テラーノベル
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ここはもう、安全な場所じゃない。
第四話。どうぞ。
北海道side
北海道は、自分の輪郭が曖昧になっていることに気づいていた。
朝、目を覚ましたとき。
視界の端が、妙に白い。
雪ではない。霧でもない。
何もない白だ。
「……またか」
呟いた声が、部屋の端で吸い込まれる。
広い。
昔からそうだった。
広さは強さだと思っていた。
余白がある。逃げ道がある。受け止められる。
でも最近、その広さが
保持できない空間に変わり始めている。
地図を広げる。
紙のやつだ。
端から、滲むように白が侵食している。
「道東……いや、もっと内側か」
指を置く。
そこに“あったもの”が、思い出せない。
名前。
町。
誰かの声。
北海道は、強く歯を噛みしめた。
(消えてるんじゃない)
(消されてる)
そのとき、背後で音がした。
床が、軋む。
「……誰だ」
振り返る。
そこに立っていたのは、
小さな県だった。
輪郭が薄い。
まるで、北海道の白に引きずられたみたいに。
「来ちゃった」
県は、軽く言った。
「ここ、まだ残ってるでしょ」
北海道は答えなかった。
その県を、知っている“感覚”だけがあった。
「もう、南は無理」
「南?」
「中心」
県は笑った。
でも、目は笑っていない。
「思い出されすぎる場所は、逆に残る。
だから、消えるのはいつも――」
「端だ」
北海道が言うと、
県は静かに頷いた。
「広すぎると、全部を思い出してもらえない」
胸が痛んだ。
北海道は、それを誇りにしてきた。
全部を抱えてきたつもりだった。
「ねえ」
県が近づく。
一歩ごとに、足音が薄くなる。
「君、もう欠けてるよ」
北海道は、自分の腕を見る。
そこにあるはずの影が、途中で途切れていた。
「……いつから」
「気づいた時には、もう」
県は言葉を濁す。
「でも、まだ残れる」
「どうやって」
「記憶を、集める」
北海道は笑った。
「それ、奪うってことか」
「違う」
県は首を振る。
「思い出してもらうだけ」
北海道の脳裏に、東京の顔が浮かんだ。
大阪の声。
宮城のノート。
「……間に合わない」
北海道は悟った。
「君は、もう決めてる顔だ」
県は、少し悲しそうに言った。
その瞬間、部屋の奥で音がした。
壁が、ひび割れる。
白が、流れ込んでくる。
「来る」
北海道は県の肩を掴んだ。
「名前を言え」
「え?」
「お前の名前を言え」
県は、口を開いた。
でも、音が出ない。
喉が震えるだけ。
「……無理だ」
涙が滲む。
「もう、誰も呼ばない」
白が足元に迫る。
北海道は、静かに頷いた。
「なら、俺が覚える」
県を抱き寄せる。
「俺が最後になる」
次の瞬間、
白が、二人を包んだ。
音はなかった。
痛みもなかった。
ただ、空間が一つ減った。
NOside
その夜。
東京のデスクに、一通の文書が届く。
差出人:不明
分類:公式記録
件名は、こう書かれていた。
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「都道府県数 再確認のお願い」
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本文は、まだ読まれていない。
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コメント
4件
話が複雑になってきわかんなくなってきたんだせ☆