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どうも吉田です。実はね最近ちょっと悩んでることがありまして。
それは何って?
あー、えーとですねそれは…
佐野さんの態度のことなんですよ。うん。
まあ基本彼ってとても忙しいんですよ。
売れっ子俳優でもありますし。
グループの活動も有り難いことに忙しくさせてもらってますし。
それもあって時間に追われているし、疲れに疲れて余裕がないことも多々あるんですね。それでもそこまで仕事に精力的に取り組めるし、目標に向かって努力を惜しまないし、邁進していく行動力もある。
正直同じグループのメンバーでリーダーという立場をとらせてもらっている俺から見ても主人公のような頼りになる存在だなと思っています。
ただそんなお疲れだった佐野さんも諸々の仕事が一段落したようでやっと少し休める時間ができたのかちょっと雰囲気が違うんですよ。
どう変わったかって?
なんて言ったらいいのかな。穏やか?になったのかな。
醸し出す雰囲気が柔らかいっていうか、優しいというか。
それなら問題ないしむしろ喜ばしいことなんじゃないかって?
うーーーん、それがそうとも言えないというか…。まあちょっと見てもらえたらわかるかと思うんで。あっ本人が来たんでこの話はまた後ほど。
『じーんと!おはよっ!!』
「おー、はよ。」
「…………何だよじっと見て。」
『ん〜ちょっとそのまま。よし!』
「………??」
『ほれ。まつげ付いてたから取っといた。』
「うおっまじか。恥ずかし…。ありがと。」
『おう。………笑』
「何ニヤニヤしてんだよ。何?まだ何か付いてる??」
『いやいや……おいちゃんかわいーね。』
「???!!」
そう言って頭を軽く撫でて去っていく勇斗。
は?何やってんのあいつ。言った言葉もありえねーけど、どさくさに紛れて頭撫でるのは意味わからん。
ただ最近、こういった言動?行動をされることが増えたように感じる。何で?
まあそんなことを考えていても仕方ないので意識を仕事に戻す。今日はグループミーティングだ。新曲のことやイベントのことなど話すことはたくさんある。集中しなければならない。
他のメンバーも続々集まり、チームの皆とも挨拶を交わし各々の席に座った。
話し合いは順調。
決めるべきことも無事決まり、充実した会議となった。
今日のグループでの仕事はここまで。
ソロの仕事を抱えているメンバーもいるのでここで解散となった。
時刻は17時過ぎ。
俺はこのあとはオフとなる。
明日は朝から個人での収録の仕事を控えているので今日は帰って曲作りなんかできたらいいかなと考えていた。
そんな時だ。
『じんと〜お疲れ。今日はこのあとオフだったよな?』
「お疲れ。ああ今日はこのあとは何も無いよ。勇斗もだよな。」
『そうそう。会議も順調に済んで割と早めに終わって良かったよな。』
「そうだな。佐野さんもせっかくできた時間なんだからちゃんと休めよ?」
『え〜〜最近は結構休めてるって。それより………仁人このあと予定ある?』
ギター弄ろうかなと漠然と考えていたくらいで特に決まった予定はなかった。
「いや?予定はないけど。」
『良かった!だったらちょっと付き合ってくんない?』
「は?何に??」
『いーから。いーから。』
そうして半ば強引に引っ張られながらメンバーやスタッフに挨拶を交わしつつ部屋を後にする。
待って待って俺どこに行くんだ?
「勇斗!とりあえず腕離せって。」
『おっとごめん。』
「何?どこに行くつもりなんだよ。」
『それは………イ・イ・ト・コ・ロ♡』
こいつふざけてんな。
生憎こんなふざけたやつに貴重な時間を使うわけにはいかない。
「帰る。」
『あ〜〜〜待って待って。仁ちゃん冷たい!!』
「ふざけんな。他を当たれ。」
『そんなこと言わないでよ。ちゃんと言うから。』
まあ聞くだけ聞いてやるか。
『実はさ〜俺車買ったじゃん。でも忙しくってあんま乗れてないのよ。遠出も出来てないし。』
「あ〜〜確かにな。そんな時間なかったもんな。」
『でもやっと時間できたわけよ。それが今日!』
「………今日?えっ…………まさか。」
『じーーーんちゃん!一緒にドライブしよ♡』
「…………………。」
あのこの人何言ってるんですかね。
今からドライブ?俺とお前で?
