テラーノベル
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〇〇side
23:12
スタートエンターテイメント・事務所。
会議室のドアが開く。
〇〇「お疲れ様でした」
マネージャー「お疲れ」
軽く頭を下げて外に出る。
廊下は静かで、人もほとんどいない。
〇〇「はー…」
小さく息を吐く。
スマホを見ると、23時過ぎ。
〇〇「帰ろ」
そう思って歩き出した、その時。
「〇〇」
後ろから名前を呼ばれる。
振り返る。
そこには――
樹と慎太郎と北斗。
〇〇「あれ、まだいたの?」
樹「今終わり?」
〇〇「うん、今終わったとこ」
慎太郎「ちょうどいいじゃん」
〇〇「なにが?」
樹「今から飯」
慎太郎「来る?」
〇〇「え」
少しだけ考える。
〇〇「…明日昼からだし」
樹「じゃあ決まりな」
〇〇「行く!」
慎太郎「よっしゃ」
自然な流れで決まる。
北斗と目が合う。
〇〇「なに」
北斗「別に」
いつも通り。
そのまま4人でエレベーターへ向かう。
1階ロビー。
エレベーターが開く。
出た瞬間、視界に入る。
誰かと並んで話している2人。
〇〇「…あ」
見覚えのある横顔。
廉。
その隣には、玉森くん。
2人とも楽しそうに話している。
〇〇が少し足を止めた、その時。
廉がふと顔を上げる。
目が合う。
一瞬だけ、間ができる。
〇〇「お疲れ」
廉「お疲れ」
自然なやり取り。
玉森くんも気づいてこちらを見る。
玉森くん「こんばんは」
樹「お疲れ様です」
慎太郎「お疲れ様です」
軽く挨拶が交わされる。
廉がそのまま聞く。
廉「今から?」
〇〇「ご飯」
樹「行くとこ」
慎太郎「一緒にどうですか?」
軽いノリ。
でも一瞬だけ空気が止まる。
玉森くんが笑う。
玉森くん「いいね、行こうか」
廉も少しだけ頷く。
廉「…いいよ」
〇〇「6人?」
樹「多いな」
慎太郎「楽しいじゃん」
そのまま自然に決まる。
特に深い意味もなく。
ただの流れで。
外に出て歩き出す。
前に玉森くんと廉。
後ろに〇〇たち。
〇〇は前の2人を見ながら言う。
〇〇「仲いいよね」
樹「だな」
慎太郎「廉、玉森くんのことめっちゃ慕ってるし」
〇〇「“森さん”って呼んでるよね」
樹「あーそれな」
少し笑う。
〇〇「なんかいいよね、ああいうの」
軽く言う。
特に深い意味はない。
ただ思ったこと。
店に着く。
個室に通される。
自然と席に座る流れになる。
なんとなくの配置。
〇〇の隣に、廉。
向かいに、北斗。
周りに樹、慎太郎、玉森くん。
〇〇「なんか久しぶりだね」
隣の廉に話しかける。
廉「そうだな」
〇〇「元気だった?」
廉「普通」
短いけど、少し柔らかい。
〇〇は軽く笑う。
〇〇「そっか」
落ち着いた空気。
話しやすい距離。
懐かしい感じ。
特に意識もしてない。
ただ、自然。
樹「とりあえず頼むか」
慎太郎「腹減ったー」
玉森くん「何にする?」
賑やかに進む。
〇〇もメニューを開く。
〇〇「何食べよ」
そのまま普通に会話が続く。
いつもと変わらない空気。
でも。
向かい側。
北斗と、何度か目が合う。
〇〇「なに」
北斗「別に」
またそれ。
〇〇は少しだけ笑う。
〇〇「今日そればっか」
北斗「気のせい」
短いやり取り。
すぐに終わる。
〇〇はまたメニューに視線を落とす。
深く考えることもなく。
ただ、いつも通り。
普通の夜。
普通のご飯。
ただ少し人数が多いだけ。
それだけのはずなのに――
どこか、少しだけ。
空気が揺れていることには、
〇〇はまだ、気づいていなかった。
ーーーーー
北斗side
23:12
事務所の廊下。
樹と慎太郎と合流して、帰る流れになった時。
樹「飯行く?」
慎太郎「腹減ったしな」
そのまま歩き出す。
エレベーター前で。
ちょうどドアが開いて、〇〇が出てくる。
〇〇「お疲れ」
タイミングが良すぎる。
樹「今終わり?」
〇〇「うん」
慎太郎「来る?」
少し考えてから。
〇〇「行く!」
即答。
変わらない。
こういうとこ。
北斗は何も言わず、そのまま隣に並ぶ。
目が合う。
〇〇「なに」
北斗「別に」
それ以上は言わない。
1階ロビー。
エレベーターが開いた瞬間。
視界に入る2人。
廉と、玉森くん。
楽しそうに話してる。
