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「ほー、結構人がいるもんだねー」

試験会場の中はそれなりの人数が集まっていた。

「色んな匂いがする…」

すんすんと匂いを嗅いでいる直。


「どう?気に入る匂いある?」


うーんと首を捻りながら考える直。

「気になる匂いは何個かあるけど…あんまり…」


直は匂いを嗅ぐことが趣味らしい。時々吸引される。




「皆さんお揃いですかーね?」

特徴的な声の名前の教官が呼びかける。


「残念ながらテイスティングタイムはここまでみたいだね。直。」


「…!!ざ、残念じゃないから…気にしないで…大丈夫…」

ごにょごにょなる直。この趣味は直は無自覚でやってしまうらしい。



「ひぃ、ふぅ、みぃ……」

全身真っ黒を纏った教官。細長い体躯をゆらゆら揺らしながら、受験生たちを指さししながら数え始めた。


「はい!だいたい良さそうですーね!」

ぱちんと手を叩きながら笑顔を浮かべる。


「さてさて、早速試験の説明を行いますーね…」

そう言うと、ごそごそとポケットを探り始める。


「うーん…確かこの辺にですーね…

お!これ、これですーね!」

何やら取り出した大量の紙?らしきものを取り出した。


「さ、準備は整いましーたね」

ぱちん。指を鳴らす。

すると、手元の紙が鳥のような生き物に次々と変化。試験会場中の空中に散らばった。


「試験内容は簡単ですーね。このきゃわいい紙屑を捕まえてみなさい。これが出来ねぇ奴らはこのに進む資格はない。」



先程までの微妙な空気は一気に引き締まる。口調一つで場の空気を変えてしまった。



「さすがのコンロール能力…そしてこの威圧感…!わくわくしてきた…!」

横にいる直をちらりと見る。


「姉貴…あれって1人何個とか決まってないよね?ね?」

そわそわしながら、目を輝かせている。


「多分…?いいんじゃないかな?」

先程の説明だと個数制限はないみたいだし…


「だ、だよね!」

そう言うと地面にしゃがみこむ直。四肢に魔力が込められ筋の緊張が一気に上昇。直の体が触れている地面が抉れている。



教官がそっと右手を真っ直ぐに振り上げる。

試験会場内にいる全員の意識が教官1人へと一気に集まる。


その様子をまるで楽しむかのように少し間を空ける教官。


ニヤリと口角が上がり、瞼の隙間から微かに覗かせる双眸はギラギラと光を帯びている。




腕を振り下ろすと同時に一斉に身構える受験生達。

その中でも最も早く空中の標的へと達したのは直だった。


標的が最も集中している部分に狙いを定め、 四肢に溜めていた力を一気に解放。

いくつもの紙でできた鳥のような生き物を足場にしつつ破壊。狙いを定めていたであろう一体を咥えて地面に着地する。


「相変わらず見事な跳躍力と反応速度だね…」


今の一撃で数十羽の標的が撃沈。


呆気にとられ出遅れている受験生も多い。


「姉貴!みてた?」

目を輝かせながらこちらに駆け寄って来る直。

視線が自然とこちらに集まってくる。


「相変わらず見事だったね」

ヨシヨシと頭をわちゃわちゃと撫でる。


少し照れながら撫でられる直。

「…はっ!姉貴は自分の分確保出来た?つい楽しくなっちゃって…」

我に返ったように、こちらを上目遣いで見上げてくる。


「大丈夫だよ。ほら」

直がその場を掻き乱してくれたお陰で楽に、標的のコントロールを奪うことが出来た。


直が跳躍する時に生じる風の魔力で、やや乱れた所をちょちょいと弄れば造作もない。


「なら、遠慮なく遊んでくるね!」

そう言い直し再び標的に向かっていく直。


遅れて標的の確保に勤しんでいる他の受験生からは、若干の悲鳴のようなものが聞こえる。


「ぴょんぴょん跳べて楽しいよ!姉貴!」


無邪気にこちらを見ながら、空中で手を振る直。得意分野ともあり、余裕がある様子だ。



直は楽しそうだし、自分たちの試験課題はクリア済みだし…止める必要は無いかな。


手を振り直しとりあえず見守ることにする。


楽しそうに破壊を続ける直をぼうっと眺めながら、後方から熱視線を向けてくる人物に気がつく。


「うーん。とりあえず気が付かないフリをしとこう。うん。」


直は標的に夢中だし、相手は今の状況では接触してこないだろう。



そんなこんなで、試験の第1課題はすんなりとクリア。さてさてお次はどんな課題か…






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