しかも新車。えっ気まず。
「いや……それこそ別の人に頼めば…」
『今日このタイミングを逃す手はないっしょ!!行くよおいちゃん!!』
「はあ??!ちょっ待てって勇斗!!!」
またぐいぐいと腕を捕まれまんまと勇斗のペースに巻き込まれていく俺。
まあ、運転してくれる車に乗ってればいい訳だし?付き合ってやるんだから何か絶対上手いもん奢らせよう。そう考えたら悪くはねーか。
勇斗に引っ張られながらささっと頭の中で結論を出し、腹を決めた。
どうやら勇斗は今日事務所までも車で来たらしい。駐車場まで引っ張られてきて改めて勇斗ご自慢の新車と対面する。
おお!すげえ。間近で見ると迫力あるな。
「かっこいい車だな!!」
『お?だろ!子どもの時から憧れてたのよ。』
「気持ちはわかる。…ほんと頑張ったな。」
心から出た賞賛に勇斗は少し擽ったそうに笑う。
『……ありがと。さあさあ、乗っちゃって仁人!!』
「お〜〜お邪魔します?」
一応挨拶しつつ、助手席に乗り込む。
これ外車だから右側なんだな。違和感。
そわそわしつつ乗り込めば乗り心地は納得の快適さ。
『何か横に仁人いるの違和感!』
「俺は右側が助手席なの慣れねえわ。」
『あ〜外車仕様だからね。まあ、すぐ慣れるっしょ!寛いで〜』
「ほんとすげえなお前。」
『ははっ』
正面を見ながら運転する勇斗の顔はちょっと照れ臭そうだが楽しそうでもあった。
自分の憧れたものを手にする気持ちはわかる。俺も欲しかったギターを手にしたときテンション上がりまくったもんな。
何となく自分の気持ちも浮上し、夕暮れ時のビル街を眺めていた。
ふとBGMが流れてきたと思ったら聞き覚えのあるイントロ。
これって…
「はっず。」
「はは!俺まじで好きなのよこの曲。」
それは勇斗が好きと言っていた俺の曲。
確かに車でよく聴いてるとは言っていたが本人を横に2人きりでも聴くんかい!
まあ好きって言ってもらえるのは嬉しいけども。
勇斗は軽くフレーズを口ずさみながら上機嫌に運転している。それを何となく落ち着かない気持ちで聴いている俺。
やっぱ恥ずかしいなこの空間。
『仁人のさ…』
「ん?」
『曲聴いてるときほんっと何でこんな歌詞浮かぶんかねー何があったんだよとかいろいろ思い浮かべるんだけどさ』
「うん」
『でも結局あ〜〜〜好きだなで終わっちゃうんだよね。』
「ははっ何だそれ。」
『いやほんとそうなのよ。すっげーって思いながら仁人の世界観に染まって歌ってるうちどうでもよくなっちゃう感じ。』
「…へえ?」
『うまく言えねえけど好きなんだよな。』
「…………ありがと。」
何かさこれがYouTube撮ってたり、メンバーといるときだったら正直めっちゃ茶化してたと思う。恥ずかしーやつとか何とか言ったりして。でも横目に見た勇斗の横顔が凄く優しい顔をしていてこれは真面目に受け止めなきゃなと思ったわけよ。それに実際こう素直に褒めてもらえるのは…まあ悪くないし。
そんな感じでその後はグループの曲や懐メロ流して歌ったりしてあっという間に時間は過ぎていったのだけど。あれ…そういやどこ向かってるんだ?
気づいたら夜景と綺麗な海が見える道を走ってる。
『ちょっとここで停めていい?』
「おお…」
勇斗が車を停める。
どうやらここが目的地らしい?
勇斗に言われるがままついていくとそこは絶景が広がっていた。
『実はさ…ここ海と夜景が綺麗に見える穴場スポットだったりするんだよね。』
「すっげえな。綺麗……だけど男2人じゃ浮かね?」
クスクス笑いながら夜景を眺める勇斗。
いやだってこれどう見てもカップルとかが来るところじゃ……。
『俺さ、ずっと最近考えてることがあって。』
「え?」
あれ……もしかして悩み相談とか?
でもだったらこんな場所じゃなくてもいいよな。
『ある人のこと考えるとすっげー胸が熱くなってさ。そいつのことばっか考えちゃうんだけど。俺って行動しないとか無理じゃん?』
あれ……これ恋愛相談?