〇〇が少しだけ足を止める。
その動きで、気づく。
廉も顔を上げる。
目が合う。
一瞬。
空気が変わる。
〇〇「お疲れ」
廉「お疲れ」
自然なやり取り。
でも距離が近い。
声も柔らかい。
慎太郎が軽く言う。
「一緒にどうですか?」
断る理由はない。
玉森くんが笑う。
「いいね、行こうか」
廉も頷く。
「いいよ」
それで決まる。
簡単に。
あっさりと。
店までの道。
前に廉と玉森くん。
後ろにこっち。
〇〇が前を見ながら言う。
「仲いいよね」
普通のトーン。
ただの感想。
樹が返す。
慎太郎も笑う。
〇〇「“森さん”って呼んでるよね」
軽く笑う。
その声が、前まで届いてるかはわからない。
でも、距離があるようで近い。
北斗は何も言わない。
ただ歩く。
〇〇の声と、前の2人の背中。
それだけが視界に入る。
店。個室。
座る流れ。
〇〇の隣に廉。
向かいに自分。
出来すぎてる配置。
避けようがない。
〇〇「なんか久しぶりだね」
廉に話しかける。
自然すぎる距離。
声のトーンも、少しだけ違う。
廉「そうだな」
〇〇「元気だった?」
廉「普通」
短い会話。
でも成立してる。
空気も落ち着いてる。
見なくてもわかる。
その感じ。
〇〇が笑う。
軽く。
懐かしそうに。
その表情を、正面から見る形になる。
逃げ場はない。
樹たちがメニューを開く。
会話が広がる。
でも。
視界の中心は変わらない。
隣同士の2人。
〇〇が何か言って、廉が返す。
距離が近い。
自然すぎる。
北斗はグラスに手を伸ばす。
まだ何も始まってない。
ただのご飯。
ただの再会。
それだけのはずなのに。
妙に、静かに、
何かが削れていく感覚だけが残る。
ーーーーー
廉side
23:12
事務所ロビー。
森さんと並んで立ってる。
他愛もない話。
今日の仕事のこと。
次の現場のこと。
玉森「今日長かったな」
廉「ですね」
少し笑う。
その時。
視線の端に動き。
何人か降りてくる。
無意識に顔を上げる。
〇〇。
その後ろに、樹たち。
一瞬でわかる。
目が合う。
〇〇「お疲れ」
廉「お疲れ」
声は普通。
でも少しだけ柔らかくなる。
距離も、自然とそのまま。
樹たちも挨拶する。
流れで話が進む。
「今から?」
「ご飯」
自然な会話。
慎太郎が言う。
「一緒にどうですか?」
少しだけ間。
断る理由はない。
森さんが先に笑う。
「いいね、行こうか」
その流れで頷く。
「いいよ」
決まる。
あっさり。
でも、悪くない。
店までの道。
森さんと前を歩く。
後ろに〇〇たち。
会話は続いてる。
でも、少しだけ意識が後ろにいく。
足音。
声。
〇〇の笑い方。
変わってない。
距離も。
時間も。
変わってるはずなのに。
店。個室。
座る。
自然と、隣。
〇〇の隣。
意図したわけじゃない。
でも、避ける理由もない。
〇〇「なんか久しぶりだね」
横から声。
近い。
廉「そうだな」
〇〇「元気だった?」
廉「普通」
短く返す。
でも、それでいい。
〇〇が笑う。
その感じ。
変わってない。
無理してない笑い方。
少しだけ安心する。
メニューを開く。
周りが騒ぐ。
でも。
視界の中で一番近いのは、〇〇。
自然に会話が続く。
無理がない。
途切れない。
やっぱり、楽だと思う。
ふと視線を上げる。
向かい。
北斗。
目が合う。
一瞬だけ。
何も言わない。
でも、わかる。
空気。
距離。
立ち位置。
全部。
廉は視線を外す。
グラスに手を伸ばす。
まだ何も始まってない。
でも。
このままでもいいとは、思ってない。
ーーーーーーーー
個室。
人数が少ない分、空気が近い。
会話も自然と一つにまとまる。
樹「なんかこのメンツ珍しくね?」
慎太郎「確かに」
玉森くん「俺も思った」
〇〇「なんでこうなったんだっけ」
廉「お前が来たからやろ」
〇〇「違うし」
軽く言い返す。
そのテンポ。
昔と変わらない。
料理も進んで、酒も回ってきてる。
〇〇のペースはやっぱり早い。
慎太郎「お前もう2杯目じゃね?」
〇〇「まだいける」
樹「その言葉もう信用ない」
〇〇「今日はいける」
即答。
全員が一瞬黙る。
慎太郎「それ前も聞いた」
樹「完全にフラグ」
玉森くんも小さく笑う。
廉はグラスを指で回しながら、〇〇を見る。
廉「ほんま懲りへんな」
