は胸をなでおろす。
「おっと、ではワシはこれで―――
エードラム、ビルド。
後は任せたぞ」
そしていそいそとモンド伯爵様が席を立ち、
私たちは一礼して彼を見送る。
「やはりお忙しそうですね。
貴族であり、この団体経営のトップ
ですから」
「いやー、ありゃさっさと屋敷に帰って、
コーデに会いたいんですよ」
息子がそう指摘すると、全員が苦笑する。
「溺愛されているねー」
「あの可愛らしさでは仕方なかろう」
メルとアルテリーゼがうなずきながら語ると、
「公都でも獣人族の子って大人気だもんね」
ラッチが続けて語る。
「いやあ、まあコーデだからという事も
あるんでしょう。
平民の俺の娘でもあるし」
「?? それはどういう……」
エードラム様の言葉に私が聞き返すと、
「もし俺の母親も貴族だったのなら―――
俺もコーデも当然何らかの貴族位を継ぎます。
どこかの貴族と婚姻を結ぶとか」
「政略結婚、ですか」
ビルドさんが微妙な表情でそう語り、
「貴族に取っちゃ、自分の娘なんて
いずれ一族のためにどこかに嫁がせる、
政治の道具に過ぎません。
だけどコーデは平民の身分。
そういう『使い道』を考える必要のない、
いわばちゃんと孫として、思う存分
可愛がる事の出来る存在なんでしょう」
それを聞いた家族も獣人族の選手も、
『あー……』という表情になる。
「んー、でもエードラム様のお母さまも
平民だったんですよね?」
「そのように貴族に見初められる、
というのもあるのではないか?」
妻2人が、例え平民でも貴族と結婚する事は
あるのでは? と問うと、
「そういう場合は選択肢が無いだけかと―――
貴族の申し出を平民が断るなんて出来るわけは
無いですし……
自由恋愛からはほど遠いんじゃ」
暗に、そのケースは無理やりモノにされる
だけだと彼は説明する。
そういえば、どこぞの男爵がメルや
アルテリーゼ、シャンタルさんを略奪しようと
した事もあったし。
(■37話 はじめての かんげい参照)
「まあでも、コーデはそのようなものとは
無縁でしょうな」
「え? どうして?」
獣人族のプロレスラーが両腕を組みながら
語ると、ラッチが聞き返す。
すると彼はエードラム様の方を向いて、
「だってモンド伯爵様があの子の後ろに
いるんですから」
「ああ、無理やり自分のモノにしようとする
誰かが出てくりゃあ―――
親父が黙っているはずもない。
下手したら伯爵家全体が敵に回るだろう」
2人の説明にみんなが納得したような
表情となる。
本当に無茶苦茶可愛がっていたものなあ。
それを無理やりともなれば、逆鱗に触れる
なんてものじゃないだろう。
親バカというか祖父バカってレベルで、
あの子を全身全霊で守るに違いない。
「う~ん……
そういえば、身内の方は大丈夫
なんでしょうか?」
いくら伯爵家の継承権が無いとはいえ、
今の当主が死ぬほど寵愛しているとなると、
良からぬ事を考えるヤツがいるんじゃないかと
思って質問すると、
「いやあ、地位に関係無いのなら、それほど
関心は無いようなんですよ。
あと親父、結構子供には甘いというか、
俺にも少し前までは伯爵家の権力をガンガン
使ってくれましたしね。
それで何というか、構い過ぎるというか―――
あまりにも子供にベッタリになるので、その。
そういう意味で、他の兄弟や家族からは
感謝されているといいますか」
私は家族と複雑な表情で顔を見合わせる。
確かに猫可愛がりというレベルじゃなく、
構いまくっていたもんな、アレ。
つまりコーデちゃんにモンド伯爵が集中した
事で、他の身内が助かっている感じか。
「じゃあ、もう問題は無さそうかな?」
「『神前戦闘』の件も片付いたしのう」
「ボクたちも早くリュウイチとシンイチの
ところに行くのー!」
と、家族で一件落着になった事を確認し、
「ありがとうございました!」
「今後ともよろしくお願いいたします!!」
と、エードラム様とビルドさんが揃って
頭を下げ……
私たちは会場を後にした。
「え!?
