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『SOSが怖くって』前編
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れっつご
ゾムside
鈍い音とともに痛みが走る。
硬いコンクリの上に、背中が打ち付けられる。
怖くて、目をつぶって、
笑い声を聞きたくなくて、耳をふさいで、
もう、長い時間がたった気がして。
力が、 入らなくなって、
笑い 声が、 聞こえ なく なって 、
▷
はっとして目を覚ました時、辺りには誰一人いなかった。
口の中に血の味が充満して、気持ちが悪かった。
自分の腕、顎、頬に、包帯や絆創膏が丁寧に貼られていた。
(また、…誰が、こんなこと…)
毎回のように、やられては倒れ、治療が施されている状態で目を覚ます。
未だに、誰がやっているのかは知らない。
申し訳なさ、悔しさ、不甲斐なさ、
やられてばかりの自分に、負の感情がどっと押し寄せる。
やられてばかりで、やめてほしいとも言えず、助けてほしいとも言えず、先生に訴えることもせず、
何もしないで、自分自身を責め続けている自分が、
一番嫌いだった。
▷ …?side
憎い
逆らえない自分が。
悔しい
助けられないことが。
ごめんなさい。
謝っても、許されるものではないというのに、
心の中で繰り返す。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
蹴って、殴って、笑って。
ゾムが辛いことなんて分かっている。
助けて、って叫ばれたら、涙が流れてしまうかもしれない。
もし、誰かに見つかりでもしたら、
もし、ゾムが意識不明、骨折などの重症になったら、
そう考えるだけで、足は震える。
その震えを、歯を食いしばって抑え続ける。
自分の拳で、脚で、同級生を虐め続ける。
許されやしない。
でも、命令に逆らっても、
許されやしない。
ごめんなさい。
俺は、
何がしたいのだろうか。
ゾムside
家に帰っても、親はいない。
母は残業だらけで帰るのは夜中。
父は___。
母は、生まれつき体が弱くて、薬漬けだった俺を、父のせいで借金まみれだったにもかかわらず、自分の身を削ってまでして養ってくれた。
そんな、大切な体なのに、
自分は守られ続けてきたのに、
虐められていることなんて、誰にも言っていなかった。
母には、伝えるどころか、最近顔も見なくなった。
朝起きたら、筆圧の弱い字で、「夕飯は冷蔵庫にあります」と書かれたメモとお弁当だけが、机に残されている。
独りは辛かった。
でも、学校ではずっと一人だ。
同じ孤独でも、学校での孤独はずっと楽だった。
邪魔もされず、痛いことも苦しいこともなかったから。
家での孤独は、暗闇に包まれているようで、
それは恐怖そのものだった。
青痣はずきずきと痛み、寝ようと思っても眠れない日々が続いていた。
毎日のように気絶していたら、眠れなくもなる。
今日は、
目を閉じたら、あの苦しさがよみがえってきそうで、
常夜灯の小さく頼りない明りを見つめていることしかできなかった。
かちゃり、
玄関のドアが開く音がした。
閉じかけていた瞼をはっと開き、時計を見た。
もう、深夜3時を回っていた。恐らく明日は隈ができているだろう。
そして、そっとベッドから降り、部屋の外を覗いた。
数週間ぶりだろうか、母の姿がそこにあった。
自分の知っている母ではなかった。
こんな母親は、見たくなかった。
吐き気がした。
痩せこけていて、目の隈が深く、濃く刻まれ、仕事かばんを持つ彼女の腕は今にも折れそうなほど細くなっていた。
顔色は悪く、病人のように青白かった。白髪交じりの髪の毛はぼさっとしていて、スーツもしわだらけだった。
死ぬんじゃないかと思った。まるでミイラのようだった。
自分の孤独に対する恐怖より、目の前に移った母親の姿の方が恐ろしく感じる程に。
俺は本能的に、ベッドへと後ずさりして戻った。
怖くなった。余計に眠れなくなった。
母親は、あんな姿になるまで働き続けて、借金を返済しようとしていた。
それに対して自分は、いじめられ続けて、何もできないままだった。
憎い
自分のことが。
悔しい
何もできないことが。
怖い
助けて、と他人に伝えることが。
ごめんなさい。
お母さん。
勇気のない自分を許してほしい。
こんな自分のために、もう頑張らないでほしい。
失礼だ。でも、もう、これ以上、
自分よりも、
傷 つかない で ほし かっ た ………
『SOSが怖くって』前編