〇〇「懲りる理由ない」
あっさり。
そのまま飲む。
話は仕事の話へ。
樹「最近ドラマどうなの」
〇〇「忙しい」
慎太郎「それは知ってる」
〇〇「でも楽しい」
玉森くん「いいね、それ」
〇〇「玉森くんは?」
玉森くん「普通かな」
穏やかな返し。
その横で。
廉も入る。
廉「普通って一番忙しいやつやん」
玉森くん「そうかもね」
笑う。
落ち着いた空気。
ふと。
慎太郎がニヤッとする。
慎太郎「そういえばさ」
樹「またかよ」
慎太郎「いやでもこのメンツならいいだろ」
〇〇「なに」
もう警戒してない。
慎太郎「この前のやつ」
〇〇「あー」
即理解。
〇〇「北斗のやつでしょ」
軽い。
あまりにも軽い。
玉森くん「なにそれ」
廉も視線を上げる。
慎太郎は嬉しそうに話す。
慎太郎「こいつ酔いすぎてさ」
樹「全部言うなよ」
慎太郎「水飲めなくて」
〇〇「ちょっと盛ってる」
慎太郎「盛ってねえよ」
そして。
慎太郎「北斗が口移しで飲ませた」
玉森くん「え、すご」
少し驚いた顔。
廉は無言で〇〇を見る。
〇〇は普通にグラスを持ったまま。
〇〇「まあそうらしいね」
あっさり。
廉「“らしい”って」
〇〇「覚えてないし」
淡々としてる。
〇〇「でも別に気にしてない」
そのまま飲む。
完全に通常運転。
その反応に。
一瞬だけ、場がズレる。
樹「いや普通気にするだろ」
〇〇「なんで」
慎太郎「いや…キスだぞ?」
〇〇「事故でしょ」
即答。
合理的すぎる。
北斗は何も言わない。
廉は少しだけ笑う。
廉「事故なら何回でもええん?」
〇〇「ならないでしょ」
〇〇「まずそんな状況にならないし」
軽く返す。
でもその軽さが。
逆に引っかかる。
〇〇はまた飲む。
頬はもう赤い。
目も少しだけゆるい。
慎太郎「いやほんとやめろって」
〇〇「大丈夫」
樹「説得力ゼロ」
玉森くん「ちょっとペース早いかもね」
優しく言う。
〇〇「いける」
即答。
また一口。
その時。
廉がふと、低く言う。
廉「なあ」
〇〇「なに」
廉「またそうなったらさ」
少しだけ間。
廉「今度誰に頼むん?」
空気が一瞬止まる。
慎太郎「おい」
樹「それは…」
でも〇〇は普通に返す。
〇〇「頼まない」
廉「いやわからんやん」
〇〇「わかる」
〇〇「普通に水飲む」
言い切る。
そのまま笑う。
軽い。
何も背負ってない顔。
廉はそのまま〇〇を見て、
少しだけ視線を横に流す。
北斗。
一瞬だけ。
静かにぶつかる視線。
言葉はない。
でも十分。
北斗はグラスを置く。
〇〇の方を見る。
〇〇はまた飲もうとしてる。
その手が、少しだけ危うい。
揺れてる。
完全に、酔いが回ってきてる。
玉森くんは静かにその様子を見る。
口は出さない。
でも全部理解してる目。
〇〇「ほんと大丈夫だから」
また同じことを言う。
誰も信じてない。
でも止めない。
止められない。
静かに。
空気だけが、また一段階深くなる。
ーーーーーーーー
料理も一通り揃って、場の空気はかなり柔らいでいる。
〇〇はグラスを持ったまま、ふと立ち上がる。
樹「なに」
〇〇「ちょっとこっち座る」
そう言って、そのまま移動する。
座った先。
玉森くんの隣。
玉森くん「いいの?」
〇〇「はい!」
何も考えてない顔。
自然に座る。
距離も近い。
肩が軽く触れるくらい。
北斗の視線が一瞬止まる。
廉も同じように見る。
でも〇〇は気づかない。
そのまま話し始める。
〇〇「玉森くんってさ」
玉森くん「なに?」
〇〇「ほんと落ち着いてますよね」
玉森くん「そうかな」
〇〇「なんか安心する」
素直な感想。
飾りがない。
玉森「ありがとう」
慎太郎が小声で言う。
慎太郎「完全に懐いてるじゃん」
樹「な」
廉はグラスを軽く揺らしながら、視線を外さない。
北斗は何も言わない。
ただ静かに見てる。
〇〇はそのまま話を続ける。
〇〇「現場とかでもさ」
玉森「うん」
〇〇「なんかピリつかないですよね」
玉森「それは周りのおかげかな」
〇〇「いや絶対玉森くん」
即答。
迷いがない。
その距離感。
その信頼。
廉がふと口を開く。
廉「めっちゃ懐いとるやん」
〇〇「普通でしょ」
廉「普通ちゃうやろ」
〇〇「普通」
あっさり返す。
そのまままた飲む。
樹「いや距離感バグってるって」
慎太郎「近い近い」