『まあもちろん配慮はしつつ、その人にはそれなりにはアプローチはしてるんだけど。』
「…」
『その人がさ、ま〜〜〜たとんでもなく鈍感で。一向に気付かないわけ。』
「そりゃ、大変だな…。」
正直この勇斗にアプローチされたら分かるんじゃね?結構分かりやすくすると思うけどな、こいつは。
そんな疑問を浮かべながら勇斗の顔を眺めていると、ふっと笑みを浮かべる。
その目を見た瞬間何でか分からないが心がざわついた。
『そ、大変なのよ。相手が鈍感だとね。』
勇斗が1歩こっちに近づいたような気がしたと思ったら、何かが頬に触れた。それは勇斗の手。
「はや………と?」
勇斗の目は今まで見たどの目とも違ったような気がした。熱がこもったような湿度が高いようなそんな目。その目には俺しか映っていない。何だか見ていられなくてさっと視線を逸らす。
『なあ、仁人。俺が今、何考えてるか分かる?』
「な…に言って。そんなの分かるわけ…。」
『へえ。分かんない?』
「勇斗っ…近えって…。」
『なあちゃんと見ろよ?俺の目。どんな目してるかちゃんと仁人の目で確かめてよ。』
「意味………わかんね。」
恐る恐る目を合わせた瞬間、勇斗が微笑った。
そしてそのまま近づいてくると、
『分かった?俺が仁人のことどう思ってるか。』
そう耳元で囁かれた。
いつもより掠れた低い声が鼓膜を揺らすと、全身の血液が沸騰したかのように熱くなる。反射的に勇斗と距離を取ろうとするとそうはさせないといったように肩を掴まれた。
「なっ勇斗!!離せって…」
『だめ。離さない。仁人逃げないで。』
「勝手なこと言うなよ!逃げるだろ普通!!」
『仁人……ちゃんと俺の話聞いて。』
「聞く…から!!肩離せよ。」
勇斗は目線は合わせたままだったが肩から手をどけた。
掴まれたところが熱くて落ち着かない。
何だよ。これ。何でこんなことに。混乱した頭のまま勇斗の言葉を待つ。
『仁人ごめん。急に受け入れられないのもわかってる。でも俺、見ないふりできなかった。』
『仁人………………お前のことが好きです。』
一瞬周りが無音になったような気がした。目の前で言われていることなのに頭で処理が追いつかず、素通りしていくような感覚。なのに心臓だけが刻む速度を上げていく。息が苦しい。全身が熱い。
「な………それって………。」
かろうじて返した言葉は酷く頼りない響きだった。
『恋愛的にってこと。前は弟のように可愛く思ってた。でも今は違う。お前のこと可愛いって思う度に……』
『思いきり抱きしめたくなる。』
「そんな…。」
『仕事柄、メンバーでもあるし伝えないほうがいいだろうとも考えてた。でも…お前の笑顔とか嫌そうな顔とか怒った顔さえも全部全部自分のものにしたくなって…抑えられなかった。』
『今ここで答えだしてほしい訳じゃないんだ。ただ…俺の気持ちを知った上で過ごしてもらって改めて答えを聞かせてほしい。』
「勇斗が俺のこと好きって……。そんなことあるわけ…。」
『信じて。俺、本気だから。』
そう言う勇斗の目に偽りは感じられなかった。怖いほどに真剣で熱っぽい瞳に見つめられこちらもどうにかなってしまいそうだった。
『とりあえず…今日は帰ろっか。今日のお礼はまた今度させて。』
勇斗との距離が離れ、息を吐き出す。
まるで今まで呼吸ができていなかったようだ。心臓がばくばくしたまま落ち着かない。顔も…赤くなっているだろうか。
明日からどんな顔してお前と会えばいいんだよ。
『仁人………?車戻ろ?』
「……っ」
俺が動かないことに気づいたのか勇斗がすぐ側まで戻り、軽く肩に触れた。
弾かれたように体が跳ねる。
『おっとごめ…』
勇斗が申し訳なさそうに手を引くが俺はそれどころじゃなかった。
何でこんなに動揺してるのか自分でもわからない。
「行こ。」
かろうじてそれだけ返し、駐車場へと歩き出す。勇斗の顔は見れないまま。
メンバーからいきなり告白されたらそりゃ動揺だってするし、気まずくて顔だって見れなくなるだろう。それ自体は何もおかしいことはない。
問題だったのはそこではなかった。それは……………。
いやそんなはずはない。
そんなことあるはずがない。
何で…………………
嫌じゃないんだ…………………?
𝑭𝒊𝒏…?
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