テラーノベル
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玄関の鍵を静かに回し、らんは靴を脱いだ。 音を立てないように、気配を消すように。
それはもう、反射のようなものだった。
親が起きていれば怒鳴られる。
弟たちを起こしてしまっても、面倒が増えるだけ。
そう思って、いつも忍び足で部屋に戻っていた。
だけど今夜は違った。
ふわりと明かりが灯った廊下の先。
そこに――ふたり並んで立つ影。
🎼👑「おかえり、らん」
🎼🍍「遅かったじゃん。心配した」
ぽかんとするしかなかった。
なつとみことが、自分を待っていたなんて。
しかも、ふたりとも寝間着のまま。
手には温かい飲み物を持って。
🎼🌸「……なんで起きてるの。怒られるよ」
🎼🍍「怒られたら、俺が謝る」
🎼👑「なっちゃんが怒鳴られたら、俺がそのあと全部言い返す」
冗談なのか、本気なのか。
でも――らんの目に、じんわりと涙が滲む。
こんなこと、今までなかった。
“ただの家族”なら、当たり前の光景かもしれない。
でも、自分にとっては奇跡のようだった。
みことが手に持っていた紙コップを差し出す。
🎼👑「カフェオレ。インスタントだけど、甘いやつにした」
🎼🌸「……ありがと」
紙コップを受け取る指が、少し震えた。
涙がこぼれそうになるのを必死で堪えて、カップに唇をつける。
甘い。
どこまでも、優しくて、温かい味がした。
🎼🍍「今日さ、夜の空、きれいだったよ。三人でベランダ出る?」
なつの声に、らんは小さく頷いた。
三人で空を見上げる夜。
静かなはずの時間が、こんなにもあたたかいものだと――初めて知った。
この家にも、まだ光は残ってる。
少なくとも、自分が守りたかったものは、ちゃんとここにある。
だから、もう少しだけ。
もう少しだけ、自分の心が壊れずにすむように。
誰かに頼っても、いいのかもしれない。
🎼🌸「……ただいま」
らんの口からこぼれた言葉に、なつとみことが同時に笑った。
🎼🍍「おかえり」
🎼👑「おかえり、らんらん」
その瞬間、世界が少しだけやさしく見えた。
コメント
1件
よかってねぇらんらん… ちょっと感動して涙出てくる泣(´;ω;`)