〇〇「近くないし」
玉森「大丈夫だよ」
落ち着いた声。
それがまた、〇〇を安心させる。
〇〇は少しだけ身体を傾ける。
玉森くんの方へ。
完全に無意識。
酔いも回ってきてる。
〇〇「ほんと今日いける」
また同じセリフ。
樹「それ何回目だよ」
慎太郎「もう聞き飽きた」
廉が小さく笑う。
廉「全然いけてへん顔してるけど」
〇〇「いけてる」
言いながら、また飲む。
その様子を見て。
北斗「やめとけって」
低い声。
短く。
〇〇が少しだけそっちを見る。
〇〇「大丈夫」
北斗「大丈夫じゃないだろ」
少しだけ強い。
でもそれ以上は言わない。
玉森くんがやんわりフォローする。
玉森「ちょっとゆっくり飲もうか」
〇〇「うん」
素直に頷く。
でもまたすぐにグラスに口をつける。
その瞬間。
廉が前に少しだけ身を乗り出す。
廉「なあ」
〇〇「なに」
廉「ほんまにさ」
少し間。
廉「またああなったらどうすんの」
〇〇「ならないって」
即答。
〇〇「てかあれ事故だし」
軽い。
あまりにも軽い。
廉は一瞬だけ黙る。
そのあと、視線を北斗に向ける。
ほんの一瞬。
静かな牽制。
北斗はグラスを置く。
視線は〇〇。
玉森くんの隣で、無防備に笑ってる。
何も知らない顔で。
〇〇「てかさ」
また話し始める。
〇〇「今度さ、普通にご飯行きたい」
玉森くん「いいよ」
〇〇「ほんとですか?」
少し嬉しそう。
そのやり取り。
自然すぎる距離。
樹が小さく呟く。
樹「やばいなこれ」
慎太郎「やばい」
北斗は何も言わない。
廉も何も言わない。
でも。
空気だけが、はっきり変わっていく。
〇〇はまた笑う。
何も気づかずに。
ーーーーー
空気はだいぶ緩んでいる。
玉森くんの隣で、〇〇は完全にリラックスしている状態。
グラスを持つ手もゆるく、視線もぼんやり。
樹「ほら言ったじゃん」
慎太郎「もう出来上がってるって」
〇〇「できてない…」
声は少し遅い。
玉森「大丈夫?」
〇〇「うん…」
そう答えながら、ふっと力が抜ける。
そのまま。
こてっと。
玉森くんの肩に頭を預ける。
一瞬で空気が止まる。
樹「え?」
慎太郎「おいおいおい」
北斗の視線が止まる。
玉森「ちょっと…」
軽く声をかける。
でも〇〇はそのまま。
〇〇「ちょっとだけ…」
無意識に甘える。
北斗が低く言う。
北斗「おい」
短く。
北斗「やめとけって」
視線は〇〇。
同時に。
廉が椅子を引く。
ガタン。
廉が立ち上がる。
廉「〇〇」
〇〇「ん…?」
顔をゆっくり上げる。
廉「戻ってきて」
はっきり。
〇〇「なんで…」
廉「先輩やぞ」
〇〇「…」
廉「失礼やろ」
北斗も重ねる。
北斗「聞こえてんだろ」
〇〇が少しだけ視線を向ける。
北斗「降りろ」
ぶっきらぼうに。
樹「そうそう」
慎太郎「普通にやばいって」
〇〇「えー…」
不満そう。
玉森くんは苦笑い。
玉森「大丈夫だよ」
〇〇「ほら」
小さく言う。
北斗がもう一度。
北斗「よくねえって言ってんだろ」
少し強め。
その一言で。
〇〇が止まる。
〇〇「…はいはい」
渋々。
身体を起こす。
立ち上がる。
ふらつく。
廉がすぐ手を伸ばす。
廉「危ない」
〇〇「ん…」
軽く支えられる。
そのまま。
元の席へ。
〇〇の隣。
廉の横。
ドン、と座る。
距離が近い。
かなり近い。
〇〇「つかれた…」
ぽそっと言う。
そのまま横に傾く。
廉の肩に軽く当たる。
廉「おい」
少しだけ焦る声。
でも強くは押し返さない。
北斗の視線が止まる。
廉「ちゃんと座れって」
〇〇「むり…」
完全に酔ってる声。
〇〇がそのまま、少し体重を預ける。
廉の腕に触れる距離。
北斗が口を開く。
北斗「お前さ」
少し低い。
北斗「いい加減にしろよ」
〇〇が少しだけそっちを見る。
〇〇「なに…」
北斗「飲みすぎだろ」
〇〇「だいじょうぶ…」
北斗「大丈夫なわけねえだろ」
即返す。
樹が小さく笑う。
樹「出た」
慎太郎「珍しいな」
廉はそのまま〇〇を軽く支えながら言う。
廉「ほんまにやばいでそれ」
〇〇「いけるって…」
また同じセリフ。
〇〇がグラスに手を伸ばそうとする。
北斗がそれを見て、少しだけ身を乗り出す。
北斗「やめろ」
〇〇「やだ」
北斗「いい加減にしろって言ってんだろ」
さっきより強い。
その声で。
〇〇が少しだけ止まる。
