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塾の帰り道、ビルの隙間から見える月が、やけに眩しかった。 らんは自転車を押しながら、いるまの隣を歩いていた。
自転車のカゴには、今日の授業で使ったテキストと、いるまが買ってくれた缶のレモネード。
🎼📢「家、すぐ?」
🎼🌸「うん。でも、もうちょっと……このままでいたい」
らんの声は、どこか頼りなげだった。
でもそれを、いるまは否定しない。
立ち止まった信号の前、彼はぽつりと呟くように言った。
🎼📢「なあ。らん、お前んち……どこまでが“家族”だと思ってる?」
🎼🌸「え?」
🎼📢「……血がつながってるとか、育ててもらったとか、それだけで“家族”って言えるのかな」
胸に何かが刺さった。
言葉の意味は分からない。でも、その問いは確かに、今のらんの心に触れた。
🎼🌸「わかんない……けど、俺……親とは、そういうの、感じたことないかも」
育てられた、というより、“飼われてた”ような日々。
命の責任ではなく、世間体のために。
そんな“育てられ方”しか、思い出せなかった。
🎼📢「でも、なつとみことは?」
すぐに、らんは小さく笑った。
そのときだけは、ほんの少し表情が柔らかくなる。
🎼🌸「あいつらは……ちゃんと、弟だと思える。家族っていうより、……味方、かも」
🎼📢「味方か。いいじゃん」
信号が青に変わる。
渡りながら、らんはぽつりとつぶやいた。
🎼🌸「……でも、俺、自分の境界線がわかんないんだ」
🎼📢「境界線?」
🎼🌸「親と他人の間。家と外の間。どこまでが“自分”で、どこまでが“演じてる俺”なのか……」
足元の影が揺れる。
いるまは、ふとその手を伸ばした。
らんの自転車のハンドルを、そっと持ってやる。
🎼📢「だったら、今この瞬間のらんが“本当”でいいじゃん。少なくとも、俺の前では」
らんは、目を見開いた。
それはきっと、彼が今までに一度も言われたことのない言葉だった。
🎼🌸「……俺が、俺でいい?」
🎼📢「うん。ちゃんと自分の声で話せるなら、それが“本物”だろ」
風が吹く。
夜の匂いと一緒に、らんの心にすこしだけ――輪郭が戻ってきた。