テラーノベル
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レンコン 煮付け
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.:・.。. .。.:・
ある日曜日・・・竜馬がドゥカティにまたがり、交差点で信号待ちをしていると、いつもの背すじがゾワゾワした、キョロキョロ首を動かして辺りを探してみると・・・やっぱりいた!
斜め向こうの信号の歩道を、ジェニがテクテク歩いていた、白のチェスターコートに、端っこにボンボンのついたピンクのフワフワのマフラーを巻き付けている
艶やかな茶色の髪は、すっきりとポニーテールにまとめられ、繊細な顔立ちや、バラ色の唇と、白い肌のコントラストを際立たせている、そして何やら大きな紙袋にポスターらしき資材を抱えて歩いていた
確実に休日なのに、彼女は仕事のスタイルだった、彼女はそのまま商店街に入って行った
―日曜だってのに!まだ仕事する気か? バカか?倒れるぞ!―
竜馬は彼女にひとこと言ってやろうと、ドゥカティを路肩のコインパーキングに停めて、彼女の後を追った、彼女が資材をうんうん抱えて入って行ったのは、大手のドラッグストアだった
キャー――ッ! 「ジェニちゃーーーーん♪」
キャー――ッ! 「ユリちゃーーーーん♪」
ジェニは白衣の女性と入口でガシッと抱き合った、そしてキャーキャー言って手を組んでピョンピョン飛びあった、どうやらこの白衣の女性が、このドラッグストアのオーナーらしく、ジェニのお客なんだろう
その証拠に、入口の一番目立つ所に「ファンタスティック色白」の宣伝コーナーがどデカく設けてあった、ジェニは色々と話しながら大きなポスターを広げた、オーナーの表情を見るとこの商品がとても売れているのがわかる
なんと、ジェニは広告を作るだけではなく、その商品までも店舗を回って営業をしているのだった、ジェニはオーナーにタブレットを見せて色んな店舗のディスプレイをアドバイスしながら、その場でモデルが商品を持って写っている等身大のパネルを組み立て出した
そして、今は自分から率先して、従業員と特大ポスターを天井から吊り下げようと脚立に登っている
―ああっ!あんな高い所に登って・・落ちたらどうするっ!―
竜馬は今すぐ駆け寄って、あんな危ない作業は自分がやると言いたかった
「あの~・・・お客様?・・・」
鎮痛剤コーナーの棚に隠れてコソコソ様子を伺っていた竜馬に、店員が不審に思って声をかけた
「何かお探しですか?」
「え?え・・・と・・・」
焦った竜馬は、咄嗟に目の前にあった棚から鎮痛剤を手に取って店員に見せた
「あ・・・あの、これ!ください」
店員はじっとその鎮痛剤と竜馬をジロジロ交互に見て言った
「・・・・ありがとうございますレジはあちらです・・・」
―ヤバイ!レジの前にはジェニがいるじゃないか!―
途端に冷や汗が噴き出る、竜馬は紫のパーカーのフードを深くかぶり、お店の中なのにポケットに入れていたサングラスをかけた、前かがみでコソコソ大きな体をなるべく小さく見せて清算する、間違いなく挙動不審者だ
ピッ「・・・お印でよろしいですか?」
レジの店員も竜馬をジロジロ見ながら助っ人を呼ぶ「呼び出しボタン」を、押そうかどうしようか考えているのが見て取れた、その間もジェニは、熱心に脚立に乗って大きなポスターを貼ったり、パネルやモニターを設置して動画を流し、コーナーを賑やかにするのに死力を尽くしている
そしてさきほど買った、手に持っている頭痛薬だと思って買った薬を見てみると・・・「生理痛用鎮痛剤」だった、これで店にいれなくなった
竜馬はドラッグストアの前にあるカフェに入ってジェニが出てくるのを待った
ハァ~~~「いったい僕は何をやっているんだ・・・」
休日なんだから放っておけばいいのに・・・彼女が心配でたまらない・・・ポケットの中の煙草を取り出して1本吸う、そこから数十分、竜馬はひたすらコーヒーを飲みながらドラッグストアに出入りする人達を観察する
四歳ぐらいの少年と手をつなぐ母親・・・年配の夫婦・・・赤ん坊を抱っこ紐で抱える女性、スーツを着た男性・・・そして・・・出て来た!彼女だ!
