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第二話 怪しい組織
ナッティが記憶を失ってから数日。普段ならキャンディやチョコに目を輝かせるはずの彼は、妙におとなしく、まるで別人のようになっていた。
周りのみんなも困惑していたが、特にフレイキーは心配でならなかった。彼女はナッティと一緒に過ごす時間が増え、「なんとか元の彼に戻してあげたい」と強く思っていた。
ある日の午後。二人は森の中を歩いていた。フレイキーがぽつりと言う。
「ねえ、ナッティ。もしかしたら記憶を取り戻す手がかりって、森のどこかにあるんじゃないかな…」
ナッティは首をかしげ、淡々とした声で答えた。
「手がかり……。どうだろう。でも、探してみるのはいいかもしれないね」
そんなやり取りをしながら歩いていると、二人は奇妙な光景を目にする。
森の奥に、不自然に黒いテントのような建物が立っていたのだ。周囲には黒いマントを羽織った動物たちが数名。彼らはひそひそと何かを話しており、表情はどこか冷たい。
フレイキーが震え声でつぶやく。
「な、なにあれ……? キャンプでもしてるのかな……いや、違うよね……」
ナッティも目を細めて答える。
「怪しい……。普通の住人じゃなさそうだ」
二人は気配を悟られないよう、木陰に身を隠した。耳を澄ますと、黒いマントの者たちが低い声で会話しているのが聞こえる。
「……次の“実験”対象は見つかったか?」
「まだだ。だが、この森に記憶をなくしたやつがいるらしい。そいつを捕まえれば……」
「ふふ、計画が完成するな……!」
フレイキーは息をのむ。
(記憶をなくしたやつって……まさかナッティのこと!?)
ナッティは冷静に聞いていたが、心のどこかで不安がよぎった。自分の記憶が消えたのは、もしかすると事故ではなく、この「黒い組織」の仕業なのかもしれない、と。
すると突然、黒マントのひとりがこちらに近づいてきた。フレイキーが慌てて木の陰に身を縮める。
「ど、どうしようナッティ! 見つかっちゃう!」
ナッティは落ち着いて、フレイキーの肩を押さえた。
「静かに。大丈夫、まだ気づかれてない」
だがその直後、枝を踏んでしまい「パキッ」と音が響く。黒マントが振り返り、目を光らせた。
「誰だ!? そこにいるのは!」
フレイキーは悲鳴を上げそうになったが、ナッティが彼女の手を引いて一目散に逃げ出した。森の中を走り抜け、木々をすり抜け、なんとか相手の追跡を振り切る。
二人は大きな岩の陰に身を隠し、息を整えた。
「はぁ……はぁ……危なかった……」
「うん。でも、今ので確信した。あの組織は僕を探してる」
フレイキーは顔を青ざめさせながら、必死に言葉を続ける。
「ナッティ、きっとあなたの記憶がなくなったのは……あの人たちのせいだよ!」
ナッティはしばらく黙り込んだ。そして静かに頷いた。
「……かもしれないね。真相を知るためには、あの組織の正体を突き止める必要がある」
だがフレイキーは首を横に振る。
「危ないよ! あんなのに関わったら、もっと大変なことになる!」
それでもナッティの目は真剣だった。記憶を失い、心の奥に空洞を抱えている今だからこそ、真実を知りたいという思いが強くなっていた。
「フレイキー。怖いなら無理に付き合わなくていい。でも……僕は行くよ。自分が何者なのか、なぜ記憶を失ったのか知るために」
フレイキーは迷った。怖い。でも、放っておけない。
震えながらも彼女はナッティの手を強く握った。
「……わかった。一緒に行く。私だって、放っておけないから」
二人は互いに頷き合い、決意を固めた。
――こうして、ナッティとフレイキーは“怪しい組織”の謎を追う冒険に踏み出すことになる。
だが彼らはまだ知らなかった。
組織の背後には、さらに大きな陰謀が潜んでいることを……。