テラーノベル
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(KAIRYU視点)
今年も、この季節がやってきた。
「…あっっつ、!!」
日差しがじりじりと砂浜を熱して、海の水面がキラキラと光っている。
もう何年目やろう。
俺は、毎年この時期がやってくると、この海の家でバイトをしている。
と言っても、海は正直苦手で、さらに正直に言うとできれば避けたい。
なのに、毎年ここでバイトをしている。
……というより、させられている。
「カイリュウ〜?も〜、サボらんといてよ!」
忙しそうに開店準備をしている、この容姿だけはやたらいい男。こんな綺麗な顔のくせに、一人称は”ナオ”で、自分の事を世界一可愛いとか言い出す少し変わった奴だ。
ナオ、いや本名はナオヤで、この海の家のオーナーの息子である。ここを手伝ってはいるが、本業はカメラマンだ。
俺とは小さい頃からの幼馴染で、それを利用するかのように毎年この海の家を手伝わされている。
「お前の仕事まで俺にやらすなや!」
「ええやんか、給料もろてんねんから。ナオなんてタダ働きやで?」
「お前は別の目的があるんやろ…」
「え?なんのこと〜?」
テーブルを拭きながら、わざとらしく誤魔化すナオヤ。
こいつは根っからの遊び人で、この海の家を手伝っている理由も、男を漁りたいからだ。
毎年、ここでこいつの顔に引っかかる男とフラフラどこかへ行き、とっかえひっかえ人を変えながら楽しんでいる。
「……あ〜、まぁ、でも、お前も一応好きな奴おるもんな」
「一応って何やねん、純愛やから!純愛♡」
「おいそこ拭けてへんで」
「なぁ!も〜!無視せんといてよ!」
ナオヤと適当に喋りながら仕事をしていると、こんちはぁ〜と声がして、その声が聞こえた途端ナオヤの目が輝いた。
「あ!セイちゃ〜ん♡おはよ〜!♡」
「…こいつっ、ほんまに…っ、ぶるなよ、」
俺がボソッと突っ込んだ声は無視して、パタパタと走っていく。
「お〜、ナオちゃんおはよ。」
「おはよ〜♡も〜ナオ、待ってたんやで?セイちゃん。」
「そうなん?時間ぴったりやったやろ?」
「早く会いたかったんやもん」
ナオヤがぶりっ子をかましまくっている、やたらガタイも顔も良い男。
セイトは、この海の家の仕入先で働いている、ナオヤの想い人だ。
去年初めてうちに配達に来て、その時に一目惚れしたとキャーキャー騒いでいた。誰にでも懐に入るのが早いナオヤは、セイトともすぐに打ち解けた。
それから毎日のように来ていたセイトとは俺も自然と会話をするようになり、今では友達のように仲が良い。
「お、カイリュウもおるやん。おはよ、今年もよろしくな」
「おん、おはようさん。今年も汗だっくだくやな。」
「しゃあないやろこれ重いねんから!(笑)誰の注文やねん」
「セイちゃんに会いたいからいっぱい頼んじゃった♡」
「ナオちゃんか、じゃあ許したる」
「おい、俺やったらどないやねん」
「汗塗りつけたるわ(笑)」
「汚なっ!おいナオヤお前が一生注文せえ!」
んふふ、と許されたナオヤは俺の声が全く聞こえていない様子で、呆れて外に出ていくとタイミングが悪く人にぶつかってしまった。
「っ、!あ、すんませんっ、!」
「あ、いえ、すみません、」
謝りながら顔を見ると、ナオヤに引けを取らない男前がそこに立っていて、イケメンに一瞬怯みながら一礼すると俺に倣うように一礼した。
そのままそこを動かないその人に、ん?と思っているとナオヤがバタバタとこっちに走ってきた。
「あっ、ランくんやんな?」
「あ、はい」
「え?」
目の前にいるイケメンとナオヤが会話をして、”ランくん”と名前を知っていることに疑問を抱いているとナオヤが俺を見て続けた。
「あ、ごめんカイリュウ!言うてなかったっけ?こちら、古家蘭くん。今日から新しくバイトで入ってもらうから、よろしくな?」
