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この小説は作者の妄想・フィクションです。
ご本人様(キャラクター等)には一切の関係・関連はありません。ご迷惑がかからぬよう皆で自衛をしていきましょう!
閲覧は自己責任です。
※その他BL要素有り (🟦×🏺)
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それではどうぞ〜🫶✨
🏺『』その他「」無線「”○○○”」
「匠〜、お前らだおの事見すぎだぞ」
本署の駐車場でわちゃわちゃとしているそんな状況で、雑多な声とテーザー銃の音に紛れることなくそんな言葉がハッキリと聞こえた。
ふと隣を見ればぷくーっと頬を膨らませて、もっと何か言いたげなオルカがつぼ浦を見つめる。
「そんなに見てたら好きなのバレちゃうぞ。あっ!、もしかして心の準備が出来たのか?」
『…いや、出来てねぇ』
「゙ん。じゃあそんなにジーッと見つめない!、らだおは察しが良いから直ぐにバレるぞ!」
しかも人の好意に気がついたとて見て見ぬフリをするから余計にタチが悪い。
「オルカはお前の事すっごく応援してるけど…、最近のらだおの噂は悪いことばっか聞くからなぁ。全部嘘だと思いたいけど、オルカは匠が傷つかないか正直心配だ」
同期であるオルカ・トヴォロはつぼ浦が恋愛相談を交わすことの出来る唯一の相談役だ。
そんなオルカが言葉を濁すほどの噂話がココ最近でいくつも流れては消えてを繰り返していた。
しかも、その全てが青井らだおのグレーな恋愛事情の話ばかり。
誰が噂を流したのか知る由もないが、やれ利害の一致したワンナイトラブやら相手を好きでもないのに数週間は付き合ってあげるやら、大人な対応をしている青井の恋愛観に感心する者もいれば、そんな訳がないと一蹴りする者もいる。
『あぁ、なんかそんな話もあったな。俺が聞いた話ではこっ酷く女を振ったとか…、そういうのも出回ってるらしいぜ』
心無きのように冷静な思考を常に持っている人間からしてみれば、恋する乙女の姿など滑稽なものに見えているのかも知れない。
つぼ浦がふと屋上に視線を向ければ、ぷかぷかとタバコを吹かして空を見上げている青井の姿が目に入った。
「くだらない噂話ばっかり流れてきて疲れちゃうよな。…でもオルカ思うんだ。そういう噂ばかりを鵜呑みにするのは良くないなって」
『んー。そうだな』
屋上で空を見上げる青井は一本二本と連続でタールの重い空気を肺に刷り込んで、ほんの数秒だけ伸びをしてから駐車場に目を下ろす。
『俺も噂は信じちゃいねぇ』
「うんうんっ。なんだろうなぁ。そういう人柄?、ってやつはやっぱりさ、自分が関わって感じた直感を信じるべきだとオルカは思うんだ!」
『その通りだぜ。…まぁその通りだが、大抵の人間は弱い生き物だからなァ。そういう訳にもいかねぇ奴らが沢山いる』
「゙ん〜、そうなのかぁ。人間って難しいなぁ」
『あぁ。そうだな』
見下ろした駐車場には幾人もの署員がチルい時間を過ごしていて、青井はしばらくじーっとその光景を眺めてから腰に手を添える。
気だるげに片足を投げ出して屋上の縁に座ったかと思えば…何かを見つけた青井が軽くそちらに手を掲げた。
『……(俺か、…うん。俺だな)』
そしてゆるりと片手を振ったその視線の先にはつぼ浦匠がいる。
『?、』
つぼ浦は小さく首を傾げつつも、振られた手の応答を示そうと同じくそろりと手をあげた。
「ん?、どうしたんだ?、」
『あぁいや、何でもない。…ちょっと用事思い出したわ』
「そっか。じゃあまた後でな」
『おう』
何も深く考えないようにと頭の中を空腹の一色に塗りつぶしてから、用事があるその場へと向かう。
無言でエレベーターに乗ってガチャリと屋上の扉を開けば、先程と寸分違わぬ位置で青井が待っていた。
『゙ん…、なんすかアオセン』
つぼ浦が背後から面倒くさげに呟けば、青井はくるりと体をそちらに向けて胡座をかく。
