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ひより
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鷹槻れん

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世羅 鈴🎨🎤
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#ロマンスファンタジー
百はな🍑
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「アンナ」
「はいっ!」
チリン――。 アンナが呼び鈴を鳴らすと、すぐさま待機していた騎士たちが入室した。
「侍女長を拘束して」
「はっ!」
「お、お許しを! 皇太子妃殿下!」
「詳しい話は騎士団で聞いてもらいましょう。連れて行って」
「妃殿下! 妃殿下ぁぁぁっ!」
叫び声が遠ざかり――パタンと扉が閉じた。
***
「…………」
「はぁぁぁぁ……」
全身から一気に力が抜け、椅子へ座り込んだ。
(疲れた……! 前世の地獄の決算期明けみたいだわ……)
「お見事でしたね!さすがお嬢様です!」
「ほんっと疲れたわ……」
けれど、口元だけはニヤリと上がってしまう。1000万ルクの横領を摘発。皇宮の不正を一つ潰した。
(ふふっ。この実績を足がかりに、いずれは予算を任せてもらうんだから! 優雅なセカンドライフへの第一歩よ♡)
「……お嬢様、なんですかその顔。今、ぜったい悪だくみしてましたよね!?」
「失礼ね。私の未来のための『健全な資産形成』を考えていただけよ〜。はっ、こうしちゃいられないわ!」
(これほどの横領事件だもの、すぐ緊急会議になる)
(今のうちに再発防止策までまとめておけば、『私に予算を任せても大丈夫』って思わせられるはず!)
(ふふっ。予算ゲットへの最短ルートじゃないの♡)
立ち上がって歩き出そうとした――その瞬間。
ふらっ。
「……あれ?」
視界が歪んだ。
「お、お嬢様!?」
「大丈夫……ちょっと、目眩が――」
膝からストンと力が抜ける。 床へ倒れ込みそうになった――まさにその時。
バァンッ!
部屋の扉が勢いよく開き、誰かが飛び込んできた。そして逞しい腕が私の身体をガシッと抱きとめる。
「ソフィア――!!」
「……っ、殿下……?」
見上げると、息を切らしたカイル殿下がいた。
「お前の告発で侍女長が拘束されたと聞いた。……大丈夫か!? 顔色が真っ青だぞ!」
「少し疲れただけですわ」
カイル殿下は、机いっぱいに広がる書類の山を見渡した。 眉間に深い皺が寄る。
「……お前一人で、ここまでやったのか?」
「一人ではありませんわ。アンナがおりましたもの」
「そういう意味ではない!」
その声は、いつになく鋭かった。
「なぜ、俺に言わなかった!」
「殿下のお手を煩わせるほどのことではありませんもの」
「俺の手は――お前に煩わされるためにある!」
「…………」
(はあ? 何言っちゃってるのこの人!?)
思わず瞬きをした。
「……ずいぶん奇特なお手ですこと」
次の瞬間。
「きゃっ!?」
身体がひょいっと宙へ浮いた。 完全な、お姫様抱っこ。
「ちょ、ちょっと……! 平気ですから、おろしてくださいませ!」
「平気な人間は倒れかけたりしない」
「少し目眩がしただけですわ!」
「少しでも駄目だ」
そのままソファまで運ばれ、そっと横たえられる。 険しい表情とは裏腹に、私を扱う手つきだけは驚くほど丁寧だった。
「次からは、絶対に俺を使え」
冷えた私の指先を、大きな両手で包み込まれる。
「……約束しろ」
大きくて、温かい手。 昨夜は私を離すまいと抱きしめていたその手が、今は壊れものにでも触れるように、そっと指先を温めている。
「…………」
どうしてだろう。 その手を――振り払う気になんて、なれなかった。
コメント
1件
第23話、読ませていただきました。ソフィアさんがやり遂げた後のふらつきと、そこに飛び込んできたカイル殿下の「俺の手は――お前に煩わされるためにある!」という言葉、胸がぎゅっとなりました。ああいう大きな愛情の示し方、すごく好きです。それでいて、心の中で「はあ?何言っちゃってるのこの人!?」ってツッコむソフィアさんのギャップも可愛くて、思わず笑みがこぼれました。大きくて温かい手で指先を包み込む仕草、殿下の本心が滲んでいて、とても素敵なシーンでした。次回も楽しみにしていますね🌷