手も止まる。
廉がそのままグラスを遠ざける。
廉「これはもう終わり」
〇〇「えー…」
不満そう。
北斗がぼそっと言う。
北斗「最初からそうしとけよ」
廉「うるさい」
軽く返す。
でも。
〇〇はそのまま。
廉に少し寄りかかった状態。
無防備に。
北斗はそれを見る。
目を逸らさない。
〇〇「ねむい…」
小さく言う。
誰も、すぐには返さない。
空気だけが少し変わる。
小さく呟く。
廉「寝るなって」
少し困った声。
でも〇〇はそのまま。
今度は、腕に軽く触れる。
無意識。
指先で、少しだけつかむように。
廉が一瞬固まる。
廉「…おい」
低く。
でも強くは離さない。
樹がニヤッとする。
樹「完全に来てるな」
慎太郎「来てる」
北斗は何も言わない。
ただ、見てる。
視線が外れない。
〇〇はそのまま顔を少し上げる。
廉の方を見て。
〇〇「れん…」
少しだけ舌足らず。
廉「なに」
〇〇「…なんでもない」
ふっと笑う。
そのまままた寄る。
北斗「…おい」
低く。
〇〇が少しだけそっちを見る。
北斗「離れろって」
ぶっきらぼうに。
〇〇「なんで…」
不満そう。
北斗「なんでもだよ」
〇〇「別にいいじゃん…」
完全に酔ってる。
廉が少しだけ息を吐く。
廉「ほんま自由やな」
小さく言う。
でもそのまま支えてる。
〇〇はまた体勢を変える。
今度は少し前に倒れる。
バランスが崩れる。
廉「おい危ない」
手を伸ばす。
そのまま。
テーブルに手をついて止まる。
ギリギリ。
〇〇「トイレ…行きたい」
ぼそっと言う。
樹「今?」
慎太郎「やめとけって」
〇〇「いける…」
言いながら立ち上がる。
足元が明らかに不安定。
北斗「無理だろ」
即座に言う。
〇〇「いけるって…」
そのまま一歩。
ふらつく。
大きくバランスを崩す。
慎太郎がすぐ立ち上がる。
慎太郎「おっと!」
咄嗟に腕を掴む。
引き寄せる。
〇〇「わ…」
そのまま。
慎太郎の方へ倒れ込む。
距離が一気に近づく。
顔と顔が近い。
かなり近い距離。
慎太郎「ほら無理だって」
少し笑いながら。
でもちゃんと支えてる。
〇〇「ごめん…」
ぼんやりした声。
でもそのまま。
慎太郎の肩に手を置いたまま。
離れない。
樹「完全にアウトじゃん」
廉「アウトやな」
北斗は席から動かない。
でも視線だけが鋭くなる。
北斗「座らせろ」
低く言う。
慎太郎「はいはい」
軽く返す。
慎太郎が〇〇を支えたまま戻る。
ゆっくり座らせる。
〇〇はそのまままた力が抜ける。
背もたれに預ける。
〇〇「むりかも…」
小さく言う。
廉が少しだけ前に出る。
廉「そらそうやろ」
〇〇「ちょっとだけだったのに…」
北斗が短く言う。
北斗「だから言ったろ」
〇〇は何も返さない。
ただ、ぼーっとしてる。
その場の全員が、少しずつ察し始める。
ピークに来てること。
そして同時に。
距離も、空気も、全部。
さっきよりずっと近くなってる。
〇〇は座り直したものの、完全に酔いが回っている。
背もたれに軽く預けながら、ぼんやり前を見る。
〇〇「ねえ」
ぽそっと。
樹「なに」
〇〇「恋バナしよ」
突然。
慎太郎「出た」
樹「このタイミングで?」
廉「急やな」
〇〇「いいじゃん…」
少し不満そう。
〇〇「したい」
玉森「いいよ」
落ち着いた声で返す。
〇〇が少し顔を上げる。
〇〇「ほんとですか?」
玉森「うん」
軽く頷く。
その一言で。
流れが決まる。
慎太郎「じゃあ誰からいく?」
樹「お前だろ」
慎太郎「なんでだよ」
軽く笑いが起きる。
〇〇「タイプの話しよ」
仕切り出す。
完全にスイッチ入ってる。
廉「はい出た」
〇〇「なに」
廉「絶対ぶっ飛んでるやつやん」
〇〇「失礼」
玉森くんが少しだけ笑う。
玉森「聞きたいかも」
〇〇「でしょ」
少し嬉しそう。
樹「じゃあ〇〇から」
〇〇「えー」
樹「言い出しっぺ」
〇〇は少し考えるふりをする。
でもすぐに。
〇〇「明るい人」
即答。
慎太郎「はいはい」
樹「予想通り」
〇〇「あと」
指を立てる。
〇〇「ちゃらい人」
廉「それはやばいやろ」
〇〇「なんで」
廉「信用ゼロやん」
玉森「でも楽しそうだよね」
〇〇「そう!」
すぐ乗る。
〇〇「楽しいの大事」
〇〇はそのまま続ける。
〇〇「あとね」
少し前に乗り出す。