「つぼ浦〜、さっき俺のこと見てた?」
『はァ?』
素っ気なく問われたその言葉に眉間のシワを寄せてから、つぼ浦は盛大にため息を漏らして腕を組む。
『悪ぃがアオセンの事は見てねぇぜ』
「そう?、じゃあどこ見てたの?」
『゙あ?、そりゃあ空だよ、空。あんなにでけぇ入道雲があったら誰だって見るだろ』
「雲?」
指をさすその先を見上げてみれば、確かにとんでもなく大きな入道雲がもくもくと青い空を浮遊している。
夏の訪れを感じるようなとてつもなく大きな入道雲だった。
「わぁ。確かにでかいかも」
『だろ?、綿菓子みてぇで美味そうだなってずっと思ってたんだよなぁ』
ちょうどお腹も空いていて、つぼ浦の腹の音がきゅるきゅると控えめに鳴る。
「ふーん。そう。…じゃあ買いに行く?、綿菓子」
『゙ん〜、どっかに売ってるか?』
「分かんない。でも遅かれ早かれ何か食べるんでしょ?」
『まぁな』
「じゃあ行こうよ。パトロールがてらに…ね?」
のそりと立ち上がった青井は既に綿菓子を探す旅に行くき満々で、つぼ浦はそんな姿を見て呆れたような笑みを漏らす。
『途端にガキみてぇだな』
「そう?、お前にはこのぐらいが丁度いいかと思っての配慮だけど」
『そのヘリ今すぐ爆破してやろうか』
「意図的だから本署襲撃付けていい?」
『ダメに決まってんだろ。さっさと行くぞ』
「はいはい(笑)」
二人を乗せたヘリがパタパタと上空へ飛び立つ。
なんの変哲も無い少しだけ穏やかな日常に、つぼ浦は内心安堵していた。
深く交わることの無いこの距離感がずっと続けば良いと…、自傷気味に笑みを漏らしてクスリと小さく鼻で笑った。
ロスサントスは広いようで意外と狭い。
何が狭いかというと都市面積とか物理的な意味合いではなく、言うなれば人間関係…、世間というものがとても狭い。
「あぁ、そういえば貴方の同僚さん?、誰だっけかなぁ…、あおー、あおいさん?って人。この前うちの店に来たわよ」
『は?、此処にか?』
「えぇ。ここに」
細身な筋肉質の腕がテキパキと手際よく働いて、あっという間にジンバックと言われるジンをベースにしたカクテルが出来上がる。
「はい。どーぞ」
ニコリと中性的な顔立ちの男がつぼ浦の前にスっとそのカクテルを送れば、つぼ浦は目を瞬かせながらとりあえずゴクリと一口喉に通した。
「いつも通りちょっと甘めね」
『ん、あぁ。それは助かるが、、…はぁー、そうか。アオセンがこんな所に来るとは…、』
「あら。こんな所なんて失礼じゃない?」
『゙ん、悪ぃ。衝撃がでかくて間違えた。俺はこの店好きだぜ。嘘じゃない』
「そうね(笑)、分かってるわよ。ちょっと意地悪しただけ。…そのあおいさんって人、普段こういう所に来るような人じゃないの?」
『分からん。プライベートの事なんてわざわざ聞かねぇしな』
カウンター席に座るつぼ浦の背中が少しだけ小さく見える。
「そう。まぁ、貴方にとって大事な人だって事は分かったわ」
ロスサントスの廃れたビルのどこかで営業をしているこのBARは、知る人ぞ知る…、いや、ほぼほぼの人間が知らぬまま通り過ぎるような隠れ家的な立地に佇む一風変わったお店だ。
昼は空いておらず真夜中にだけひっそりと営業を開始すれば、数時間に一人か二人訪れて、店内の面積的にも十人以下の滞在がいいところだと肌で感じる。
『別に大事って言うか…、゙んー。まぁ、間違っちゃいねぇかもな。……で?、姉さんはその他にどんな情報を落としてくれるんだ?』
緩く首を傾げて見つめる先には姉さんと呼ばれるそれはそれは綺麗なお兄さんが居て、この街では珍しい中性的で大人っぽくて、声は低くてがっつり男性だと分かる声質だが、口調が女の人の特徴をよく捉えているかっこいい姉さんがそこには居る。
「ん〜、そうねぇ。個人情報はあまり言えないんだけど、、一人では来てなかったわね」
姉さんがそう呟けば、つぼ浦はスーッ…と細く長く息を漏らして苦笑いを浮かべた。
