テラーノベル
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〝宵闇〟の魔女は、長きに渡って「不死」の研究に取り憑かれてきた。
無論、強欲な彼女のことだ。
他にも欲するものは山ほどあった。
かつての魔性の美貌を取り戻したいという思いもあった。
全ての者を屈服させる強大な力も手に入れたかった。
しかし。
優先すべきは、やはり死の克服だった。
永遠の時間さえあれば、必ずや全ての望みを叶えることができる。
魔女は、心の底からそう信じていた。
そして、ある時——彼女はついに、一つの方法へと辿り着く。
今より数十年前。
魔女はとある異界——守屋修達の住む世界——にて、強大な力を持った拝み屋と闘った。
激しい死闘の末に何とか拝み屋を斃したものの、彼女もまた深手を負った。
息も絶え絶えに境の世界の棲家へと戻った魔女は、力尽きる寸前、かねてより考えていた計画を実行に移した。
それは、不死の生き物である黒猫と、自分の魂とを取り替えてしまうというものだった。
本来、肉体と魂とは密接に結びついている。
一時的に幽体離脱をしたり、霊が体に憑依したりということはあっても、肉体を完全に交換するということは不可能だ。
——ずっと、そう言われ続けてきた。
しかし、彼女はやり遂げた。
〝宵闇〟は多彩な魔術を習得していたが、こと魂を扱う分野において、彼女は間違いなく天才だった。
体を交換する黒猫には、この儀式の為に長年育ててきた、飼い猫のナハトを使用した。
肉体を交換した直後、全てを理解した黒猫は、瀕死の体でなお、ギャーギャーと必死に喚き立てた。
魔女はそんな猫を嘲笑い、新たに自らのものとなった『森』の中へと飲み込んでしまった。
今頃は、蔓で木に縛り付けられた状態で朽ち果てていることだろう。
魔女は自信家ではあったが、同時にひどく用心深い性格であり、自分に敵が多いことを自覚もしていた。
矛盾するようだが——世の中には、不死者を殺すための手段というものが存在する。
そうした特殊な武器や魔法を、魔女はひどく恐れた。
魔女は元の姿そっくりの肉人形を作り、それを魔術で操りつつ、自分は飼い猫を演じ続けた。
この秘密を知る者は、魔女の手下にも一人もいない。
「姉上には、信頼をおける仲間が一人もいない。いるのは、恐怖によって従う下僕だけだ。いつか必ず、それが姉上の命取りとなる時が来ますよ」
遥か昔、血を分けたたった一人の妹は、そう言い残して彼女の元を去って行った。
その時、魔女は鼻で笑った。
弱者の戯言にしか思えなかった。
その思いは、今も変わっていない。
(ひっひっひっ——仲間なんていらないよ。頂点に立つ者は、常に一人。そうとも——不死となったアタシの前には、今や無限の可能性が広がっているんだ!いずれは神と呼ばれる領域に上り詰め、全ての次元を支配してやろうじゃあないか!)
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コメント
1件
第75話、読みました!魔女が不死を手に入れるために黒猫と魂を交換するという発想、すごく鮮烈でゾクッとしました…。「姉上には信頼できる仲間が一人もいない」という妹の言葉が、今の魔女の孤独を逆に浮き彫りにしていて、切ないですね。頂点に立つ者は一人と言い放つ強さの裏にある空虚さを感じるエピソードでした。続きが気になります!