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44 ◇見合い相手
圭子が週3で勤める高級ラウンジカメリアにOL時代からの顔馴染である
リーマン松尾佑が週末に接待などではなく、同僚と店に
顔を出していた。
そしてその日、できれば渚ちゃんをとのご指名が入る。
「松尾さん、この度はご指名いただきありがとうございます。
個人的にお店にいらっしゃるなんて珍しいですね」
「そう、そうなんだよね。
実は今日、渚ちゃんに話したいことがあってコイッを誘って来たってわけ」
松尾さんはそう同僚を差して言った。
「え~っと……」
私は松尾さんの右隣の人を見た。
「あぁ、コイツね、き……」
「あ、僕は北村といいます。
きれいな人を見せてやるからって言われて付いて来ました」
「あははっ、渚ちゃんのことだよ?」
「松尾さんったら、ありがとうございます」
「それと奢るって言っただろ? 北村くん、そこもちゃんと言っといてよ~」
「ははっ」
ここで、もうひとり七瀬詩織というホステスが席についた。
話が私にあると言うくらいだから、自然と私たちは同じテーブルについているが
2組に分かれるような雰囲気で会話が始まった。
詩織さんは美人さんなので北村さんの顔がにやけているのが見て取れる。
彼も独身なのかな、なんて見つめていたら松尾さんが話し掛けてきた。
「渚ちゃん、僕幾つになったと思う?」
「え~っと、確か以前お聞きした時は、私よりかなりお兄さんだったように
思うので……今、35才くらいでしたっけ?」
「おしいっ、36才になっちゃったよ」
「いいですね、独身を謳歌してらして」
「よく言うわ。こう見えて寂しいんだよっ」
「ふふっ、そうなんですか」
「聞いてくれる?」
「女性絡みでしょうか?」
「あれっ、何で分かっちゃったのかなぁ~。まぁいいわ。
俺、2か月ほど前に見合いしてね、これ、この女性なんだけど……どう?」
そう言いながら松尾さんがスマホに表示させてる女性の画像を見せてきた。
10
#シングルマザー
水羽凛
174
#異世界転移
花月夜れん
2,595
フィオレ
86
『えーっ……』
私は、その画像に心臓が止まりそうになる。
「知ってるよね?」
45 ◇骨の髄までしゃぶられちゃうわよぉ~
圭子は昔なじみの気安さから前々回だったか、松尾が接待で上司やクライアントと一緒に店に来店していた時に彼の横に座ることがあり、その時何気にこの街に数か月前に引っ越してきたばかりだという話をしていた。
勿論今の住居が分かるようなことは話していないが以前のマンションとは縁も
ゆかりもなさそうな松尾に対して、うっかり話の流れで以前住んでいた
マンション名を口にしていた。
********
「僕の付き合ってる小泉淳子さんと同じマンションだったらしいね。
僕ね、お見合いの釣り書見た時にピンときて、渚ちゃんが話してたこと思い出してさ
『知り合いに同じマンションに住んでた人がいるんだけど』って話になって、だけど
この時まさか本当にふたりが知り合いだなんて思ってなかったんだけど……。
小泉さんから背格好や特徴を聞かれて渚ちゃんじゃないのかなって話に
なったんだよね。
でも僕渚ちゃんの本名知らないから、確認しておこうかなと思ってね」
どうすればいいのか、何て答えようか、私は逡巡した。
「うん、小泉さんのことは知ってる。
だけど、余り深い付き合いではないから……」
歯切れが悪くて、印象悪くするかなとも思ったけれど親しくしてないのは
本当だから嘘は付けない。
それにしても、松尾さんみたいないい男性が淳子さんみたいな女に
引っ掛かるなんて、えっ? しかもお見合い?
いろいろと問題起こしているっていうのに彼女は婚活もしていたのかと、
私は呆れるしかなかった。
『松尾さぁ~ん、この人と結婚したら骨の髄までしゃぶられちゃうわよぉ~』
そう忠告してあげたかった……。
だけど、親しいと言ったってたかだかクラブのお客様で数回同じテーブルに
付いただけの関係で、淳子さんが危険人物であることを話せるほどの距離感
ではない。
悩ましいけれど、足を突っ込んでいいものかどうか。
悩んでいる私の横で更に続けて聞きたくなかったようなことを松尾さんは
喋り始めた。
46 ◇興信所を使ってください
「へぇ~、やっぱり知り合いだったんだ。世間て狭いよね~」
「そうですね」
私は自分の口の軽さを呪った。
どこそこのと具体的な名称を出さずに、ただ引っ越してきたという話をすれば
よかっただけなのに、なまじリアルなマンション名を出して身元がバレるような
ことをして、あぁ、私ったらプロ失格じゃない。
そう思い至り圭子は凹んだ。
「それでね、僕はもう小泉さんと結婚しようって決めてるんだけど親がね、
心配性なものでプロポーズに待ったを掛けられてるんだよな」
「ご両親は何て言ってらっしゃるの?」
「興信所を使って彼女の素行に問題がないか、調べてからにしても遅くないと、
まぁそんなふうに言ってる」
「松尾さん、後顧の憂いなくご両親にも祝福してもらって結婚されたほうが
いいと思いますよ」
「それってやはり、調査したほうがいいってこと?」
「ご両親を安心させてあげてください。親孝行だと思って」
「何か反発心が湧いて、何なんだよ人が決めたことに文句付けるなんてって思ってたけど、
渚ちゃんにそう言われると不思議とあぁそうだなって納得できるわ。
相談してよかった。ありがとう」
「いえいえ、どう致しまして」
「ところで、ちなみに渚ちゃんが結婚を決めた時って旦那さんの身元調査なんか
したのかなぁ?」
「うちは、同じ会社の同僚だったし恋愛だったので、全くそういうのは……。
両親も何も言わなかったですし。
でも、お見合いだったらうちの両親も松尾さんのご両親と同じ提案を
したかもしれません。
何年も側で見ていて、その人の人となりが分かっているわけでは
ないですので」
松尾さんは、私と結婚相手について話せたことで拗れていたであろうご両親とも
揉めずに済みそうな手応えを感じたみたいで、その表情は明るかった。
あとはもう、北村さんや詩織さんとの会話に合流して楽しいお酒になったみたいで
良かった。