テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
宮舘さんは仕事の場では完璧な「メンバー」を演じ、一歩も踏み込ませない。その冷徹な距離感が、渡辺さんの理性を内側から焼き尽くしていくシーンです。
第二章:『渇きの果ての偶像崇拝』
仕事場での宮舘さんは、冷酷なほどに「普通」でした。 渡辺さんがどれだけ視線を送っても、宮舘さんは業務上の会話以外、決して目を合わせようとしません。楽屋で隣に座ることも、以前のように体温を感じる距離に立つこともなく、ただの「宮舘涼太」としてそこに存在している。
その**『正しすぎる距離』**が、渡辺さんにとっては毒よりも残酷でした。
「……なんで、普通でいられるんだよ」
自宅に戻った渡辺さんは、暗い部屋で一人、震える手でスマートフォンの画面をスクロールします。画面に映るのは、SNSに流れる宮舘さんの最新の雑誌カット。 渡辺さんは、その画像を保存するだけでは飽き足らず、拡大し、宮舘さんの瞳の奥、唇の端を、指先でなぞり続けます。
やがて渡辺さんの部屋は、異常な空間へと変貌していきました。 床には、宮舘さんが掲載されたあらゆる雑誌の切り抜きが、まるで魔術の儀式のように隙間なく敷き詰められています。 仕事場で向井さんが何気なく撮り溜めていた「オフショット」を、阿部さんの目を盗んで自身の端末に転送し、それを深夜、暗闇の中で繰り返し再生する。
「涼太、涼太……、こっち向いてよ……」
映像の中の宮舘さんは笑っているのに、今の自分には一度も笑いかけてくれない。 飢餓感に耐えかねた渡辺さんは、宮舘さんの写真に自分の顔を押し当て、そこに残るはずのない「香香」を必死に吸い込もうとします。
「……あ、はは……。これじゃ、ただのストーカーじゃん」
自嘲気味に笑いながら、渡辺さんは宮舘さんの喉元が映った写真を、まるで獲物を喰らうように強く、強く指でなぞり、爪を立てました。 表面が削れ、白い傷がついた写真。それを見て、渡辺さんの瞳に異様な高揚が宿ります。
(……ねえ、涼太。あんたが俺を見てくれないなら、俺が壊れるしかないよね。俺がもっとボロボロになれば、あんたはまた、『生け贄』を拾いに来てくれるでしょ?)
渡辺さんは、自分の腕を強く自ら抱きしめ、宮舘さんに触れられている幻覚を必死に作り出します。 もはや目黒さんの優しい愛など、渡辺さんの空っぽの心を満たすことはできませんでした。
宮舘涼太という名の猛毒。 それを一滴も与えられない「禁断症状」が、渡辺さんを自傷的な執着へと突き動かしていく。 部屋中に溢れる、数千、数万の宮舘涼太の残像に囲まれて、渡辺さんはゆっくりと、幸福な狂気へと沈んでいったのです。