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ノアの父は神との戦で前線に立ち、他の戦士を導いたことで大罪を犯したと言われ首を切られ。ノアの母は大罪を犯した男の妻として、魔女として、父と共に首を切られた。そして祝福を授かり、通常の人の何倍もの魔力を手にしていたノアの妹は、最初は聖女だと言われていたのに、神との戦以来、古代魔術の研究に浸り、最後は神々に魔力と祝福を奪われ、心臓を貫かれた。
確かにそうだ、レエヴの言う通りだ。段々と記憶が戻ってきた今、ノアは神々が憎い。
ノアの家族達は自分達の正義に従って動いた。この世界はそうやって皆が自分の正義を信じ、常に胸に秘めている。でも、その正義が必ずしも周りの考えている正義じゃない。きっとノアの家族の正義は神々からしたら悪だったのだろう。
ノアのやる事はたった一つ、神々を正す事ではなく、神々の考える正義を知る事だ。
「あ〜…久しぶりな感じ…」
ぽつりと呟き、寝っ転がって天井を見上げていると 「あっ、気分はどう?」と此方を覗き込む少女と目が合った。
ゼニスブルーのツインテールに紫色の蝶の装飾がついたヘアゴムで結んでいる。その大きな瞳はマロウブルーの様に透き通っていて、どこか既視感を感じる見た目だ。露出の少ない白いミニドレスの様な装飾の豪華な服を着ている。ティティアの様なお嬢様という感じでは無く、お姫様と言う方が彼女には合うだろう。
「えっと…少し体に力が入りづらいです」
「そっかぁ、まぁあんな強い気絶魔法と麻痺魔法かけられてるからしょうがないね」
「ここは騎士団の医療室。兵治療部隊の人達が怪我して治療した兵の様子を見る部屋だよ 」
「貴方は…?」
「あっ、私?私は、シャリエッテ・ディン・ラスタロトって言うの。よろしくね」
「ん?ラスタロトって…」
ノアが「どこかで聞いたような…」と言う前に部屋の扉が開いた。
「起きましたか。久しぶりですねノアさん」
「兄様!帰ってきてたのね」
「あぁ、私の代わりに彼を診てくれて有難う」
「少し力が入りづらいですよね。数分経てば治ると思いますので」
コンコンコンと扉が叩かれた。
「入っていいか」と聞き慣れた声が外からする。 「どうぞ」とファルシオが言うと予想通りの人ともう一人部屋に入ってきた。
「団長とティティアさんでしたか」
「ノアくん…大丈夫?」
「ティティアさん!はいちょっと力が入りづらいですけど…」
「ごめんね…私がちゃんと判断できなかったから…」
ティティアは暗い表情でノアの手を強く握った。
「騎士団の団長として俺からも謝罪させて頂きたい。此度は本当にすまなかった」
「…ファルシオ、ここを借りてもいいか。少し2人だけで話がしたい」
「分かりました、2人とも行きましょう」
そう言うとティティアとシャリエッテは頷き、3人は部屋から出ていった。
「ノア、詳しく聞きたい。あの時レエヴと言う男に何をされた」
ノアは思い出そうとした。でも思い出せなかった。思い出せた事はレエヴと言う男が自分に何かをした事、具体的な事は思い出せない。一つだけ、レエヴが言っていたことを覚えている、「ノア、貴方に問います。貴方はこの狂った世界を作った神々共を正したいと…そう思いませんか?」そう言われたのは覚えている。そしてもう一つ、過去の自分が何をしたか。自分の記憶。それは覚えていた。
「…ほぼ覚えてないです。そのレエヴって言う男が僕に何かをしたことは分かるんです、でも何を言われたとか、何をされたとかは覚えてません」
「そうか、ならいい」
「でも一つだけ確実に思い出した事があります」
「失っていた少しの記憶を思い出しました」
思い出した記憶を全てシヴェルに話した。
自分が何をしたのかも、その時の自分の周りで何が起こったのかも。一つも隠さずノアはシヴェルに話した。
「エゲリア戦争か…」
「シヴェルさん」
「僕は知りたいです。この世界の神様達の考える正義が。そして過去の自分が犯した全ての過ちも」
「まず、正義の神と契約した貴方に聞きます」
「貴方の考える正義とはなんですか」
「…神々の考えをを知る事、それは俺が今まで生きたこの五百年間、誰もがしてこなかった事。きっと誰もが神々が正しいと考えていたからだろう。その行動は君を君じゃなくさせるかもしれない。世界中が君の敵になるかもしれない。人も動物も草木も神さえも」
「でも約束しよう。君がその道に進むのなら俺もその道を共に進もう。勇気のある者を導く、それが騎士団長としての責務であり、俺の考える正義だ」
そうシヴェルが言うと、シヴェルはノアに手を差し伸べた。ノアは差し出されたその手を強く握った。