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目を開けた時には、私はソファに寝ていた。いつ戻ったのかいつ寝たのか覚えてない。でも、昨日の夜のことは、はっきりと覚えている。何故か、ものすごく。懐かしかった。
おばあちゃんが朝ごはんを準備してくれて、蓮と歩夢と一緒にご飯を食べた。昨日と同じ時間におばあちゃんの家を出る。
昨日のことを二人に話そうか迷った。話したほうがいいのか、私には分からない。
綺麗な青い空、そんな綺麗な空を眺めながら____。昨日…鏡の中の私に言われた言葉を思い出していた。
『私はあなたで、あなたは私なの! ふふ』
「な、なにがおかしいの…」
『ん〜? だってぇ羽沙可愛いんだもん! やっぱり覚えてないんだなぁ…と思ってさ!』
「覚えてない? なんのこと…」
『私はあなたに一回会ってるんだよ? しぃ〜い〜な!』
………………
その言葉を聞いた後から何故か覚えていない……。
でも、昨日鏡の中の私が言っていた事が事実なら、あの日だ。私達の家族と歩夢の家族で死暗神社の前にある野原にピクニックに行った日。そう。私が変な声を聞いた日だ。
頭が混乱する…。どうなっているんだ……。昨日喋ったのが私⁇ そんなはずない…だって、私は…
「羽沙ーーーー‼︎ おいて行くぞ!」
蓮の声で私が立ち止まっていたことに気がついた。
「今行くー」
昨日のことは一旦おいておこう。蓮と歩夢をこれ以上悩ませたくないし、今はこれからやることに集中しよう。
高校前で愛菜と真里と合流して三島家、私と蓮の家に向かった。
蓮と一緒に三日ぶりに家に帰ってきた。お父さんとお母さんと過ごした、思い出が詰まった大切な家。
玄関から家を見上げる。どうしてもこの家を見るとあの光景を思い出してしまう。嫌な記憶が__。蓮も、同じように家を見上げ、とても苦しそうな顔をしていた。ふと蓮が呟いた。
「羽沙…、がんばろ…」
涙が溢れそうになるのを堪えて。強く、強く、頷いた。
歩夢と真里と愛菜は後ろからただ私達を見守っていた。
蓮が鍵で扉を開けみんなで中に入る。本当は入っちゃいけないことになっているが、どうしても調べたいことがあるとおばあちゃん達に無理を言って鍵をもらった。自分たちの家に入るのに断りを入れなきゃいけないことに嫌な気持ちになる。
部屋の雰囲気はあの日のまま、まるでこの家だけが時間が止まっている感覚だった。
みんなで部屋を眺めていた時、蓮が今日の予定を話し始める。
「今日は主に手がかりを探そう、何かきっとあるはずだ。この家ならどこを探してもいい」
「私からも一ついい? 私と蓮の部屋、お父さん達の部屋は主に私と蓮で調べさせてくれる?」
私と蓮が言ったことに三人は静かに頷いてくれた。
歩夢と愛菜と真里がリビング中心にキッチン、客間を探してくれる。
私は自分の部屋を、蓮は蓮の部屋を、お互いに自分の部屋が終わったら。一緒にお父さんとお母さんの寝室、お父さんの書斎、お母さんの化粧室。を調べて行く。
私は階段を登り、自分の部屋に向かった。
部屋に入った瞬間ふと、不思議な感じがした。下の階に比べて私の部屋はやけに空気が温かい。私の部屋は日が当たらないから冬はとても気温が下がるはずだ。
お母さんが私が学校から帰ってくるまでに暖房をつけといて暖かくしてくれていたから前は不思議ではなかった。
でも、今は違う。三日間だれもこの部屋を使ってはいないはずだ。
周りをぐるっと見ると、不思議な点が何個もあった。
やけに空気が温かいこと、鏡の位置が変わっていること、机の電気がつけっぱなしな所。
まるで今までここに誰かが居たかのような__。
暖房をつけない限り、冬に限ってこの部屋が温かいことはあり得ない。鏡は元々タンスの横に置いていた、だけど今はドアのすぐ横に置いてある。電気が一番不思議だ、不思議通り越して怖い。寒気がする。
だけど、こんな所でつまずいている暇はない。
電気を消して、鏡を元の位置に戻した。と、その時だった____。
___ゴトッ
鏡から奇妙な、何かが落ちる音がする。
不思議に思って、恐る恐る近づいていった。鏡を覗き込むと、そこには鏡に映る自分だけだった。
「な、なんだ、気のせいか〜びっくりしたぁ」
『ワッ!!』
「きゃっ!!」
『ふふふw 椎名尻もちついちゃってかぁわいい〜!』
びっくりしすぎて声が出なかった。
何もなかったと安堵の声を出した途端に、鏡から不思議な少女の姿が現れた。
「あ、あなたは、誰……」
びっくりしすぎて、質問する声が掠れてしまった。
少女はきょとんとした顔で私を見つめ返している。改めてその少女を見ると、息を呑むほど美しかった。童話に出てくるかぐや姫のような姫カットをしていて。腰のところまで長く伸びている真っ黒な髪、私を見つめるその瞳は、まるでルビーのような真っ赤な瞳だった。
その容姿に見惚れていると、
『ねーねー!椎名!何か服なぁい?』
「え、」
よく見ると服を着ていなかった。
「え、ちょっと待ってね!」
なんか色々と頭が混乱することが増えている気がするけど、とにかく今は服を探してあげることにした。
「私が小さい頃の服なら合うかな? どこだろう」
『あ!椎名! それがいい!』
少女が指差したのは私が昔夏祭りに着て行っていた浴衣だった。
「これ? 浴衣でいいの?」
『ゆかた? とにかくそれがいい!』
「うん!わかった、帯がどこにあったかなぁ、あ、あった! どの柄の浴衣がいい?」
『これ!』
少女は赤い牡丹の柄を選んで嬉しそうにしていた。不思議な子でよくわからないけど、この子が危険な人物とは思えない。
この子と喋っていると妹ができたみたいで嬉しい気持ちになる。
着付けをしてあげて喜んでいるのを見るととても嬉しくなった。