「え?そ、そうなん?」
びっくりしながら”ランくん”を見ると、あっ、と緊張したような顔で俺を見ながら挨拶をした。
「今日からお世話になります、古家蘭です。よろしくお願いします。」
また俺に一礼をして、微笑んで俺を見た。
……この海の家、イケメンが集まるようにでもなっとるんか?なんてアホな事を考えながらも、自己紹介をしながら挨拶を交わした。
「……てか、ランくんほんまイケメンやなぁ〜?♡面接のときも思っとったけど!」
「っ、え、お前、まさか…」
こいつ、自分が食うためにイケメン新人入れたんやないやろな?!なんて疑いの目でナオヤを見た後、新人くんの身が危ない、と思わず腕を掴んだ。
「おいっ、お前、気ぃつけろや?!こいつこんな顔しとるけどほんまはっ、」
「っ…ほんまは、?」
俺の言葉を待つように、俺の目を見つめた。
うわ、あかん、まじでイケメンやな…っ、
思わず見入ってしまった後、我に帰って腕を離した。
「なんでもないで〜?ランちゃんっ?♡」
「い”っ、!」
「ナオ、あんまりここおらんから、仕事内容はカイリュウに聞いてな?」
「う”っ、い”だだだっ!!」
新人くんにニコニコしながら、見えないところで俺の背中を抓るナオヤ。
「?っ、はい、わかりました(笑)」
おい笑われとるやないか、最悪や。ほんで笑っとる顔もイケメンやな。
「じゃあ、後よろしくな?カイリュウっ、?」
「あ”っ、で、!」
バシッ!と背中を叩かれて、るんるんでセイトのところに行くナオヤ。
あいつ、後で絶対しばく。
ナオヤが立ち去り、2人になって少し気まずい雰囲気が流れ始めたのを察して、俺が和ませなあかんと先輩モードのスイッチを入れる。
「えっと、ごめんな?名前もっかい聞いてもええ、?」
「あ、えっと、古家蘭です」
「ランくん?おいくつ?」
「23です」
「ほんなら年下やな。よし、ラン、ついてこい」
「えっ?(笑)」
「うそうそ。(笑)ランって呼んでも平気?」
「あ、(笑)はい、大丈夫です」
「じゃあ、ラン。よろしくな?俺のことは適当に呼んで」
「よろしくお願いします、…えっと、カイリュウさん。」
「おん。じゃあ、こっちな?」
緊張しているのが伝わってきて、まぁ初日なんてそら緊張するよな、と内心共感しながらも、働きやすくしたらなあかんなー、なんて先輩風を吹かそうと意気込んでいた。
ーーーーーーーーーー
(RYUKI視点)
「うあ〜〜、疲れたぁ〜〜」
「うるさっ(笑)ちょっと、静かにしてよ」
「あ?ええやん誰もおらんのやけん」
外のベンチに座って、疲れを声に出して吐き出すとトムに注意された。
こんくらいええやろ、東京の奴ってなんでこんな静かなんが好きなん?
「あ、出た、”けん”。(笑)」
「お前福岡バカにしとっちゃろ?」
「してないよ(笑)可愛いなって思っただけじゃん」
トムとは、大学に入学して知り合った。
福岡から関西に越して来た俺は、同じく別の土地、東京から来たトムとすぐに仲良くなった。
本名はハヤトやけど、あだ名なん?って聞いたらトムって言うから、そう呼ぶことにした。
東京出身のトムは、関西に来てから全てが新鮮なようで、関西弁は方言の中でもありふれた方やからすぐに慣れたものの、俺の福岡弁は未だに不思議らしい。
「ねぇ、リュウキ。今からサークル行くでしょ?」
「あ〜、うん。ちょっと顔出したら帰ろっかな」
「やる気無さすぎ(笑)」
「だって眠いやん。今日はもう踊れん」
トムと俺は入学した時から、ダンスサークルに入っている。
最初は楽しかったけど、やる気のない奴ばっかりで、最近はそれに感化されてきて行くのが億劫になってきていた。
「ね〜、やる気出して。早く行くよ?」
トムに引っ張られるまま、立ち上がって歩き始めた。
***
部室のドアを開けると、何やら盛り上がっている。
…うちのサークル、こんな人数おったっけ?