『そうかァ。まぁ別に俺が直に見た訳じゃねぇからな…、そこまでダメージは喰らわないが、、そうかぁ、十中八九、相手に誘われて此処に来たんだろうな』
こんなに穴場でオシャレな空間だ。
しっぽりと過ごすなら俺だって此処を選ぶだろう。
『くっそ〜…、しばらく此処には来れねぇなぁ…』
「ん。どうして?」
『同僚のプライベートなんか見たくもねぇだろ。ましてや女と一緒に酒を飲んでる所なんて見たら俺…、ッ…、はぁ、やめだやめ』
テーブルにくっつきかけていた額を無理やり上げて、ゴクリと一気に酒を喉に通す。
『ぷは〜、…ん、名前は分からん。いい感じに甘い酒をもう一杯くれ』
「ふふ(笑)、えぇ。分かったわ」
レコードプレーヤーから流れる曲調を穏やかなものへと変えて、バーテンダーである姉さんは手際よくまた色鮮やかなカクテルを作り出す。
コロンと子気味のいい音が鳴れば、つぼ浦はしばらくボーッとその景色を眺めて目を瞑った。
「出来たわよ。…まぁ、一杯で酔いつぶれちゃう貴方には必要ないけれどね」
毎度の事なので仕方がないと肩をすくめて、代わりに姉さんがこくりとその甘いカクテルを喉に通す。
すやすやと眠る男を眺めつつカウンターを綺麗に片付けた数十分後、ガチャリと重い扉が開かれた。
「いらっしゃい。彼女さんと、…あおいさん。だったかしら」
この世界の運命は面白いほどによく出来ている。
幸か不幸か、つぼ浦がすやすやと眠っているカウンターの一つ隣の席を空けた丸椅子に腰掛けて、青井はなんてことの無いような顔をして口を開いた。
「この前のと一緒のお酒でお願いします」
「えぇ。分かったわ」
しなやかに手際よく姉さんがお酒を作っているその間、どうやら青井と連れの彼女は終始無言で、先に口を開いたのは女性の方だった。
「あの…、素敵な場所ですね。ここは一体?、」
「ん?、あぁうん。この前連れてきて貰ったんだよね。真面目な話をするのにちょうど良いかなって」
それから数分の間、青井が気だるげに真面目な話を彼女に説けば、その女性は失意を完全に喪失した様子で立ち上がりそれ以上何も言わずに店から立ち去ってしまう。
「……カクテル出来たわよ」
「あぁどうも」
声を荒らげるでもなく、ただ淡々と別れ話を切り出してスッキリとした表情を浮かべるこの男は相当精神的に参っているか…、はたまたそれを娯楽として楽しんでいるのか定かでは無い。
「うちの店を別れの場にするなんて、随分と度胸があるわね」
「あー…、困ります?」
「いいえ?。リピートのお客さんは数人いればそれでいいの。貴方一人だけでも十分よ」
少し呆れたかのような苦い顔を浮かべて、姉さんは青井のことを終始哀れむ。
「俺の事ヤバい奴だと思いました?」
「そりゃあ思ったわよ。…でも、今は意図的にそんな人間を演じているだけのようにも見えるわ」
図星をつかれたのか、青井は緩く目を細めてにっこりと笑みを浮かべる。
「お姉さん面白い人ですね」
「あら。私も貴方の駒の対象に入るってこと?」
「貴方にその気があるなら…奪いますけどね」
そう言ってチラリと向けた視線の先にはつぼ浦が居て、姉さんは厄介そうな顔を隠すことなくクスクスと笑う。
「その気なんてないわよ(笑)、貴方相当歪んでるわね」
「そうかもしれないですね。…その通りかもなぁ」
コクリと喉に通したカクテルは甘過ぎて、けれどもそれが丁度良い。
青井はゆったりとした空気を肺いっぱいに取り込んでから、しばらく眠りに落ちているつぼ浦の事をひたすらに眺めていた。
「先日は助けて頂きありがとうございました」
警察署のロビーでぺこりと頭を下げる女性が一人。
数秒頭を下げてからふわりと上げたその表情は柔らかで、少しの危うさを醸し出す可憐な女性だった。
「これ、もし良ければお詫び…、?、お礼?、のお菓子です。つぼ浦さんがどんな物が好きなのか分からなくて、…、甘いものは、お好きですか?」
ここで嫌いと言われてもそれしかないのだけれど、彼女は勇気を振り絞ってお菓子を詰めに詰め込んだ紙袋を差し出す。