〇〇「子ども好きな人」
玉森「いいね」
静かに頷く。
玉森「ちゃんとしてそう」
〇〇「そうそう」
樹がニヤッとする。
樹「それで?」
〇〇「それで?」
樹「誰が近いの」
〇〇は少しだけ周りを見る。
そして。
〇〇「風磨みたいな感じ」
〇〇(でも本当のタイプは、、、)
一瞬。
空気が止まる。
慎太郎「出た」
樹「なるほどね」
廉が小さく笑う。
廉「恋愛対象ではないんやろ?」
〇〇「うん」
即答。
〇〇「でもああいう感じ」
玉森くんが少し考えるように言う。
玉森「一緒にいて楽な人ってこと?」
〇〇「そう」
〇〇「気使わない人」
北斗は何も言わない。
ただ聞いてる。
樹がふと振る。
樹「じゃあ逆に無理なのは?」
〇〇「えー」
少し考える。
〇〇「重い人」
ポツッと。
慎太郎「刺さる人いるぞ」
樹「やめろって」
廉が少しだけ視線を落とす。
でもすぐに戻す。
廉「どこからが重いん」
〇〇「なんか…」
少し言葉を探す。
〇〇「気持ち強すぎる人」
玉森くんが静かに言う。
玉森「真っ直ぐすぎる人?」
〇〇「そう」
〇〇「ちょっと苦手」
その一言で。
北斗の動きが一瞬止まる。
樹がすぐ空気を戻す。
樹「じゃあ廉は?」
廉「俺?」
少し考える。
廉「俺は…」
〇〇を見る。
一瞬だけ。
廉「ちゃんとしてる人」
シンプルに。
慎太郎「ざっくり」
樹「それ一番逃げてる」
玉森くんが軽く笑う。
玉森「でもわかる」
廉も少し笑う。
〇〇はそのやり取りを見ながら。
ぼんやり。
〇〇「ねえ」
小さく言う。
全員が少し見る。
〇〇「恋ってさ」
少し間。
〇〇「どうやって気づくの」
一瞬で、空気が変わる。
誰もすぐに答えない。
玉森くんが静かに言う。
玉森「気づいた時には、もう遅いかもね」
〇〇「なにそれ」
少し笑う。
廉は何も言わない。
北斗も何も言わない。
でも。
その場にいる全員が。
少しだけ同じことを思っている。
〇〇だけが。
まだ、気づいていない
〇〇「みんなも言ってよ」
テーブルに軽く肘をつきながら言う。
樹「なんでだよ」
〇〇「フェアじゃないじゃん」
慎太郎「どこがだよ」
〇〇「私と廉と玉森くんだけ言ったのずるい」
少し不満そう。
玉森「確かに」
玉森くんが静かに口を開く。
その一言で。
逃げ道がなくなる。
樹「…はあ?」
慎太郎「終わった」
廉「巻き込まれたな」
〇〇「じゃあ順番ね」
勝手に仕切る。
〇〇「慎太郎から」
慎太郎「なんで俺」
〇〇「ノリ」
慎太郎が少し考える。
腕を組む。
慎太郎「俺は…」
少し悩んでから。
慎太郎「一緒にバカできる人」
樹「お前っぽ」
廉「わかりやす」
慎太郎「あとちゃんと怒ってくれる人」
〇〇「え、いいじゃん」
玉森「バランスいいね」
玉森くんが軽く頷く。
〇〇「次、樹」
樹「早いって」
〇〇「はい」
樹は少しだけ〇〇を見る。
ニヤッとする。
樹「俺は…」
わざと間を置く。
樹「面倒くさくない人」
全員「出た」
〇〇「最低!!!」
樹「いや大事だろ」
樹「あと」
少しだけ真面目になる。
樹「ちゃんと自分持ってるやつ」
玉森「いいね」
玉森くんが静かに頷く。
〇〇「なんかそれっぽい」
樹「それっぽいってなんだよ」
〇〇「はい次、廉」
廉「早いってほんま」
少し笑いながら。
廉「さっき言うたけど」
〇〇を見る。
廉「ちゃんとしてる人」
〇〇「それだけ?」
廉「それだけでええやろ」
樹「逃げてる」
慎太郎「逃げてる」
廉「うるさいな」
少し笑う。
廉「でも…」
少しだけ言葉を選ぶ。
廉「一緒におって落ち着く人」
玉森「それ大事」
玉森くんが頷く。
〇〇はぼんやり聞いてる。
〇〇「次、玉森くん」
玉森「俺?」
玉森くんが少しだけ驚く。
〇〇「うん」
玉森くんは少しだけ考える。
静かに。
玉森「ちゃんとしてる人」
廉「一緒や」
玉森が少し笑う。
玉森「でも」
玉森「無理しない人がいいかな」
〇〇「無理しない?」
玉森「自然体でいられる人」
〇〇「いいですね」
玉森「あと」
少しだけ続ける。
玉森「ちゃんと笑う人」
場の空気が少し柔らかくなる。
〇〇「優しい」
そして。
視線が一人に集まる。
樹「はいラスト」
慎太郎「きた」
〇〇「北斗」
北斗は少しだけ眉を動かす。
北斗「なんで最後」
〇〇「なんとなく」
樹「逃げんなよ」
