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ふわもちお餅
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#探偵
橘靖竜
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#ロマンスファンタジー
花月夜れん
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ギルベルト達が隣国のエスポワール国に到着する前、魔法医師機関のビルの前にランスロットとオスカーの2人の姿があった。
この期間でも有名な魔法医師であるシュシュに、闇市場で捕獲した脳虫の生態を調べてもらう為である。
「ランスロット様が久しぶりに屋敷に帰って来たと思ったら、今度は隣国ですか…。しかも、私まで連れて」
「たまには、お前の事を外に連れ出してやらないといけないだろ?妹のおもりも必要だけど、僕の面倒もしてもらわないとねぇ」
「もう十分に成人なされていますよね?ランスロット様は」
「まぁまぁ、僕はいつまで経っても子供さ。おっと、名医の助手様がこちらに向かって来るね」
ランスロットがそう言うと、闇市場機関のガラス扉から白い白衣を着た190センチの高身長の眼鏡をかけた男がこちらに向かって歩いてくる姿が見えた。
ミラと同じ黒と水色のツートンカラーの髪、長い前髪は左側だけ下ろされ、右側の長い前髪は耳にかけられ、刈り上げた部分が見えるように長い髪を後ろで束ね、眉や唇にもピアスが空けられ、両耳には沢山の拡張済みのピアスが光る。
何より目立っているのは唇を黒い口紅を塗り、目の周りも黒いアイシャドウを塗ったパンクメイク、首元には青い薔薇と蛇のタトゥーだ。
見た目が奇抜な男はランスロットの姿を見つけると、溜息交じりにガラスのドアを開けて声をかけてくる。
「ランスロット…、この糞忙しい時に何しに来た…」
「やぁ、ラミラ。1年ぶりに君の顔を見たけど、相変わらず派手だなぁ」
「嫌味を言いに来たんなら帰りな、こっちは本当に忙しんだよ。シュシュに連絡入れたみたいだから、迎えに来たけど」
「君達が忙しくしているのは、妙な生態の虫が原因じゃないのかい?」
ランスロットの【妙な生態の虫】と言う言葉に眉がピクッと反応し、ラミラと呼ばれた男は甘いラズベリーの香りがする黒色の煙草を取り出しながら口を開く。
「シュシュに調べさせたい虫って、そう言う事ね。数日前に脳みその姿を虫が現れ、頭に噛み付かれた状態で運ばれてくる患者が多い。この街の魔法医師共は、その虫の所為で忙しくしてんの。アンタの事だから、占いかなんか知ったんだろうけどね」
「今回は占いで知った訳じゃないんだけどねぇ、たまたま」
「胡散臭い男だね、相変わらず。シュシュの所に案内するわ、ついてきな」
ラミラはそう言ってガラスのドアを開けて、ビル内に先に入って行ったのでランスロットとオスカーの2人もラミラの後を追い掛けるように入る。
ビルの中に入ると、想像以上に看護師や魔法医師《メディサンドゥーマージ》が廊下を走り回り、医療ワゴンに乗せられた患者達の殆どが、脳虫に頭を喰われている状態だった。
「ラミラ、君は宮廷勤めだったよね?こっちには応援で?」
「3カ月前に辞めさせられたわよ」
「辞めさせられた?」
「ほら、ジャンゼン家の事があったでしょ?現皇帝が信頼してるのは俺より父だし、宮廷勤めの人間の総入れ替えがされたのよ」
ランスロットの質問に答えたラミラは、ミラの兄であるグレイバーツ家の長男、父の後を継いで宮廷魔法医師《メディサンドゥーマージ》を数年勤めていたのだ。
宮廷に勤める前は魔法医師《メディサンドゥーマージ》学校時代の友人であるシュシュと共に、隣国エスポワール国内でも有名なこの機関に所属し、今もまたシュシュの助手として働いている。
