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宮舘さんがあえて「仕事上の距離」を保つことで、渡辺さんの渇望が狂気へと変わっていく過程をより濃密に描きます。
自分を無視し、完璧な「メンバー」として振る舞う宮舘さんに絶望し、渡辺さんがクローゼットという密室に独自の聖域を築き上げていくシーンです。
第二章:『檻の中の残響』——渇愛のクローゼット
再始動したSnow Manの中で、宮舘さんは徹底して「プロフェッショナルな距離」を保っていました。 楽屋で隣になっても必要最低限の仕事の話しかせず、収録が終われば渡辺さんに視線を投げることもなく、風のように去っていく。第一章のあの熱情が嘘だったかのような冷淡さに、渡辺さんの心は焦燥に焼き尽くされようとしていました。
「……なんでだよ、涼太。なんで俺を見ないんだよ」
無視されることが、殴られるよりも痛い。 宮舘さんの関心を失うことを恐れた渡辺さんの精神は、徐々に外の世界ではなく、宮舘さんの「残像」を収集することに執着し始めました。
最初は、宮舘さんが表紙を飾った雑誌を数冊買うだけでした。しかし、それだけでは足りない。 テレビ番組の録画をコマ送りにして、宮舘さんが一瞬だけ見せる無防備な表情を画面越しに指でなぞる。さらに、現場で隠れて回したスマートフォンの動画や、スタッフの目を盗んで手に入れたオフショットの束。
それらは、誰の目にも触れないよう、渡辺さんの寝室の奥深くにあるウォークインクローゼットの中に運び込まれました。
クローゼットの扉を閉め、真っ暗な空間で小さなライトを点ける。そこには、壁一面に宮舘さんの写真や切り抜きが、隙間なく貼り巡らされていました。
「……ここなら、涼太は俺だけのものだ」
渡辺さんはクローゼットの床に膝を抱えて座り込み、壁に貼られた「冷たい瞳の宮舘さん」を見つめました。 仕事現場での宮舘さんは、渡辺さんに決して触れません。だからこそ、渡辺さんはクローゼットの中で、写真の中の宮舘さんの指先を自分の頬に当て、彼が放つはずの白檀の香りを脳内で再現します。
ある夜、渡辺さんはクローゼットの奥に、宮舘さんが以前撮影で脱ぎ捨てたものと全く同じブランドの、未開封のシャツを飾りました。 それに自分の頬を寄せ、宮舘さんに抱きしめられている幻覚に浸りながら、渡辺さんはうわ言のように繰り返します。
「涼太、見てよ。俺、こんなに涼太のことでいっぱいだよ……。ねえ、いつになったら、本物の手で俺を壊してくれるの?」
写真の中の宮舘さんは、どこまでも気高く、沈黙を守ったまま。 渡辺さんの瞳からは光が消え、クローゼットの湿った空気の中で、彼の正気は少しずつ、確実に溶け落ちていくのでした。
このクローゼットという「密室」こそが、渡辺さんにとっての真の安息の地であり、二人を再び逃避行へと駆り立てる狂気の苗床となっていくのです。