やたら人が多くてザワついていることに違和感を覚えて、周りの奴に話し掛けた。
「なぁ、なんかあったん?騒がしくね?」
「なんかやばい先輩来てるんだって。」
「やばい先輩?」
「うちのサークル卒業した人で、1番ダンス上手かったらしい」
「…へ〜、」
聞いたくせに話半分で聞きながら、みんなの視線の先を覗こうと前に進むと、突然きゃーきゃー黄色い声が湧き始める。
「ねぇ!リュウキ、こっち!」
トムが興奮気味に手招きしてきて、そっちに向かうと数人が踊っている中で一際綺麗なダンスを踊る人がいた。
あ、絶対この人や。
後ろ姿やったけど、一瞬で”やばい”の意味が分かるほど1人だけオーラを放っていて、線が綺麗で、動きが繊細で、色気のあるダンスをしていた。
「……っ、や、ば、、っ、」
今までサークルで上手いと言われて来た人はたくさんいたけど、比べ物にならないほど上手くて、カッコよくて、思わず息を呑んで夢中で見入ってしまい、心臓がドキドキした。
踊り終わると自然と拍手が起こり、俺も無意識に拍手をしていた。
「……やばかったね、あの人、」
トムの声が隣から聞こえても、その人から目が離せずにいた。
後ろ姿でこんなカッコイイなら、前から見たらどんなんなんやろ、なんて考えていると振り返って一緒に踊っていた人とハイタッチを交わした。
ニコッと微笑んで、怖そうだけど、優しそうで、不思議だった。
その顔を見た瞬間、また、心臓がドキドキと音を立てた。
「……うき、リュウキ、?ねぇ、聞いてんの?」
「……っ、え、?!」
「もー、何ぼーっとしてんの?ずっと話しかけてたんだけど!」
「ごめ、…」
「リュウキ、?」
トムの言葉を聞きながらも、目線がずっと、その人が帰っていく姿を追っていた。
「……リュウキ。どうしたの?なんか変、」
「っ、別に、疲れとうだけや、」
「なに?…あの人が帰った途端、ハヤトの話聞いてさ。」
「えっ?!いや、あの人は関係ないけん!」
「……わっかりやす〜、(笑)」
「はっ?!何がや?!」
「何?一目惚れ?」
「は、はっ?!違うけん!!/」
「顔真っ赤だよ?(笑)」
「なにっ、そりゃ、夏やけん、暑いやろ!」
「も〜(笑)焦りすぎ。ハヤト聞いたげよっか?」
「はっ、?ちょっ、おい、トムっ!!」
トムの腕を掴み損ねて、さっき一緒に踊っていた人達の方へ向かったトム。
話を聞いているトムを眺めながら、正直に言うとドキドキしていた。
「おまたせ、」
「っ、待ってないし!」
「え〜、じゃあ教えない。」
「……っ、ごめん。」
「ふふっ(笑)可愛いなぁ、もう。…ハヤト達の6個上みたい。なんか留年してたらしいけど。名前は川縁拓途さんだって〜」
「っ……へぇ、?」
「なんかニヤついてる」
「はっ?!ニヤついてへんわ、!/」
かわ、かわべり……う、覚えにくいな、
かわべり、たくと。
名前を頭に一生懸命メモしている自分がいて、これって、ガチで一目惚れかも、なんて内心1人で焦っていた。
コメント
13件
続き楽しみすぎます😖💖 普段パロディ系見ないけどこの作品めっっちゃ刺さります笑💞
続き楽しみすぎる🥺🥺🥺どストライク過ぎて困ったので1回海泳いで来ますね👋設定神すぎます!口角上がりすぎて右の口角と左の口角がくっついて円になりました😊また1つ生きる楽しみが増えた🥰

みちさんはじめまして😭😭 パロディとか、リアルと離れすぎている設定のお話は普段読まないんですが、みちさんの書くメンバーが本当に本当にリアリティがあって愛を感じられて、そしてしっくり来すぎて、、(他の作品もそうですが)こんなにもスッと入るパロディ系作品初めてです😭😭🫶🫶 また次回作も楽しみにしています!!