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「撃て!撃てーっ!!弾を気にするな!撃ちまくれーっ!!」

派手な撃ち合いをしてる最中のベルモンドだ。

ダンの旦那が、声が枯れるんじゃないかって心配になるくらい叫びながら指揮を執ってる。それに合わせて皆が銃を片手に撃ちまくってる。機関銃と小銃で舐めるようにな。

だが連中も心得てるのか、騎兵の奴等は広く分散してジグザグに動いてやがる。

もちろんそれだけじゃ弾を全部避けるなんて無理な話なんだが、被害を減らすことはできる。傭兵王お抱えの連中だけあって腕も良いな。

で、俺が何をしてるかって話なんだが。まあいつも通りお嬢の側で待機してる。近くにはシスター、ルイ、エーリカも居るが護衛なんでな。鉄砲の類いはどうにも苦手だ。

だが、苦手だからって放置するつもりは無い。俺の剣はドルマンの旦那に打ち直してもらった特別製でな、銃弾を弾き返すだけの強度がある。その分重量が増えたが、元々大剣だし、振り回す分には問題ない。

コイツがあれば、いざと言う時お嬢の身を護ることが出来る。こんな感じに、なっ!

「おっと!ありがとうございます、ベル」

「構わねぇさ、お嬢」

お嬢を狙ってた奴の銃弾を弾いてやった。だが不味いな、敵を殺せてない。こりゃあ……来やがった!

「飛び込めーーっ!!近接戦に持ち込むんだ!」

ちぃっ!鉄条網が砲撃で吹き飛ばされたのは痛いな!奴等、馬から飛び降りて乗り込んで来やがった!

「近接戦用意!敵を速やかに撃退せよ!」

マクベスの旦那がサーベル片手に叫んでる。『血塗られた戦旗』の傭兵共だって接近戦が主流のはずだ。

わざわざ騎兵の利点を捨ててまで乗り込んでくるのは、此方を混乱させて撃たせないためだな。

「死ねぇーーっ!!」

「悪いな、お嬢に近付くのは遠慮してくれ」

「もっ!?」

お嬢目掛けて飛び掛かってきた騎兵に俺は大剣を向けた。

後は自分で突き刺さったから、剣を振って死体を飛ばす。

「ベル、ありがとうございます」

「周りは気にすんなよ、お嬢。前だけ見とけば言い」

「やあああっ!」

「ぐぶぅっ!!」

あーあー、またやってる。エーリカの奴はとにかく敵に密着する癖がある。今だって体当たりする勢いで心臓に剣を突き刺して……ああ、直ぐに引き抜くなって!

「わぷっ!?」

あーあ。蹴って抜いたもんだから、返り血で真っ赤になってる。

「ベルさん!コイツら強いぞ!?」

「そりゃ傭兵だからな。それに傭兵王の小飼だろうし」

お嬢の悪巧みで傭兵王は信頼を失った。となれば、飛び込んできたコイツらは傭兵王の小飼って訳だ。

おっと。

「けぁっ!?」

サーベル片手に突っ込んできた奴を大剣で真っ二つにしてやった。振り回すのはご法度だからな、お嬢に近付く奴だけ狙うとするか。

塹壕へ飛び込んだ騎兵は僅か三十名足らずであったが、得意の乱戦に持ち込み本隊への銃撃を減らすために奮闘する。

『エルダス・ファミリー』との戦いの際、塹壕内での乱戦に持ち込まれたため危機に陥った経験から塹壕内での戦いでも連携を取れるように訓練を繰り返していた。

何より各所に建設されたトーチカは、乱戦になった場合内側からドアを封鎖することが出来るように設計されており、乱戦に惑わされず射撃を継続することが可能となっていた。

だが、歩兵団の奮戦に比べ砲兵隊は未だに成果を挙げられずにいた。

「まだ命中弾は得られないのか!?」

「左右に機動しており、照準を定めることが困難です!」

「くっ!とにかく撃ち続けろ!」

砲兵隊による砲撃は戦車に直撃することはなく、その周辺へ砲弾を降らせて周囲の傭兵を吹き飛ばすだけであった。

「よし今だ!遠慮なく撃ちまくれーっ!!」

リューガの号令により、遂に射程内に入ったFT-17戦車二両が戦車砲を放つ。放たれた砲弾は狙い違わずトーチカの一つに直撃する。ここで問題が発生した。

『ライデン社』は『暁』に対して『血塗られた戦旗』に奪われた兵器についての詳細なデータを提供することで、敵対する意思がないことを示した。

しかし、その情報には不足しているものが存在した。それはライデン会長が密かに開発していた“徹甲弾”である。

これは分厚い装甲を持つ対象の装甲を貫通して内部で爆発してダメージを与えるための砲弾であり、これまで帝国に存在しなかった新しいカテゴリーである。

問題は、この徹甲弾の開発がライデン会長と彼直属のドワーフ数人だけで行われた点である。ライデン会長に秘匿する意図はなかったが、『ライデン社』は多数の新兵器を平行して開発しており多忙を極めた。

その為この新砲弾の情報は埋もれ、愛娘であり副社長であるマーガレットも把握していなかった。

そして奪われた戦車には試作品の徹甲弾数発が積み込まれていた。

もちろん『血塗られた戦旗』はこの新しい砲弾がどんなものか理解することは出来なかったが、砲弾なら同じだろうと構わず砲撃に使用した。

その結果何が起きたか。

帝国で初めて実用化された試作品の徹甲弾がトーチカに直撃。銃弾や砲弾の破片を防ぐことのみを想定しており、装甲を貫くような砲弾に対する備えは施されていない。

容易く壁を貫いた砲弾は内部でその信管を作動させた。密閉された空間では爆発の威力が増す。銃眼があるとは言え、基本的に密閉されたトーチカ内部でその威力を増大させる。

凄まじい轟音と共に天へと昇る爆炎をあげながらトーチカの一つが大爆発を起こし、内部に居た兵達と武器弾薬を纏めて吹き飛ばしてしまう。

『暁』、『血塗られた戦旗』双方が手を止めて呆然と眺めてしまうような光景となった。

「なっ……なにが?砲弾が内部へ飛び込んだとでも言うのですか……?」

巨大な爆炎を見て唖然と立ち尽くすシャーリィ。十人前後の大切なものが一瞬で失われたことを理解した彼女は、直ぐに意識を戦車へ向ける。

あれを野放しにしては、被害が拡大するだけ。砲兵隊の活躍を待つ暇は無かった。そう認識した彼女の動きは速かった。

「げっ!?」

「お嬢!?待て!行くな!」

襲い掛かってきた傭兵を銃剣で突き倒し、腰に下げた柄を強く握ったシャーリィはベルモンドの制止を聞かずに塹壕を飛び出し、いつの間にか目前に迫っていた戦車へ向けて駆ける。

戦車側がシャーリィに気付き砲を向けるが、それよりも速く彼女はその身体に宿す魔力を奮い立たせ、強く握った勇者の剣に魔力を流し込み。

「お前なんかっ!消えて……無くなれーー!!!!」

顕現した光の刃がFT-17をまるでバターのように切り裂いた。その様を見て『血塗られた戦旗』はあ然となり。

「あのお馬鹿!」

カテリナは愛娘の行動が更なる厄介事を招くと推測して頭を痛めた。

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