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奏希は、2012年7月7日に生まれた。
「女の子です。可愛い子供ですよ、お母さん」
奏希(Kanaki.)はやがて12歳になり、空ヶ丘中学校に入学した。中高一貫校であり、希望した学校に入学でき、奏希は中学校生活を楽しみにしていた。
だが、奏希には誰にも言ったことがない秘密があった。奏希には親なんていなかった。だから、国が生活費は全て負担してくれるプロジェクトに参加していた。
そしてなにより、奏希には性別がなかったのだ。
しかし、LGBTQがあまり認められていなかった時代だった。それにいちばん、本人が困惑した。
女として生まれたが、明らかに自分は女ではなかった。男と話すことのほうが好きだし、自然と外見も男に似てきていた。
おかっぱよりバッサリ切り、洋服は男用のTシャツに短パンだった。奏希にはそれで十分だった。
だが、プロジェクトにあたって、女と登録されていたため、国から送られる洋服は女物ばかりだった。
だから奏希はなんとか生活費をやりくりし、男用のものを買ってきていた。
だが国にはもちろん認めてもらえず、その対応に苛立ちながらも、ずっと過ごしていた。
入学式、中学では男と登録してもらい、男として通えることになった。
唯一運が良かったと言えるのは、名が女らしくない漢字、発音だったことだ。もしこれが女らしい名前なら、すぐに察されていただろう。
奏希はそれで幸せだったのだ。
であるし奏希は性同一性障害の手術を受け、まあそれなりにイケメンだった。女子からしたら、良い相手になるのではないだろうか。
奏希は男として付き合い、男友達の親友もできた。女子にも嫌われるわけではなく、男子としては好かれている方だったのかもしれない。
親友は翼というのだが、とにかくいいやつだった。
翼は勉強はあまり好きではないが、スポーツ万能な子だった。バスケでおかしいぐらいスティールやパスが上手いのだ。
そんな翼が友達として、親友としていてくれることに奏希は嬉しかった。
小学校では、無理だったのだ。LGBTQであることが、クラスのリーダー的な存在の子に知らされた瞬間に、あっという間にその情報は伝わり続け、いじめが起きた。
小学校は最悪な環境だったのだ。先生もいじめが起きていることを承知の上で、対策などしなかった。奏希のほうが悪いという、昔のLGBTQ拒否な人だったのだ。
だから中学校は特に幸せに感じられたのだろう。
だが、奏希の運命の始まりは、ここからだ──。