北斗は少しだけ息を吐く。
北斗「…別に」
〇〇「だめ」
即座に遮る。
〇〇「ちゃんと言って」
少しだけ静かになる。
北斗は前を見る。
誰も見ない。
でも。
一瞬だけ。
〇〇の方を見る。
北斗「ちゃんとやってるやつ」
短く。
慎太郎「ざっくり」
樹「もっとあるだろ」
北斗「あと」
少しだけ間。
北斗「周り見えてるやつ」
玉森「いいね」
玉森くんが頷く。
北斗はそれ以上言わない。
〇〇は少しだけ首を傾げる。
〇〇「それだけ?」
北斗「それだけ」
〇〇「つまんない」
樹が笑う。
樹「お前に言われたくない」
場がまた少し和む。
でも。
北斗の言葉は。
ちゃんと。
一人に向いていた。
〇〇だけが。
それに気づいていない。
少しだけ静かになる。
さっきまでの軽い空気とは違う、ほんの少しだけ重い間。
〇〇はその空気に気づかないまま。
首を傾げる。
〇〇「ねえ」
北斗が少しだけ視線を動かす。
〇〇「それってさ」
少し前に乗り出す。
〇〇「誰のこと?」
一瞬で。
空気が止まる。
樹が一瞬だけ目を細める。
慎太郎も、口を閉じる。
玉森くんは静かにその様子を見ている。
北斗は何も言わない。
視線を逸らす。
〇〇「え、なに」
〇〇「いるの?」
無邪気に続ける。
北斗「…別に」
短く。
〇〇「絶対いるじゃん!!」
笑いながら言う。
樹が横から口を挟む。
樹「やめとけって」
〇〇「なんで?」
慎太郎「今のはやめとけ」
少し笑いながら。
でも少しだけ本気。
〇〇「えー」
不満そうにしながらも。
まだ北斗を見る。
〇〇「気になるんだけど」
北斗は少しだけ息を吐く。
北斗「お前には関係ない」
ぶっきらぼうに。
〇〇「冷た」
すぐに返す。
そのやり取りに。
少しだけ笑いが戻る。
でも。
完全には戻りきらない。
その時。
廉「ほら」
軽く声を出す。
全員の視線が少し動く。
廉「飯冷めるで」
さらっと。
その一言で。
空気が少しだけほどける。
慎太郎「たしかに」
樹「話しすぎたな」
玉森くんも軽く頷く。
玉森「食べよっか」
自然に。
話題が戻っていく。
〇〇もすぐ切り替える。
〇〇「これおいし」
さっきまでの流れを気にする様子もなく。
樹が小さく呟く。
樹「切り替え早…」
慎太郎「こわ」
小声で笑う。
北斗は何も言わない。
ただ。
一瞬だけ。
〇〇を見る。
でも〇〇はもう。
普通に笑ってる。
何も知らないまま。
廉はそんな二人を一瞬だけ見る。
何も言わずに。
グラスを持ち上げる。
誰も口にしないけど。
全員が少しだけ理解している。
この関係が。
思っているより、簡単じゃないことを。
ーーーーー
気づけば、店の時計は日付を回っていた。
さっきまであれだけ賑やかだった空間も、少しずつ落ち着いてくる。
グラスはほとんど空で、料理もほぼなくなっている。
慎太郎「やば」
スマホを見て声を出す。
慎太郎「もうこんな時間?」
樹「普通に居すぎだろ」
廉「話しすぎやな」
小さく笑いが起きる。
でも、その笑いもどこか静かで、終わりが近づいている空気が混じっている。
〇〇は椅子にもたれたまま、ぼんやりしている。
目が少しとろんとして、完全に酔いが回っている。
〇〇「はやい…」
ぽそっと呟く。
玉森くんがその様子を見て、少しだけ柔らかく笑う。
玉森「楽しいとあっという間だよね」
その言葉に、誰もがなんとなく頷く。
少しの沈黙。
居心地は悪くない。
ただ、自然と終わりに向かっていく空気。
樹が軽く体を伸ばす。
樹「そろそろ出るか」
慎太郎「だなー」
廉もゆっくり立ち上がる。
玉森くんも続いて立つ。
玉森「帰ろっか」
その流れで、全員が動き出す。
上着を取る音。椅子が引かれる音。
北斗も立ち上がる。
視線は自然と〇〇へ向く。
〇〇はまだ座ったまま。
動く気配がない。
樹「おい」
樹「帰るぞ」
〇〇「んー…」
返事はするけど、体が動かない。
慎太郎「これ無理じゃね?」
玉森くんが少し近づいて、しゃがむ。
目線を合わせるように。
玉森「立てる?」
〇〇「たぶん…」
ゆっくり体を起こす。
立ち上がる瞬間、ふらっと揺れる。
その前に、北斗が手を伸ばす。
北斗「危ねえって」
腕を軽く掴んで支える。
〇〇「ありがと…」
小さく言う。
北斗「別に」
そっけなく返す。
でも、そのまま手は離さない。
廉がその様子を一瞬見る。
