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#ロマンスファンタジー
百はな🍑
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コメント
1件
めっちゃカッコよかったです…! 経理出身の令嬢が帳簿の不正を暴く展開、もう最高でした。証拠を積み重ねて追い詰めていく感じが気持ち良くて、最後の「ナメないでもらえる?」の台詞に胸がスッとしました。侍女長の背後にまだ誰かいるっぽいのも気になる…続きが待ち遠しいです🤍
皇宮へ戻ってすぐ。 私は皇宮の調達責任者である侍女長を、皇太子妃用執務室へ呼び出した。
「皇太子妃殿下。いったい、何の御用でございましょう?」
侍女長は入室するなり、迷惑そうに扇をパタパタと揺らした。
「帳簿など、遊び半分で触るものではございませんよ。数字というものは、慣れない者が触ればかえって混乱を招きますので」
「ずいぶんお忙しいようね」
「ええ。皇宮中の物資を管理しておりますから。妃殿下には、私どもの苦労などお分かりにならないでしょうけれど」
「…………」
(へえ。随分とナメてくれるじゃない)
(元経理部員を捕まえて、帳簿遊びとは。いい度胸ね)
「そう。では、あなたの貴重なお時間を取らせないよう――手短に終わらせましょうか」
ぱさっ。 机へ一枚の書類を置く。
「昨年。神殿へ寄付した石鹸は500箱、500万ルク」
「……ええ」
もう一枚。
「今年は1500箱、1500万ルク」
「慈善事業を拡大しただけでございましょう?」
「そうね。問題は――」
私は侍女長をまっすぐ見据えた。
「追加された1000箱が、神殿に届いた形跡がどこにもないことよ」
「…………」
扇がピタリと止まった。
「追加分は、工房から神殿へ直接納品いたしました」
「ええ。帳簿の上ではね」
バシッ! 営業記録を叩きつける。
「でも工房は、その納品期間中――洪水被害で休業していたわ」
「そ、それ以前に作った在庫があったのでしょう!」
「出荷記録も調べたわ」
次の書類を滑り込ませる。
「神殿向けの出荷は――ゼロよ」
「……記録漏れでは?」
「では、これは?」
三枚の受領証を扇状に並べた。
「受領証よ」
「でしたら、きちんと納品されて――」
「残念ね」
魔法複写機で復元した受領証を、その上へ重ねる。
「追加1000箱分の受領証は、最初の500箱の受領証を複製して、日付と番号だけ書き換えた偽造よ」
「……っ! な、何を根拠に……!」
侍女長の顔からスーッと血の気が引いた。
「最高級サファイアを触媒にした魔法複写機よ。おかげで、消された文字や上書き前の筆跡まで綺麗に復元できたわ」
「そ、そんなデタラメを……!」
「デタラメかどうか、今日直接神殿へ行って確認してきたのよ」
「…………え?」
「アンナ」
「はいっ! 今、再生しちゃいますね!」
映像魔石が淡く光り、空中に神殿の受領台帳が浮かび上がった。
【薬草石鹸 500箱受領】
「神殿側の記録よ」
映像が切り替わり、配布記録と、空っぽの倉庫が映し出される。
「……神殿が実際に受け取ったのは500箱だけ。それなのに皇宮は、届いてもいない追加1000箱に――1000万ルクも支払っている」
支払い承認書を突きつける。
「そして、その支払いを最終承認したのは――あなた」
「…………っ」
侍女長の手から扇が滑り落ちた。
カラン――。
「ち、違います! 私は必要な書類が揃っていたから承認しただけで……!」
「偽造された受領証を使って?」
「偽造なんて知りません!」
「なら教えて」
私は頬杖をついた。
「誰が書類を持ってきたの?」
「…………」
「誰の指示で直接納品に切り替えた?」
「…………」
「消えた1000万ルクは、どこへ行ったのかしら?」
「…………」
答えはない。 代わりに、侍女長の額から大粒の脂汗が流れ落ちた。
「ねえ、侍女長」
ペンを指先で回しながら、冷ややかに微笑む。
「さっき言ったわよね? 『数字は慣れない者が触れば、混乱を招く』って」
「…………」
「本当にその通りだと思うのよ。帳簿ってね、不正を隠そうとすればするほど、辻褄を合わせるための嘘が増える。そして――いつか必ず、どこかでボロが出るものよ」
私は椅子からスッと立ち上がった。
「経理を、ナメないでもらえる?」
「…………!」
「選択肢は二つよ。自首して、誰の指示で1000万ルクを横領したのか全部話すか。それとも――この証拠一式と一緒に騎士団へ引き渡されるか」
「そ、そんな……!」
「自首するか、破滅するか。3秒で決めなさい」
「……っ!」
「3」
「お、お待ちください!」
「2」
「わ、私は……!」
「1」
「言われた通りにしただけなんです!!」
侍女長が、膝から崩れ落ちた。
(やっぱり――この女だけじゃないのね)