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41 ◇望みを完遂した
夫は身体の関係を持った淳子とのことは、ただの身体が暴走しただけの事故のような
ものだから気持ちを持っていかれることは決してない。
愛しているのは……好きなのは、私だと言い切った。
この夫の言葉の真意が知りたくて、どうにかしてチェックしたかった。
それで私は淳子と同じようなことをしてくれる場所を探したのだ。
ううん、場所そのものではなく同じような行為をしてくれる人を
探していたのだ。
性感マッサージなんて怖くて行けない、せめてアロママッサージと謳っている
ところにしようと思い選んだ店とセラピスト。
何を勘違いしたのか後々分かったこと、あの店は単なるアロママッサージを施術
する店ではなく、れっきとした女性専用風俗/性感エステ・マッサージ店だったのだ。
冷や汗ものだ。
だけど、堀内くんみたいな安心して施術してもらえるセラピストに当たり、
その上自分の望みも完遂することができ、後悔はない。
ただの自己満足と言われればそれまでなのだが、自己満でいいのだ。
それこそが自分にとっては大事なことだったのだから。
彼と交わした行為から、夫の言葉を信じることができそうだから。
そしてそれは私が持ちうるギリギリのライン上で成し得ることができたことも、
私にとって上々であった。
結果……身体同士親密になった相手堀内くんに、私が心を持っていかれることはなかった。
42 ◇被害者
そして、セラピストの堀内に、もう店に行くことはないと訣別をした数日後、
前のマンションにいた時、娘同士を通して仲良くしていた福井夏子から電話が
掛かってきた。
圭子は引っ越し直前に彼女にだけは引っ越しの理由を話していた。
ただし、深い話はしておらず、学生時代の先輩である淳子から自宅サロンで
施術しているマッサージに頻繁に誘われて夫婦共々辟易しており、ストレスが
半端ないので引っ越しをすると伝えていたのである。
勿論、夫との間にあった具体的なことは伏せていた。
「お久しぶり、福井です。
加納さん、今のマンションの住み心地はどう?
私も娘も加納さんたちが越して行っちゃって寂しいわ~」
「わぁ~、電話ありがとう。
今のところね、引っ越す前は心配してたけど案ずるより産むがやすしじゃないけど、
ここも住めば都で暮らしやすいわ」
「へぇ~、じゃあお引越しは成功ってことね。
良かったじゃない。ふふっ。
ところで今日電話したのは、小泉さんのことなのよ。
ほらっ、あなたから引っ越し理由聞いてたじゃない?
それにまつわる話なんだけど彼女ここでとんでもないことやらかしちゃってるのよ。
被害に遭った人のうちのひとりが私の知り合いでね、酷い目に遭ってるの」
「やはり、私たち以外にも強引にマッサージの施術を勧められていた人たちがいたってことね」
「本当にマッサージだけならまだ良かったのだけど……。
その施術部屋で旦那さんたちを、まぁ客として引っ張るために自分の身体を使ってたってわけ。
具体的には言わないけど加納さん、私の言ってること分かるよね?」
「うん、淳子さんの身体を使って大人の行為をしてたってことよね?」
43 ◇被害に遭った人、免れた者
「そうみたい。ことがことだから名前は伏せるけど、知ってるだけで
現在3名。
詳細が聞けたのは2人なんだけど、どちらのご主人も小泉さんのほうから
一方的にそういう行為に持ち込まれたって主張してたんだけど、どちらの
奥さんも発覚した時には自分の夫のことだけしか分かってなくて信じることが
できなかったみたい。
それで、離婚の方向で話が進んでたらしいの。
でも現在自分の夫以外にも同じような事態になっている人がいるってことが
分かり始めて、私の知り合いはどうしようかとここにきて悩んでるみたい。
でも、夫婦の間で一度できてしまった溝はなかなか元に戻すのが難しいみたいね。
家は被害に遭わずに済んで良かったわ。
加納さんから話をちらっと聞いてて、夫にも小泉さんのことは要注意って
話してたから……。
まぁ、家の場合、運よく呼び止められたこともなかったみたいだけど」
「だけど、どうして奥さんたちにバレちゃったのかなぁ?」
家の場合は淳子さんからの挑発というか暴露みたいなものだったけど、
余所はどうだったのか気になり訊いてみた。
「マッサージの金額ってバカにならないじゃない?
それにそんなことのために自分から身体を使うなんて、男性からしても
普通怖いよね。同じマンションに住んでいる住人なわけだし。
あとのもうひとりのご主人は誘惑に負けて何度か部屋に出向いてたって聞いたわ。
だけど、お金が続かなくてそれで小泉から奥さんに暴露されたって感じかな。
でも彼女って自分からいろいろと墓穴掘ってる感が半端ないなぁ~。
そんなことしたって何にも自分の利益にならないし、周囲と揉めるだけなのにね。
やってることがおかしいなって思うのよね」
「淳子さんね、お金に困ってるんじゃないかな。
今住んでるマンションのローンの支払いに困ってるんだと思う」
「なるほど、それなら分かるね。だけどやり方が不味いわ。
奥さんにばらしたり、本人を脅したりしてもお金は入ってこないもの。
家庭持ってる人がそんなにマッサージにお金使えないわよ。
おいしい思いで何度かは行くかもしれないけど、サラリーマンの小遣いなんて
知れてるもの」
「そうよね。
私や福井さんが思い至ることをどうして淳子さんが分からないのか不思議。
困っているとはいえ、やり方が不味すぎ」
「たぶんだけど、被害に遭ってる人って他にもいるような気がするのよね。
その内マンションの風紀を乱す人間ということで、大きな問題に発展するかも
しれないわ。
ともかく加納さんたちは実被害に遭う前に引っ越して正解だったのかも」
「うん、そうね……」
『いえっ、実は我が家もすでに被害に遭ってるのよぉ~。言えないけど……』
私たちはそこで別の近況報告などをして電話を終えた。
花月夜れん
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#夫婦
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