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午後15時半。
〇〇家と呼ばれる日本の建築が施された民家に彼が到着する頃、黒服を着た人間が大勢と集まっていた。
妙な空気が流れる中、1人、袴姿の男が彼の元へと大股で近づいて来る姿が目に入った。
彼の前で止まった瞬間、大きく手が振り被る。
バシンッ__
騒ついていた空気が、僅か数秒にして静まり返る。
「お前は何の為に此処に居る?」
叩いた手をもう片方の手で強く握る男。
その形相は鬼の様であり、また哀しみも含まれていた。
周囲の視線が彼に集まる。
「…」
何も言えない。
人間はどう足掻いても”誰かのせいにしたがる生き物”であり、その標的が今、彼に向いている。
”必ず遂行する”、という異名が剥奪された瞬間だった。
「土下座しろよ」
雨が一滴、丸まった肩に当たる。
周囲の人間はそれに便乗し、「そうだ」「お前のせいで」と口々に嘆いては彼に指を向けながら自分からは目を逸らす。
「…すいませんした」
少しの沈黙の後、深々と頭を下げる彼。
強くなった雨が、ぶら下がる髪の毛を濡らし、束を作っては雫をこぼした。
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午後17時。
辺りは人気の無い古い民家に囲まれ、降り注ぐ雨は先の道を隠そうと霧を深くしていた。
歩く影が1つ。
瞳に映る景色が灰色と化していく様を見ながら、自身の存在を消すように、ただただ前に歩いていく。
じんわりと熱くなる目元。
「任務はどうでしたかぁ?」
どこか苛立ちを覚える声が聞こえる。
「あらぁ、こんなずぶ濡れになって…」
生垣の影から出て来た人物にタオルを被せられたと思えば、頭を乱雑に拭かれ。
「…随分と用意周到なようで」
皮肉を込めたつもりなのだろう。
けれど、相手は頭を拭く手を止めない。
「泣いて良いんすよ」
優しい声色で頭を撫でられる。
少し相手の方が背が高いのか、足を曲げていることに気づくと同時にはっと鼻で笑い飛ばしてやる。
「うざ」
「反抗期の子供みたいですね」
出てくる言葉を予知したかの様な即答。
彼は怯まない。
「邪魔」
「あっちに家あるんすか?」
「退いて」
「退いたらなんかしてくれる?」
「しない」
「じゃあ退けないね?」
ニコニコと笑う目の前の相手に、先程の出来事も相まってか彼の心はぐちゃぐちゃと絡まっていく。
蜘蛛の糸のように、絡まって、やがて1つになり…
ブツンッ
彼の瞳が黒く鈍く光ると同時に、通行を妨げていた相手を押し除け、帰り道をひたすらに進んで行く彼。
そんな背中に、ひとつの言葉が投げかけられる。
「君、色が無いのね」
進む足が自然と止まる。
「あっても黒か灰色、白だけの世界…」
彼の下を向いた世界に入り込んでくる人間。
地面が抉られるのが見える。
「楽し?」
覗き込んだのは、青色だった。
彼の瞳に色が見えたのは何年振りだろうか。
彼は帰路を走る。
あの男と一緒に居ては駄目だと思いながら、ひたすらに一本道を走る。
もう、会いたく無
「残念」
______ドゴッ__
→♡3000
コメント
12件
誰だ叩いたヤツ!ぶっ■してやるぞぉお!これrd視点で進んでるのかな?、、今回も素敵でした!色がない。っtw元々はやっぱ青色だったのかな、何があったんだろ😵