『ん、確かこの前の銀行で人質にされてたお嬢ちゃんか?、わざわざ礼をしに来たなんて…、アンタ行動力あんなァ(笑)』
「いえ、その、えっと、はい。…ぁ、あの、お菓子…、は、」
『あっ、悪ぃわりぃ。頂くぜ!、ちなみに俺はなんでも食えるタイプだ。甘い物も好きだぜ』
ふるふると震え出したその紙袋を瞬時に受け取り、つぼ浦はケラケラと笑う。
『そんなにビビんなって(笑)、デケェけどちゃんとしたお巡りさんだぜ?』
「び、びびってません。私は、ただ貴方に救われたので、感謝を伝えに来ただけです」
少し斜め上を見上げて視線を合わせた彼女の瞳はきらきらと青色に揺れていた。
『、アンタ、いい色の目ぇしてんな』
「?、目…ですか?、」
ぱちぱちと瞬きをすればより一層淡い藍色が揺らめいて、つぼ浦は自然と柔らかい笑みを浮かべる。
『あぁ。俺その色が好きなんだ。綺麗な色だよな』
「ん…、よく分かりませんが、喜んで頂けたなら良かったです」
少し不思議そうな表情を浮かべてから、直ぐにふわりと笑みを漏らして彼女が笑う。
わざわざお礼をしに来てくれた彼女の瞳は吸い込まれそうなほど深みのある青色をしていた。
最近では直視するのも難しい同僚の瞳と同じ色だ。
だからという訳でもないが、少しふわふわとしている彼女の事が心配で、初めてこのロスサントス出身の一般白市民と連絡先を交換した。
「本当によろしいんですか?、」
『いいぜ。別に減るもんでもねぇしな』
交換を持ちかけたのは彼女の方で、つぼ浦は難なくスマホの連絡手帳に彼女の名前を保存してポケットにしまい込む。
『また何か事件に巻き込まれたら連絡してくれ』
「巻き込まれた後だと遅いのでは??」
『お前頭良いな。じゃあ何かある前に連絡くれ』
「そうならないことを祈ります…、」
ロスサントスの犯罪率はどの都市よりも群を抜いて一番だ。
きゅっとスマホを両手で握った彼女は不安そうに眉を寄せながら縮こまる。
『任せとけって。ガキの一人くらい守ってやるよ』
「ガキじゃありません…」
『ん?、じゃあお前いくつだ?』
「21です」
『はぁ?!、俺と3つしか変わんねぇじゃねぇか!、』
“お前嘘だろ??、”と割と本気で彼女と視線を合わせる為に膝を曲げて、それから両肩をガシリと掴む。
「わっ!、びっくりした、」
『びっくりしたのはこっちだが?、童顔にも程があるだろ』
まじまじとパーツの整った顔を眺めて、それから不意に納得のいったような顔を浮かべて背筋を伸ばす。
『゙んー…、まぁあれだな。俺の知り合いにもそういう奴はいるしな。大袈裟だったかもしれねぇわ』
「そうですか、なら、良かったです、」
これで信じて貰えなかったら白市民パスでも提示してやろうかと思っていたらしい彼女は、そそくさとスタッシュにカードをしまい込んできゅっと口を噤んだ。
それから数秒互いに無言で見つめあって、しばらくしてからまた彼女がぺこりと頭を下げる。
「とにかく、色々とありがとうございました」
『おう。面倒になって端折ったな』
「うるさいです」
初手のおどおど具合はどこにいったのやら。
怖くない人間だと分かったらしく、彼女はじとりと少し不満げにつぼ浦を見つめ 、それから花のようにクスリと笑う。
その目元はやはり想い人である真っ青な瞳のあの人と似ていて、つぼ浦は少しだけ彼女の事を気にかけるようになった。
彼女と連絡先を交換してから数週間、偶にメッセージがポンポンと送られてきたりするので律儀に返してみたり、本当に危険な事に巻き込まれる前に電話をしてくれることもあった。
ビデオ通話をしてみれば相変わらず童顔な顔立ちに青い瞳がきらりと瞬いていて、それだけでなんだか心がコロコロと落ち着かない。
「、好きですか?」
『…゙ん、は?、何がだ??、』
「えーっと、だから、結局何が一番好きですか?って…、」
『あ、あぁ。そうだな、食べ物…、゙ん~、一番を決めるならハンバーガーが好きだ』
「へぇ~(笑)、そうなんですね。ふふ、でもなんかそんな感じがします。ハンバーガー好きそうな見た目してますもんね。イカつい感じが、うん(笑)」