彼女がドラッグストアから出てくると、竜馬の心臓が躍り、コーヒーショップから飛び出した、そして彼女の真後ろに行かないよう、左右対角線のコースをたどって彼女の後をつけた
深くパーカーのフードをかぶり、目にはサングラスをかけている、彼女は自分の存在にまったく気が付いていない、もしかしたら自分はストーカーの才能があるのかもしれない、その時、突然彼女がピタッと立ち止まった、慌てて竜馬は近くにあった等身大のカラオケの看板に隠れた
キャー―――!!「ブルーシールアイスクリーム!!え~~!今日オープンなのぉ~~??」
ジェニがピョンピョン跳ねて見ている歩道の先に、大きな青い看板のアイスクリームの新店舗がオープンしていた、なるほど今日オープンだけに店には長蛇の列が出来ていた
「いや~ん!沖縄で食べてすっごく美味しかったんだよね、食べたぁ~~い!私も並ぼうっと!」
そう独り言をつぶやくと、ジェニはカラオケボックスの店舗の横にビジネスバッグと資材をいそいそと置いた
「ちょっと並んでる間、ここに置かせてもらおうっと♪いいよね、すぐ帰ってくるもんね♪」
ジェニはスマホと財布だけを持って、その場に資材を置いてアイスクリーム屋に並びに行った
「あほかっ!!資材を置いていくなーーーー!(泣)」
すかさず竜馬はジェニのカバンと資材を隅っこに寄せ、ちょこんとその横に体育座りで荷物番をした
鞄をチラリと見る・・・タブレットとジェニの大事なピンクのキラキラ閻魔帳が入っている、まったく日本はなんて平和な国なんだ、それともジェニが平和ボケしているのか?
苛立ちながらも、その場を動けず、竜馬は体育座りのまま、歩道の向こうで並んで必死にメニューを考えているジェニを眺める
―食べ物のこと考えている時は良い顔してるよなぁ~~―
.:・.。. .。.:・
思わず口元が緩む
「買えたぁ~~!!塩ちんすこうと紫いもキャラメルのダブルスタンダードォ~♪」
コーンにこんもり盛ったアイスを嬉しそうに片手に持って、ジェニがこっちにやってくる、竜馬がそろそろ隠れようと思った矢、先ジェニが赤信号なのにうっかり渡ろうとしたその瞬間
―ププーーーーーッッ!キキ―――――ッ!!―
ジェニが黒い大型の車に牽かれそうになった、竜馬は声を上げてジェニに突進した、思考より体が先に反応した、間一髪ジェニの腰を抱え、そのまま歩道にスライディングした、トラックは轟音を上げて去って行った
二人は同時に歩道に倒れたが、咄嗟に竜馬が受け身になって固いアスファルトに叩きつけられ、ジェニは竜馬の上に乗っかった
「F○ck you!!!赤信号がわからないのかッッ!!」
「すっ!すいませんッッ」
ジェニは、紫路のパーカーのフードを被った大柄でサングラスをかけた人相の悪い男性に怒鳴られ、咄嗟に謝った、そしてその大柄の男性は瞬殺でいなくなった
しかしジェニはその男性を見ていなかった、すぐ目の前の道路に自分が買ったブルーシールアイスクリームが無残に散らばっている
うわぁ~~~ん「あたしのブルーシールアイスゥゥゥ~~~!」
ジェニは歩道にペタリと座ったまま、大泣きした
.:・.。. .。.:・
ゼイゼイッ・・・「頼むからそんなことで泣かないでくれっっ!死にかけたんだぞっっ!」
竜馬は角を曲がったお店の陰に隠れて小声で叫んだ、肺が爆発しそうだ
ハァッ・・・ハァ・・・「こ・・・こっちが死ぬっ・・・」
この年になっていくら鍛えているからといっても、決死の全力疾走で、足の筋肉が震えている、とにかく無事でよかった・・・でも助けたのが自分だとバレただろうか・・・
角から顔を出し、ジェニを見るとトボトボ資材を抱えて、まだくすんくすん泣きながら駐車場に向かって歩いていた
プッ「なんて後ろ姿だ・・・」
途端に竜馬はおかしくなってクスクス笑い出した・・・そして何だかもう笑いが止まらなくなった
「わはははははッ!僕だとバレるわけない!アイスクリームしか見えてないんだもんな~~」
道行く人は声をあげて爆笑する竜馬を、完璧に不審者を見る目で通り過ぎる、そんなことはお構いなしに、竜馬は目に涙をため、腹を抱えていつまでも笑い続けた
こんなに声をあげて笑うのは何年ぶりだろう
太陽はそんな笑い続ける竜馬を、燦々といつまでも明るく照らし続けた
いつまでも・・・
いつまでも・・・
コメント
1件
ああ、この話、竜馬の一途さと不器用さがたまらないですね。休日にこっそり尾行して、気づかれないようにコソコソする姿とか、思わず♡♡♡痛の薬買っちゃうところとか、もう完全にストーカーみたいになってる(笑)。でも最後に爆笑するところで全部チャラになる感じ、すごく好きです。アイスクリームにしか目がいってないジェニとの温度差も面白かった。竜馬の恋心、じわじわ効いてきますね。