また、ランスロットとも友人として付き合いがあり、心境報告の連絡を取り合うくらいの仲。
「君もなんだかんだ言って、シュシュの事が好きだねぇ。宮廷勤めが決まった時、シュシュの面倒を見なくて清々するって言ってたのに」
「シュシュの性格は超が付く程、面倒くさいけど。シュシュに腕は本物だからね、隣で見ていて気持ちがいい」
ラミラはそう言ってエレベータのボタンを押し、到着したエレベータに乗り込み3階のボタンを押す。
エレベータに乗り込んだ3人が3階に到着すると、1階よりも看護師や魔法医師《メディサンドゥーマージ》達が行き交う中、オペ着を着用した1人の女性が看護師達に指示をしていた。
所々に黒いメッシュが入ったグレーアッシュ色のレイヤーの入った襟足が長めの髪、青白い肌に綺麗なアクアマリン色の瞳、左目は黒の眼帯で隠され、身長が高めの女性がランスロット達の存在に気付く。
「軽症の患者は診察室のベットに寝かせろ、治療が成功した患者は病室に移動させろ。亡くなった患者の家族に…、本当に来たのか?ランスロット」
「シュシュ、忙しい時に悪いね。まぁ、僕が調べてほしかった虫は、君達を忙しくさせている虫なんだ」
「ほう、私の研究室に移動しよう。後の事は他の医者達に任せてある。電話で言ってた魔法道具で、男と虫を閉じ込めてんだろう?その男は僕の好きにしたら良いって話だったが、丁度モルモットが欲しかった所だ」
「奴隷商人だから好きにして良いよ、この男は消息不明になってるから。虫の生態だけ知れれば良いしね」
ランスロットとシュシュの会話を後ろで黙って聞いていたオスカーは、【この人達、サラッと恐ろしい事を言ってる】と心の中で呟く。
少しを廊下を進み右側の普通の扉を開けると、床に人体実験の対象者のカルテが床に散らばり、棚には様々な種類の魔獣達が魔法で体を小さくした状態で、大き目の瓶で何かの透明の液体で漬けにされている。
部屋の中心に置かれた体を固定させる為のベルトがついたベット、薬品と煙草の匂いが漂い、魔法医師《メディサンドゥーマージ》の医術本が置かれた本が机の上に山積みに。
ラミラは黙って医療器具が収納されているキャビネットを開けて、医療用カートに消毒済みの器具を並べ行く中、シュシュは黒色の医療用の手袋を装着しながら言葉を放つ。
「さ、実験体の男を出して良いぞ」
コートのポケットからシャガル・ロマイを閉じ込めた奇妙な形をした箱を取り出し、ランスロットは「開封」呪文を唱える。
カタカタカタッ!!!
解放の呪文を唱えた瞬間、奇妙な箱は激しく揺れ出ひす。
ボンッと大きな音をたてながら箱が破壊され、中から脳虫に脳みそを喰われている状態のジャガル・ロマイが姿を現す。
「ほう、脳を食い散らかした後に虫が寄生しているのか。ふむ、虫自らこの男の脳として機能するかどうか」
シュシュの言葉に反応するようにジャガル・ロマイの右手の指がピクッと動き、下を向いていた顔が上がった。
「僕の声で反応すると言う事は、内耳神経が生きているのか、それと運動神経も。うちの機関に運ばれてきた患者は、噛まれている状態のままだったからな。こうして、この男と共存している状態は…」
まじまじとジャガル・ロマイをシュシュが見つめていると、脳虫の目が大きく目を見開き、ジャガル・ロマイの足がゆっくりと動き出しているのをオスカーは見逃がさない。
腰に下げていた剣を素早く抜いた瞬間、ジャガル・ロマイは奇声を出しながらシュシュに向かって走り出したのだ。
「グアアアアッ!!!」
「シュシュ様っ!!!」
オスカーがすぐにシュシュの元に向かおうと走り出した時、「拘束」とシュシュは慌てずに呪文を唱える。
ジャキジャキジャキッ!!!
シュシュの足元に灰色の魔法陣が現れ、中から十字架のが装飾された細いチェーンが飛ぶ出し、ジャガルロマイの体をきつく締め上げた状態で、思いっきり床に叩きつけた。
ドンッ!!!