またフラーゴル大陸へ?」
数日後―――
辺境大陸のウィンベル王国……
その公都『ヤマト』まで戻っていた私は、
冒険者ギルド支部から連絡を受け、
支部長室で魔力通信機を使い、
王都フォルロワとのやり取りをしていた。
『スマンな。
あちこちに行ってもらって申し訳
ないんだが……』
通話先は冒険者ギルドの本部長にして、
前国王の兄であるライさん。
「緊急事態―――
ではないんですよね?」
『ある意味緊急事態とも言えるが……』
歯切れの悪い答えが向こうから却ってくる。
しかし、あちらの内戦は一段落したはず。
事実上の敗戦国である寛容派・融和派が、
ようやく莫大な賠償金を払って失地回復した
ばかりのタイミングで、何かやらかすとは
考えにくい。
一方で反対派・過激派の方も―――
あれだけフェンリルに脅されたのだ。
その上でまた何かを企むとも思えないし。
となると残りは……
「モトリプカ側で何か問題が起きましたか?」
『ご名答。
やはりこれまでに侵略・支配してきた地域で
問題が起きているようだ』
そこに黒髪の長身で褐色肌の、次期ギルド長の
青年が、
「あれ?
でもそれは、せっかくフェンリル様が
平和にしてくれたのだからって事で、
収まっていたんじゃないッスか?」
「全員が全員、そうじゃなかったって事だろう」
現役の、アラフィフの筋肉質のギルド長が
レイド君に次いでそう話すと、
『だが正面切って反発しているような状況でも
なくてな』
「と言いますと?」
続けてのライさんの言葉に私が聞き返す。
『要はまあ、自分たちの目で直接見て
いない連中が半信半疑なのと、
交渉が可能ならば自分たちにも会わせて
欲しい、と言ってきているようだ。
もし本当にフェンリル様から直々に
お言葉を頂けるのであれば―――
それに従うと』
「何つーか、おっかなびっくりって感じだな」
本部長の次に支部長が皮肉って語る。
実際、フェンリルを直接この目で見ていない
連中は、完全に信じる事は出来ないの
だろう。
一方で内戦が止まり、被支配地域に対し寛容策が
スタートしたのも事実……
それらが合わさって、このような要求が
出てきた、という事か。
「でもそれ、ルクレセントさんが行かないと
ダメって事ッスよね?」
『当然そうだ。
だからチエゴ国にすでに連絡は行って
いるが―――
魔法を封じるのはシンの方の能力だからな。
状況次第によっちゃ、その力を見せてみろ、
って事になりかねんし』
ああ、それで同行して欲しいって事か。
『それになあ、以前あちらとの話し合いの際、
彼女確か言質を取られちまっているだろ。
今回はそうならないよう、お目付け役も
して欲しいっていうのが本音だ』
「そういやあったな」
「あ~……
『それがフェンリル様の意向であると言えば、
無理難題は言うまいよ』
って言っちゃったんスよね」
(■319・はじめての しゅうせんご参照)
そういえばそれで、多分それをモトリプカ側が
最大限利用するだろうって話はあったけど。
で、今回は自分が目を光らせて、今後はうかつに
相手に言質を与えないようフォローして欲しい、
という事か。
『それでこの依頼なんだが―――』
「あ、もちろん受けますよ。
乗りかかった舟でもありますしね。
いつ爆発するかわからない不満を
燻ぶらせるより……
ハッキリさせた方がいいでしょうから」
『そう言ってくれると助かる。
日時はこちらから伝えるから―――』
その後、2・3のやり取りをした後、ライさんは
通信を切り、
用件が終わったと思った私は支部長室を
振り返って、
「そういえばミリアさんは?」
いつものメンバーで姿の見えない彼女の事を
たずねると、
「今はこのギルド支部のミレーヌのところだ」
