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「ねえ、佐藤さんは文化祭の準備で、部員の書いた原稿をまとめていたって言ったよね。……いつも授業をさぼってそんなことしているの?」
「な、何よ、急に。……そ、そりゃあ時々ね。でも文化祭のときだけよ」
先生の前でさぼった話を深堀されて焦っている。その姿は演技には見えない。
「じゃあさ、そのまとめた原稿を見せてくれるかな?」
「えっ!? ……なんで私がそんなことしなくちゃいけないわけ?」
「いいじゃないか。見せてくれても減るもんじゃないだろう」
「やだよ! 勝手に見れば!」
佐藤里香は怒ったように言い捨てた。原稿を見れば、証拠になる。逆に見せないのは怪しい。……けれど、佐藤は自分が疑われているとは思っていない。そう考えると、こっちの方が自然な反応とも言える。
「勝手に見ていいんだね?」
「もう、何よ、さっきから! どうせ文化祭で冊子を配るんだから、そのとき見ればいいじゃない!」
確かにそうだ。その時に見せてもらえばいいだけの話だ。今はこれ以上探りを入れても無駄だろう。僕は質問する相手を変えた。
「あのさ、佐々木さんの方は何か部活してるの?」
「ううん、私は何もやってないわ。文化部に興味ないし……」
「そうなんだ。その……、サッカー部のマネージャーとかじゃないんだ?」
サッカー部の話は拓海のことを思い出させるかもしれないから、できれば避けたい話題だった。でもいまは、そんなことを言っていられない。
「サッカーなんて興味ないわ。マネージャーなんか絶対イヤ」
そうなのか。拓海の恋人だから、てっきりマネージャーをしていると思っていたんだけど……。
「わかったよ。変なこと聞いてごめん」
そのとき、先生が口を開いた。
「ミスター・ロバート、やはり女子生徒二人だけを残していくというのは、少し考え物です。この異常事態だ、警察や救急車を呼んで、我々はここで待っていましょう」
「フム、まあそうですね。外に出ないですむなら、それがベストでしょう」
これは……もしかして先生には、誰が「敵」かわかった、ということなのだろうか。先生はその場で通報して、しばらくすると警察やら救急隊員やらが押し寄せた。その混雑の中で、僕はそっと先生に聞いてみた。
「先生、わかったの?」
「ああ。少し確認してみたいこともあるが、だいたいな」
――あなたは、誰が怪しいか、分っただろうか?(続く)