「グアアアアッ!!!」
「元気の良い患者だ、これなら大抵の実験に体が耐えられる。あぁ、心配をかけたね?執事君」
「い、いえっ、こちらこそ失礼しました」
オスカーはそう言って、頭を下げながら抜いた剣をもとに戻し、ランスロットは実験台のベットの上にLovePoisonを割れないように置くと、不思議そうな表情を浮かべたラミラが尋ねる。
「それは?」
「LovePoison、極度の興奮状態になれる不思議な薬さ。このジャガル・ロマイが悪魔と取引して血液を貰い、この薬を作って販売していた」
「「悪魔の血だって⁉」」
ランスロットの言葉を聞いたシュシュとラミラの表情が一気に明るくなり、顔を合わせた数分間の中で2人が1番テンションが上がった瞬間だった。
オスカーは冷静なシュシュとラミラが、欲しかったおもちゃを買い与えられた子供のように喜ぶと思ってもいなく、執事としては失礼な驚きの表情を浮かべてしまう。
「おい、シュシュ!俺達がずっと調べたかった悪魔の血が手に入るなんて!!!魔法医師《メディサンドゥーマージ》の歴史を作り変える時が来たぜ⁉」
「も、ものすごく興奮していらっしゃいますね…」
「執事君、これは非常に興味深い事なんだよ!!!あぁ、今日はとても素晴らしい日になるぞ、ラミラ!!!人間の脳みそに浸食する虫も興味をかなり引かされたが、悪魔の血は我々、先代達の魔法医師《メディサンドゥーマージ》にとっては、悪魔の生態に触れる事は夢だったのだよ」
シュシュの熱弁に圧倒されたオスカーは苦笑いを浮かべながら、シュシュとラミラからゆっくり距離を取る。
「君のテンションを上げた僕への御褒美は?当然、用意してくれるよね?」
「勿論、この薬の成分を調べ、解毒薬を作れって話だろう?まず、お前に現状で言えるのは妙な虫の生態だけだな」
「じゃあ、まずは虫の事から聞かせてくれる?」
「寄生対象から引き離すと体が急速に萎んで死んでしまう、形態持続液に漬け込む前にね。それに姿形も残らずに灰となって散る、この現象だけで洞窟や森に生息している魔獣の類ではない事が証明された。という事は、この虫は悪魔だろう。人間に危害を加える魔物はいくつかいるが、脳に直接攻撃をし、精神と体を支配しようとするのは悪魔の本質だと悪魔書に書かれている」
魔法医師《メディサンドゥーマージ》としてのシュシュからの説明を聞いたランスロットは、帰り支度をしながら口を開く。
「まぁ、僕達の前に悪魔が現れたし、この虫も悪魔なんだろうなーとは思ってたけど。シュシュの口から聞けた事で立証されたね」
「解毒薬の制作に入るのには時間はかかるぞ、その事だけは頭に入れておけ。それから、ギルベルトの体調はどうだ?ここ数ヶ月、奴の体を診察していないのだが」
「あぁ、それなら進行は止まったよ」
「は?古代魔術の呪いだぞ?完全に止まった訳ではないだろ?進行が遅くなっただけで」
信じられない気持ちが大きいシュシュは、思わずランスロットに近寄ってしまう。
だが、ランスロットと言う人物をよく知っている者達は、このランスロットのドヤ顔に近い含みのある笑いは【本当の事を言っている】と表情が物語っている事が分かるのだ。
「分かった、分かった!お前の顔を見たら真実だって分かるって、ミラの腕が上がったんだと認めようじゃないか」
「シュシュの腕は確かに良いけど、ギルの呪いの進行を止めたのは異世界から来た女の子だよ」
「異世界だと?」
「うん、最近ね。異世界からのお客さんが多いんだ」
ランスロットの話を聞いたシュシュは、オペ着のズボンのポケットから煙草を取り出し、煙草を咥えると隣にいたラミラがジッポライターで火をつける。
「人間が悪魔をこの目で認識出来ていた時代は、ルナ帝国初代皇帝が生きていた時だったな」
「悪魔と戦争をしてた時代でしょ?もう、何100年も前も昔の話じゃないの。うちの国を騒がしている脳虫の存在もそうだけど、なんか妙な感じがしない?シュシュ」
「僕は学者じゃないんだ、世界の全てを知っているわけじゃないさ。ただ、黒十字軍機関のお偉いさん達が、現皇帝に呼ばれていたね」
コンコンッ。
ラミラとシュシュが話をしていると、シュシュの研究室の扉が数回ノックされ、灰皿に煙草を押し付けながらシュシュが応答した。
「何だ」
「シュシュ先生にお会いしたいと言う方々1階にいらっしゃるのですが…、銀色の目の男性なんですが」
扉越しから看護師がシュシュに尋ねて来た人物の特徴を伝えると、再びシュシュとラミラの2人の表情が明るくなる。
シュシュは思わず顔を上に向け、両手で顔を押さえながら込み上げて来る歓喜の感情を爆発させた。
「あははははっ!!!今日は本当に、なんて素晴らしい日なんだ!!!よし、ギルベルトをここに通せ!ラミラ、ギルベルトの身体検査の準備を!!!ランスロット、執事君!!!君達は、そこの大男をベットに寝かせるのを手伝え」
「はっ、はい!!!」
「これはまた、騒がしくなるなぁ…」
オスカーは慌てて返事をしながらシュシュの元に向かい、ランスロット自身もシュシュの手伝に向かおうとしたのだが、足を止めて視線だけを研究室の扉に向ける。