「児童預かり所でリベラ所長に見てもらうのが
一番安心するんスけど……
俺たちは冒険者ギルド所属でもありますし。
その見本として、ここの子供を預ける事が
出来る部署を、半々で使用しているッス」
「ああ、なるほど。
それなら、私もシンイチやリュウイチを
連れて来た方がいいですかね」
情報共有がてら、そんな会話を交わした。
「本当にフェンリル様が現れるのか?」
「いやしかし、方々で噂になっておる。
俺の身内も見たと聞いた」
「モトリプカは元より―――
何よりメナスミフ自由商圏同盟が
方針転換したという事実が」
フラーゴル大陸、モトリプカ。
その首都・エムビーア……
とある建物の屋外・内庭と思える場所で、
長テーブルに亜人・人外の多種多様な種族が
揃って座る。
多くは獣人だが、有翼の種族やリザードマンの
ような外見の者もおり、
「来るという通達は受け取ったのだ。
もうしばらく待たれよ。
それより―――
くれぐれも失礼の無いようにお願いする」
「その身で魔法を使えなくなる体験を
したいのであれば別ですが。
巻き添えは御免ですからね……!」
やや青みがかった短髪に白髪が混じる、
アラフィフの男と、
その従者である赤い短髪の青年は、実感の
こもった声で周囲に告げる。
ドルミンとプラクスは事実、フェンリル―――
実際にはシンの能力でだが……
魔法を封じられた過去があり、
その通達は参加者の背筋に冷たいものを
走らせる。
と、そこへ……
美男美女の一行が姿を現し、
「ん? あなたたちは―――」
「確か神獣・フェンリル様である、
ルクレセント様の……」
彼らはフェンリルに仕える事を最上の
名誉とする、羽狐たちで、
それを目にするのが初めてではない2人は、
一行に向かって声をかける。
「お久しぶりです。
ドルミン様」
そこに私も家族と共に後方から、ドルミン様と
プラクスさんに声をかけ、一礼する。
(ちなみにラッチも、今回は絶対について行くと
言って、無理やり参加した)
しかし長テーブルに座っていた亜人・人外の
代表であろう彼らはざわつき、
「フェンリル様はどうしたのだ?」
「まさか、代理という事ではあるまいな?」
そう、不安と困惑と怒りが混ざったような
感情を声と共に向けられるが、
そこへ空がフッ、と暗くなり、
「ん?」
「何だ?」
「急に雲が―――」
と代表者たちがざわつき始めた時、
『それ』は一陣の風と共に、文字通り空から
降って来た。
「な、なな……っ!?」
「あの巨大な白い獣はまさか―――」
その光景に羽狐たちは片膝をついて
敬意を示す。
登場したのはもちろんフェンリルの
ルクレセントさんで……
背中には犬のような耳に巻き毛のシッポの、
黒髪の獣人族の少年を乗せており、
その彼がルクレさんから降りて、
「身の程知らずにも、ルクレセント様を
呼びつけたのはあなた方ですか。
その無礼、恥を知りなさい―――」
ティーダ君の言葉に、亜人・人外のメンバーの
面々は、弾かれたように席を立ちあがり、
「はっ!!」
「ははーっ!!」
「どど、どうかご無礼のほど、平に
お許しを……!!」
額を地面にこすりつけるようにして、彼らは
全面降伏の姿勢を見せるが、
そこでルクレさんが、切れ長の目をした、
長い銀髪の人間の女性の姿に変わると、
「そう申すな、我が夫よ。
我もこうしてこの大陸に関わったのだ。
この者たちが何か言いたい事があるのなら、
聞くのが筋であろう」
「も、申し訳ございません。
ルクレセント様がこう仰っておられます。
まずは席につきなさい……
それでは『話し合い』も出来ません」
少年の言葉に各種族の代表はヨロヨロと
立ち上がると、
『交渉』がスタートした―――