何も言わず、すぐ視線を外す。
〇〇はそのまま北斗の腕を軽く掴む。
無意識に。
北斗「…離せ」
小さく言う。
〇〇「やだ」
間髪入れずに返す。
樹「はいはい」
慎太郎「もうそのままでいいって」
北斗「よくねえよ」
そう言いながらも、結局そのまま。
玉森くんがドアの方へ向かう。
玉森「行こっか」
樹がドアを開ける。
外の少し冷たい空気が流れ込む。
一人、また一人と部屋を出ていく。
〇〇もゆっくり歩き出す。
少しふらつきながら。
北斗が横で支える。
さりげなく。
北斗「ちゃんと歩け」
〇〇「歩いてる…」
全然歩けてない。
慎太郎が後ろから笑う。
慎太郎「それ歩けてないやつ」
樹「介護じゃん」
廉が小さく笑う。
廉「ほんま大丈夫か」
玉森くんも振り返る。
玉森「気をつけてね」
〇〇「だいじょぶ…」
説得力のない声。
店の外に出ると、夜の空気が少し冷たい。
さっきまでの熱がゆっくり引いていく。
それぞれがなんとなく立ち止まる。
完全に解散の空気。
でも、誰もすぐには動かない。
〇〇はまだ北斗の腕を掴んだまま。
無意識に。
北斗「…ほんと離せって」
〇〇「やだ」
また同じやり取り。
樹が笑う。
樹「固定じゃん」
慎太郎「もうそれで帰れよ」
その一言に、少しだけ空気が動く。
廉はその様子を見て、何も言わない。
ただ一瞬だけ〇〇を見る。
そして静かに視線を外す。
玉森くんが軽く手を振る。
玉森「じゃあ気をつけて」
自然と、それぞれが帰る方向へ動き出す。
夜の街に、ばらけていく。
さっきまで同じ空間にいたのが嘘みたいに。
でも、どこかで。
まだ繋がっているような感覚だけが残っていた。
北斗と、〇〇と、廉。
方向が同じ。
樹「お前ら一緒だろ?」
慎太郎「送ってけよー」
軽く笑いながら言う。
廉が手を上げる。
廉「じゃあ三人で行くわ」
そのまま流れで決まる。
一台のタクシーが止まる。
ドアが開く。
廉「ほら」
〇〇に声をかける。
〇〇「うん…」
歩こうとして、少しよろける。
北斗がすぐ横で支える。
北斗「だから言ったろ」
〇〇「大丈夫だって…」
全然大丈夫じゃない声。
三人でそのまま乗り込む。
自然と〇〇が真ん中。
左に北斗、右に廉。
ドアが閉まる。
車がゆっくり走り出す。
車内は静か。
外の街灯が流れていく。
〇〇はシートに寄りかかる。
少し目を閉じる。
廉「ほんま飲みすぎ」
〇〇「いけると思った…」
北斗「毎回それ言ってる」
〇〇「今回はいけると思ったの」
廉が小さく笑う。
廉「それ毎回や」
〇〇は返さない。
そのまま、力が抜けていく。
ゆっくりと体が傾く。
北斗の方へ。
北斗「…おい」
小さく言う。
でもそのまま。
〇〇の頭が北斗の肩に当たる。
〇〇「ん…」
小さく声を漏らす。
北斗は動きを止める。
廉がその様子を一瞬見る。
廉「ほら」
廉「ちゃんと支えとき」
北斗「…言われなくても」
低く返す。
ほんの少しだけ肩を寄せる。
〇〇が落ちないように。
車は静かに進む。
外の光が流れていく。
〇〇はほとんど眠っている。
規則的な呼吸。
小さく揺れる体。
廉は窓の外を見る。
何も言わない。
北斗は前を見たまま。
動かない。
でも肩にある重みだけは、はっきりと感じている。
同じ車に乗っているのに。
同じ帰り道なのに。
三人の距離は、少しずつ違っていた。
車は静かに走り続ける。
街灯の光が、一定のリズムで車内を照らしては消えていく。
〇〇は完全に眠っている。
北斗の肩に頭を預けたまま、規則的な呼吸を繰り返している。
少しだけ揺れる体。
無防備なまま。
北斗は前を見たまま動かない。
廉は窓の外を見ている。
しばらく、誰も何も言わない時間が続く。
エンジン音だけが小さく響く。
その中で、北斗がふと口を開く。
北斗「…まだ?」
低い声。
短く。
廉が少しだけ視線を動かす。
廉「なにが」
北斗「気にしてんの」
はっきり言う。
遠回しじゃなく。
そのまま。
廉は一瞬だけ黙る。
外を見たまま。
すぐには答えない。
next→♡
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コメント
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超絶良き‼️