研究室の外に人の気配を感じ、ランスロットはコートの内側に手を入れながら扉の方に体を傾けると、シュシュが怪訝な顔をして呟く。
「…」
「おい、ランスロット。何をしている、早くこっちに来て手伝え」
「僕は少し席を外よ、オスカー頼むね」
「え⁉ランスロット様⁉」
シュシュの手伝いをオスカーに押し付けたランスロットは、駆け足気味で扉に向かって閉ざされていた扉を勢いよく開けると、廊下を黒いマントを頭から深く被った人物が走っている姿が視界に入った。
「僕が鬼か?面白い」
そう言葉を吐き捨てながらランスロットはマントの男を追い掛け、マントの男はランスロットが自分の事を追い掛けて来ている事に気付く。
「えっ⁉」
「キャアッ⁉何か黒い物体が通った⁉」
マントの男は看護師達の間を器用にすり抜けて行き、身軽なマントは男の後をランスロットも同じように看護師達を避け、2人の距離は離れる事も近付く事もない距離感のままだ。
「面白い、僕と鬼ごっこをする気か」
ランスロットが無我夢中で追い掛け、マントの男が右の角に曲がりランスロットも角を曲がったのだが、マントの男はどこにもいなかった。
廊下にいたのは慌ただしくしている看護師達の姿だけ、何回も視界だけで周囲を見渡すがどこにもない。
「移動魔法で姿を消したか…」
荒くなった呼吸を整えていた時、前方から見慣れた顔の集団達がランスロットに近付いてくる。
「ランスロット?何してんだ、お前こんな所で」
「ギル?」
思考を巡らせていたランスロットの前に現れのは、人ごみの中から出て来たのは友人であるギルベルト達だった。
「あれ?ランスロット様、1人ですか?迷子になっちゃいました?」
「いや、迷子にはなっていないんだけどねぇ。ちょっと、変な奴がいたから鬼ごっこしていた所さ」
ヒューズの問いに答えながらサングラスをかけ直し、ダンテとローレンツの2人はギルベルトの視線を向けられ、すぐにビル内の中の見回りを始める。
「変な奴?お前は心当たりない相手か」
「どうかな、僕の事を殺したいと思ってる奴か、全く知らない人間のどちらかかな。移動魔法で姿を消した可能性が高いから、もうビル内にはいないかも。それよりも、ギルはなんでいるの?シュシュに用事?」
ギルベルトはランスロットと距離を詰め、周囲に聞こえないように甘野芣婭の呪いの事を話す。
「それで、ギルがわざわざ隣国に来たのか。君の行動範囲を広げるって、彼女は凄いね。いや、愛の力は偉大と言った方が良いかな」
「おい、その含みのある笑みを浮かべるのはやめろ」
「ギルの事を見てると、独身貴族はやめようかなって思えるよ」
「だったら、山程来ている縁談の話を片っ端等から受けたらどうだ」
「やっぱり、独身貴族でいいや」
2人は他愛のないの話をしながら、看護師を先頭にシュシュがいる研究室に向かって歩き出した。
***
同時刻 ルナ帝国上部街 宮廷
河邉菜穂は何故かルカリオの寝室で鼻歌を歌いながら化粧をしており、専属護衛になったミニョンは河邉菜穂の事を怪訝な表情で見つめている。
鏡に映ったキャミソールのワンピースを着ている河邉菜穂の胸元には、ルカリオと熱い夜を過ごしたであろう証がいくつか残っていた。
「ミニョンだっけ?そう呼んで良いんだよね、私の事は菜穂で良いよ」
「いえ、そう言う訳にはいきません。私と菜穂様では身分が違いますので」
「ミニョンっていくつなの?私は17歳、ミニョンも同じ歳くらいじゃないの?」
「いえ、私は20歳です」
ミニョンの歳を知った河邉菜穂は化粧をしていた手を止め、勢いよくミニョンの方に振り返る。
「え⁉20歳なの⁉全然っ、見えないんだけど!!!うける、ミニョン童顔過ぎるでしょっ、ねぇ?ケモミミちゃん」
「えっ、あっ、はい…」
ルカリオが先日の闇市場で購入した獣人の少女は、宮廷の使用人たちに身なりを整えてもらい、今は河邉菜穂の身の周りの世話をさせられていた。
獣人の少女が着ているメイド服の袖から、新しい縄で強く縛られた傷が痛々しく見えており、少女は河邉菜穂の顔色を伺っている仕草をしてる。
河邉菜穂とルカリオが夜を共にするようになったのは、この少女が宮廷に来た時からだ。
それまでの河邉菜穂はおどおどしていて、ルカリオに振り向いてほしくて仕方がない普通の女の子と言う印象だったが…。
この間の白騎士団の各団の隊長達を混じれた会議の日から、ガルバット達の前に姿を現した河邉菜穂は自身に満ち溢れた表情を浮かべていた。
白騎士団の騎士達はルカリオやガルシアの命令で、河邉菜穂の護衛を交代で行っていた頃は、こちらの国に慣れていない感じが伝わっていたが、今の河邉菜穂の姿が本当の姿なのだろう。
使用人達がキスマークが隠れるデザインのワンピースを何着か見せるが、河邉菜穂は首を縦に振らない。
「嫌よ、オフィショルのワンピースを持って来て」
「で、ですがっ、今日は菜穂様のお茶会の護衛を務める騎士様方が、隣国からいらっしゃいますので…っ。そのっ、化粧で隠すか服で隠すしかなかと…」
「これはそんなに恥ずかしいものなの?」
「え?」
河邉菜穂の言葉を聞いた使用人の女性は、驚きながら彼女に視線を向けると、使用人の女性の頬に向かって河邉菜穂は手を振り翳していた。
ブンッ、パシンッ!!!