『なんだよそれ(笑)、』
だいぶオブラートに包んでくれた彼女の優しさに笑みを漏らしながら、不意にスマホ画面の端っこ、小窓になっている自分の画面をチラリと見る。
『、…わりぃ、ちょっと用事出来たわ。また今度かけ直すぜ』
「分かりました。おやすみなさい」
『おう、またな』
プツリと通話を終了して背後を振り返れば、もうそこには人の影すら見当たらない。
『?、あれ、さっきぜってぇ居たのにな、』
キョロキョロと周囲をもう一度見渡して、それからふと視線を前に戻す。
『゙わッ!、おいテメェアオセン!!、謀ったな!』
そこには鬼の被り物をした青井らだおが何食わぬ様子で立っていた。
「最初からここに居たけどね」
『嘘つけ。さっき俺の後ろ横切っただろ』
“画面越しから見えてたんだからな”と真っ暗になった自身のスマホの画面を突きつける。
「わぁバレてた?」
『あったりめぇだろ。動体視力舐めんな』
「んー(笑)、だってつぼ浦が珍しくビデオ通話してたからさ。何してんだろうなぁって思って」
警察署のロビーにはなかなか人がやって来ない。
それを活かして堂々とロビーのソファに座り込んで話をしていたのが仇になったらしい。
「…綺麗な人だったね」
『あ?』
「華奢で色白で、青い瞳をした女の子。ああいうタイプが好みなの?」
『なんだよそれ』
いつも通りの会話に過ぎないはずなのに、どこか言葉に重みがあってドクドクと嫌に鼓動が早まる。
「いや別に(笑)、お前が最近スマホと睨めっこしてるのちょくちょく見てたからさ。好きなのかなぁって。…どうなの?」
単純な興味なのか、それとも何か思うところがあるのか、降り掛かってくるその声にはやはり緊迫感がある。
『、、アンタには、関係ねぇだろ、別に』
自分が誰をどう思っていたって、結局目の前にいる男には関係のない話だ。
女絡みの噂は今でも絶えないし、それでも好きで居続けている自分は相当この人に惚れ込んでしまっていて…、自分でもたまに呆れてしまう程だ。
『俺が彼女を仮に好きだったら、一体アンタはどうするんだ?』
十中八九特に何も思わないか、面白半分で彼女のことを奪うか。
それが容易に出来てしまうくらいには、白黒男女関係なく人を惹きつける魅力がこの男にはある。
「へぇ。好きなんだ」
『別に(笑)、まだ断定した訳じゃねぇ。まぁ確かに。アンタの言ってたタイプ?ってやつなら、どタイプだけどな』
日頃の噂話に心をチクチクと刺されているつぼ浦は、ちょっとしたイタズラ心でそう告げる。
「ふーん…あっそぅ。はぁ…、俺が全部弾いて来たのに、結局ぜんぶ水の泡かぁ…」
“どうしよっかなぁ”と小さく呟いて、青井は腕を組む。
『弾いてた??、』
コキコキと首を鳴らして、それから青井は口を開いた。
「そう、弾いてたの。お前が知らずに誑かしてた女の子全員。俺が奪って泣かせてた」
『……は?』
言っている意味が分からず思考が停止。
そんな中、青井はつらつらと言葉を並べて更なる情報をつぼ浦の脳にぶち込む。
「今まで流れてた噂話は全部ホントだよ。お前のことを好きになった奴をね、俺の方が良いよってそそのかして、本気にさせて、最終的には縁を切っちゃうの。もう恋愛なんて懲り懲りだぁって思わせてね」
『な、なに言って、、全然意味が、』
「分かんないよねぇ(笑)。全部まとめるとさ、俺は最低な奴って話」
青井はもう全てがどうでも良くなったのか、いっそ清々しいほどに息を吐いて、混乱状態のつぼ浦の手を掴む。
「ちょっとごめんね」
カチャリと手錠をかけてからスタッシュを漁り、そのままスマホだけを取り出してワンタップ。
手際よくジョブを退勤に切り替えてから、そのスマホは返すことなく手錠を外す。
「“青井とつぼ浦退勤しまーす。お疲れ様でしたぁ”」
「「“お疲れ様~!”」」
「“おいおい匂わせか~?”」
「“あは、匂わせでーす”」
元々つぼ浦が無線に居ないのを知っていて、青井は適当にそう受け答えながら電源を切る。
