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タクシーに乗り、近くの駅に着く。
代金を払うために財布から紙幣をだした。
トレイにお金を置いた時、運転手は首を振った。
「今回はお代いらないよ」
「え?」
顔を上げる。
そこには、若い青年がいた。
多分私より年下。
「お代がいらない、?」
「うん」
青年は続ける。
「あんた、そーとー疲れてるだろ?」
白い葉を見せてニッと笑った。
私はどう返せばいいのかわからなくなり、視線を青年から逸らした。
「俺、そういう人見ると少しでも助けてやりたくなっちゃうんだよねっ」
青年が私の頬に片手を伸ばし、撫でる。
とても暖かい手だった。
一瞬彼の優しい雰囲気に呑まれそうになる。
「いやでも、、、だめですよ。お金は払います。」
「えー? そう?」
青年が口を尖らせる。
それをどこか愛らしいと思ってしまう自分がいる。
「じゃあさ、連絡先交換しようよ」
また、青年はニコリ。
私は再びトレイに代金を乗せたあと、しばらく考えた。
「まあ、それなら、、、」
「やった」
青年がポケットからスマートフォンを取り出し、QRコードを私に見せる。
私はそれを読み取った。
「何かあったら相談してね。」
ペロリ、とお茶目に舌を出す青年。
「ああ、ありがと・・・。」
そのまま私はタクシーから降り、駅の入り口に向かった。
途中でちらりと後ろの青年とタクシーを見た。
青年はニコニコと笑っていた。
・・・私と連絡を取ったのがそんなに嬉しいのか?
一瞬、背中がぞくりとした。