ミニョンはすぐに河邉菜穂の動きに反応し、使用人の女性の頬に手が当たる前に河邉菜穂の手首を掴んで止める。
「おやめください、菜穂様」
「私に指図する気?さっき自分でも言ってたよね、私とは身分が違うって」
「はい、言いました」
「じゃあ、私のやる事に口を出すのは?違うんじゃないの」
そう言って、河邉菜穂はミニョンの事を睨みつける。
戦闘の訓練を受けているミニョンからしたら、河邉菜穂の動きなんて簡単に予測が出来るし、喧嘩になったら河邉菜穂はミニョンに勝つ事は出来ない。
そんな事は河邉菜穂自身も分かっているし、権力を使わないとミニョンに対して高圧な態度は取れないのだ。
「ルカリオ様が貴方の良い関係なのは、周囲の人間は分かっています。貴方の行動1つで、大好きなルカリオ様の顔に泥を塗る行為になってしまう。あの方はこの国の皇太子ですから」
「…、この部屋に呼ばれたのだって初めてだったんだもん」
「はい?」
「この世界に来る前から、あの人は私の事を女として見た事がなかったの。私の気持ちには気付いていたのにさ、ずっと他人扱いしてたんだもん。それがさ?私があの人の言う事を聞くなら、彼女にしても良いってっ。そう言ってくれたんだよ」
河邉菜穂の口から出る言葉達は、誰が聞いてもルカリオに対する恋心が募り募った言葉だと分かる。
ミニョン自身も、自分達の騎士団を率いる団長のガルバットに密かに恋心をを抱いているからこそ、河邉菜穂が浮かれてまう気持ちも分からない訳でもない。
恋をしている女の子なら、好きな人の力になりたい、好きになってもらいたいと思うのも、好きな人の為なら何でも出来ると思ってしまうのも、恋の恐ろしいところ。
「今回のお茶会だって、私が主役じゃないし」
「菜穂様のお披露目の会じゃないですか、他に主役はいませんよ」
「いるよ。私が嫌いな子が、あの人の中ではずっと主役なんだもん」
河邉菜穂の意味深な言葉に疑問を持っていると、ノックもせずに部屋の主であるルカリオが中に入って来る。
女性の使用人達とミニョンはすぐに床に膝をつき、河邉菜穂も頬を赤く染めながら慌てて立ち上がって、ルカリオの腕に抱き付く。
「ルカリオ様っ、どーしたんですか?」
「黒十字軍機関の軍人方がいらっしゃった。お前も化粧に時間をかけてないで、さっさと支度を終わらせ」
そう言って、ルカリオは河邉菜穂の腕を乱暴に引き剥がし、彼女の顔を一瞬も見ずに部屋から出て行った。
コメント
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読みました…。今回も重い空気と狂気の香りが入り混じってて、すごく好きな回だった。シュシュとラミラのテンションが悪魔の血で一気に上がるところ、あの職業がやっぱり気持ちいいよね。変専門職の興奮っぷりは堪らない。ランスロットを追うマントの男、もしかして菜穂に関係してそう?「お披露目の会は私じゃない」みたいな意味深な感じがギルベルト側が…と思ってる。でも一番怖いの、菜穂の内面が不気味すぎてドキドキした。あと、甘野野婭呪ってるん気持ちいい、進行が止まったんだね。 …あと、エピソード前の感想