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千原城市役所内、北野のデスク。内線電話が鳴り北野が受話器を取る。
北野「はい、まちづくり振興課。あ、市民課の……え? はあ、我孫子(あびこ)市役所からの連絡……ああ、中堀(ちゅうほり)地区ですか。なるほど、小さなお子さんが二人いる。分かりました。チバラキファイブと一緒に行きます」
場面転換。
利根川の対岸。チバラキVを乗せた小型トラックが一戸建て賃貸住宅の並ぶ場所に停まる。
運転席から北野が、助手席から市役所市民課の中年の女性職員が降りる。後部ドアからコスチュームに身を包んだチバラキVの5人が降りる。
北野と女性職員が一軒の家のインターホーンを押す。
女の声「はい、どちらさま?」
職員「千原城市役所の者です。住民登録の件でご説明にうかがいました」
どんどんと足音が中から響いて玄関のドアが開き、30代前半の夫婦が出て来る。
夫「ちょっと、どういう事なんですか? ここは千葉県のはずでしょう?」
妻「どうして隣の県の市役所に住民登録しなきゃいけないんですか?」
二人の後ろから幼稚園児ぐらいの年頃の兄妹の二人が飛び出してくる。
夫「こら、中にいなさい。大事な話してるんだから」
兄「ブー。退屈だよう!」
妹「お外で遊ぶ~」
北野「じゃあ、君たち、あそこのお姉さんたちと遊んだら? お父さんとお母さんはちょっと僕たちとお話しなきゃいけないんだ」
北野の指差す先では、チバラキVの5人がポーズを決めて見せる。
兄「わあ! 戦隊だ!」
妹「ほんとだ! 遊ぶ!」
子どもたちがチバラキVの方へ走って行ったところで、女性職員が夫婦に説明を始める。
職員「実はこの一帯は千原城市の飛び地なんです。あの南の方に小さな沼がありますでしょう? あれは利根川の元々の流路だったんです」
夫「え! 利根川のこっち側だから、てっきり千葉県だと思ってたのに」
妻「だから家賃が安かったの?」
夫がポケットからスマホを取り出し、不動産屋に電話をかける。
夫「もしもし。どういう事ですか? 僕たちは千葉県の家を借りたはずですが」
電話口の不動産屋「私はそこが千葉県だとは一度も言ってませんよ。ちゃんと地図をお見せして、この場所ですと、ちゃんと説明したはずです。そこが千葉県だと勘違いなさったのは、お客様の勝手でしょう?」
夫「いや、それは確かにそうだが、説明が足りなかったんじゃないかと……くそ、切りやがった」
妻が心底がっかりした表情で女性職員に言う。
妻「じゃあ、ここは本当に千葉県じゃなくて、隣の県なんですか?」
職員「はい。昔、利根川の洪水対策で河川改修をした際、この中堀(ちゅうほり)地区が川の対岸になってしまったんです」
北野「ですから、住民登録は我孫子市役所ではなく、うちの市に行っていただく事になるんです」
夫「冗談じゃない。あの不動産屋にだまされたんじゃないか。もういい。改めて引っ越し先を探す」
北野「いえ、うちの市も住めば都ですよ。それに、あの沼の向こう側は千葉県ですから、いつでも行けるじゃありませんか」
職員「そうですよ。県境(けんざかい)と言っても、別に壁や関所があるわけじゃありませんし」
妻「いいえ、もう一回引っ越します! 子供たちのためにも首都圏に住まないと」
場面転換。チバラキV用トラックの荷台の中。マスクだけを外した5人のメンバーが座席に座っている。
玲奈「今回の出動は、あの子たちに喜んでもらえたから、一応成功でしょうか?」
瑠美「それにしたって、ご当地戦隊を出動させる程の話だったのか?」
智花「こういう騒ぎって、2,3年に一回ぐらいあるんですって。ほら、4月って引っ越しシーズンですしね」
沙羅「あたしも千原城市の生まれだけど、飛び地の事は知らなかったわ」
倫「あの夫婦も夫婦だよ。たった500メートルの差だろうが! 千葉県のどこがそんなにいいんだよ?」