テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
ラミー
162
125
ライアーミル
51
コメント
1件
このエピソード、仁人との何気ない掛け合いが全部愛おしい。「好きか嫌いかと聞かれたら、好き」なのに、理由を並べて自分から逃げてた気づき方が切ないし、変わらない距離感が逆に響くな…。丁寧な心情描写にじんわりきました。続きがすごく気になります!
上手く言えればいいんだけど。
そう思うことが、たまにある。
仁人は昔から、素直じゃない。
褒めれば照れ隠しに言い返してくるし、少し距離が近いだけで「近い。」と肩を押し返してくる。
だから、何かを伝えようとしても、最後には笑って終わってしまう。
それが俺達らしかった。
「何なん。」
「うるさい。」
そんな言葉を返されるたび、少しだけ笑ってしまう。
別に腹は立たない。
むしろ、そのやり取りがいつものことすぎて、返ってこない方が落ち着かなかった。
時間がどれだけ経っても、変わらないものってある。
仁人のそういうところも、その一つだった。
昔より大人になった。
仕事も増えた。
立場も変わった。
それでも、二人で話す時の空気は、不思議なくらい変わらない。
くだらないことで笑って。
くだらないことで言い合って。
気付けば隣にいる。
それが当たり前だった。
好きか嫌いかと聞かれたら、好き。
大事かどうかと聞かれたら、大事。
その答えに迷うことは、一度もなかった。
でも、その「好き」が何なのかと聞かれると、少し困る。
仲間だから。
家族みたいな存在だから。
長い時間を一緒に過ごしてきた相手だから。
そう答えるのが、一番しっくりきた。
それ以上の言葉なんて、考えたこともなかった。
もし仁人が落ち込んでいたら、元気になってほしいと思う。
笑っていたら、安心する。
無理をしていたら、やめろと言いたくなる。
それはリーダーだから。
頑張りすぎる性格だから。
俺が最年長だから。
理由なんて、いくらでも見つけられた。
だから気付かなかった。
理由を並べていたのは、自分自身だったことに。
本当はもっと単純な気持ちだったのかもしれない。
だけど、その頃の俺は。
まだ、その答えを知らなかった。