「ねぇつぼ浦、俺行きたいところがあるんだよね」
未だに唖然としているつぼ浦の手を握り直して、そのまま正面玄関へと歩き出す二人の影。
自家用車の助手席につぼ浦を押し込めば、青井は丁寧にシートベルトを付けて走り出す。
高級車特有のエンジン音が気にならないほど、つぼ浦の思考は混乱を極めていた。
車に乗って流れ流され、いつの間にかたどり着いたのは割とデカくて高級そうな大型のホテル。
「はい到着~。今夜二人で泊まるラブ…ん、あれ、今はビジネスホテルって言うんだっけ(笑)、まぁどっちでもいいや」
カチャリとシートベルトを外してつぼ浦をずるずると引き連れれば、無人のハイテク機械をピコピコと操作して難なくカードキーを手に入れる。
「俺らの部屋は十二階ね。はい乗ってのって」
『゙っ、ちょッ、と、アオセン、待ってくれ、』
やっと状況を理解し始めたつぼ浦がエレベーターに乗るギリギリで足を止める。
「ふは(笑)、今さら気がついたの?」
『何がだ?、どれの事を言ってんだ?、』
ここに連れて来られる合間に色々と思い出したが、確かに青井が連れていた女の子の噂話…その特徴全てに茶髪の女の子やら黒髪のショートやら、以前自分が市民対応で助けたかどうかギリギリ覚えているラインの女の子の容姿が酷似している事に気がついた。
噂話が多すぎて、もはやどの真相にたどり着いたのかさえ分からない。
「まだ混乱中?、まぁその方が都合がいいけどね」
青井はクスリと笑って、つぼ浦の腕を思い切り引っ張った。
バランスを崩したつぼ浦はそのまま前のめりに倒れ込み、ぎゅっと青井の腕に抱え込まれる。
ガチャン…とゆっくり閉じられたエレベーターの扉は、青井の手によって指定された十二階へと向かった。
エレベーターの中では、驚きすぎて声も出ないつぼ浦がひしっと青井のワイシャツを握りしめている。
「びっくりした?」
『…な、なんだ、これ、どうなってんだ、っ、ッ』
驚くつぼ浦の頭をよしよしと優しく撫でれば、カチリと化石のように固まって微動だにしない。
「いい子だねぇ、つぼ浦」
チンッと小気味よく鳴ったエレベーターの合図と共に、そのままよいしょと俵のようにつぼ浦を抱き抱えてお目当ての部屋を探す。
カードキーを差し込んで部屋の扉をガチャリと開けば、そこでやっとつぼ浦が勢いよく身じろいだ。
『゙っ、降ろせッ、ぐっ、アオセン、テメェなに考えてんだよ、つかここ何処だッ、』
「あれ(笑)、俺の話きいてなかった?」
ジタバタとするつぼ浦を抱き抱えながらしばらく歩き、その後ベッドの上にどサリとその身体を落とす。
『゙あだっ、゙っ~、随分と手荒い誘拐じゃねぇか…、なァ?、アオセン』
「ん~(笑)。それはごめんね。…でもさ、俺これからもっと酷いことするから、説教ならまた後でね」
ぎしりとベッドが軋み、つぼ浦を押さえつけるかのように身体全体で覆い被さる。
『゙?、アオセ、』
「しー(笑)…、…ねぇ、つぼ浦はさ、あの子のどこが好きだったの?、どタイプって言ってたから、やっぱり容姿?」
身動きが取れないようにカチャリと両手に手錠をはめて、カパリと自身の鬼の被り物を取り外す。
「つぼ浦、俺の目を見て」
顎下を鷲掴むようにして顔をこちらに向けさせれば、バチりとまん丸に広がったその瞳と視線が交わる。
「俺の目も青いよ?、顔だって白いし、華奢では無いけど…、俺の方が、お前のこと好きだよ?」
恋焦がれていた年月が違うのだ。
俺の方がもっとずっとこいつの事を盲目的に愛する自信がある。
「お前がいつか俺の事を好きになってくれたらいいなぁと思ってさ。色々手回ししてたけど、、そう上手くはいかないみたいだね」
目元を震わせてはくはくと呼吸をし始めたつぼ浦の唇を軽く指の腹で撫でて、それからグッと顔を寄せる。
「ねぇつぼ浦、他の女にうつつ抜かさないでさ、俺のことを見てよ。俺だけを、好きになってよ」
ドロドロと溜め込んでいた恋心と愛情をぶつけるかのように、青井はゆっくりとつぼ浦の口元に自身の唇を押し付けた。