テラーノベル
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パカというアルパカの 被り物を
被った人に 先程の言葉を告げられ
わたしたちは、 ゲノムタワーの 中まで
案内され 教室に瓜二つな部屋へ 入った。
入ってみれば、色んな人たちが
先に席をついて待っていた。
この人たちもパカさんが言っていた通り
「ナカノヒトゲノム」の実況をしていた
実況者たちなんだろう……だとしたら
それだけの人数を誘拐…
一体なんの目的で私たちは。
そう考えながらも、
私は余った席に腰をかけた。
すると、パカは教卓の中からメガネと
名簿を取り出し仕切りはじめる。
パカ「皆様グッモーニン!
今日から新学期ですね」
教室や見た目に相まった
その姿はまるで、先生のようだった。
パカ「…おや」
「空気が悪いですねえ」
元気のいいパカさんとは裏腹に
空気がものすごく悪い。
それに入り混じって
殺気がある気がするのは、
わたしだけ なんだろうか。
パカは空気を
入れ換えるように窓を開け、
話をそのまま進める。
パカ「それではまず」
「これから苦楽を共にする
仲間の自己紹介とまいりましょう」
「窓際から順に お名前と
得意な ゲームジャンルを」
パカ「元気な声で!お願いいたします」
入出「はい!」
入出は、その言葉を最後まで聴いて
机に置いていた手に力をいれ
イスから立ち上がり、真っ先に
元気よく自己紹介をし出した。
アカツキ「はじめまして
入出アカツキです!
得意なゲームは脱出ゲーム!!」
「自然と旅行と
肉球全般が大好きです!!」
更屋敷は背後から素早く、力のある拳で
アカツキの腰に目掛けて一発殴る。
…すごい音した…。
入出さんはその勢いで
机に持たれかかったままだった。
見ただけでわかる…相当痛いこと。
アカツキは死にそうな声で
少女にしゃべりかける。
アカツキ「せ…先生が元気よくって」
更屋敷「あんた
危機感ってもんがないの!?
私たち こいつに誘拐されてるのよ!」
更屋敷はアカツキに向かって
つっこむ。
更屋敷「しかも こんな
薄気味悪いところに…」
更屋敷は廊下側の 机の上にある
花瓶をじっと見つめ
黙り込み座ってしまった。
あの花瓶は……。
いじめでよくあるものだ
かといってそれを意識して
置かれているのかも今は不明だし
気味がわるいのも確かだった。
パカ「入出様はなんと
第1ステージの 瞬間閲覧者数を
トップでクリア されております」
アカツキはパカの説明を
まったく耳にいれず、窓からみえる
巨大パンダ に目を向けていった。
もしかして、パンダ好きなのかな
肉球に触れる時もそんな発言してたし。
パカ「入出様パンダはあとで」
「それではお隣へ」
ヒミコ「い…伊奈葉ヒミコです
好きなゲームは
育成シュミレーションです」
私が目を向けた先には
小柄で愛くるしい少女が
立ち上がって自己紹介をしていた。
ヒミコ「動物育てたり
農園作ったりするのが好き…」
「なので…」
ヒミコは頬を 赤らめながらも
理由を述べる。 そのヒミコに対し、
パカは 「伊奈葉様
ありがとうございます」と
ヒミコへ 拍手をする。
一方のヒミコは いまだに
頬を染めながらもパカに会釈 する。
パカ「貴方のささやき実況
じつはワタクシ
とりわけ熱心に拝聴してまして」
「こうして生声を お聴きできるとは
ファンとして光栄の至り…」
パカはヒミコに敬礼する。
パカ「ぜひ一度ささやいて
いただけないでしょうか」
ヒミコ「え…」
ええ……。
パカ「アイ ラブ…
ミスターパカ…と」
「みっ…耳元でっ」
「なにとぞ」
パカ「なにと
パカがヒミコに
迫っているその時だった。
金属音が教室中に響く。
まめ「あ…え?」
一瞬なにが起きたのか分からなかったが
パカを一目みれば分かる。
鉄パイプを 持った
少年がパカに襲いかかっていた。
どうやらさっき鳴った音は、
鉄パイプの音らしい。
パカ「…駆堂様」
「あなたの番はまだですよ」
パカは冷静ながら黒板に 刺さった
鉄パイプを抜く。
だがそれでも少年は
落ち着くことなく火力が増していった。
駆堂「るせえ!!!」
「ヘンタイ家畜野郎」
駆堂はパカにかまわず教卓を蹴る。
ヘンタイ家畜野郎…。
駆堂「なにが自己紹介だ」
「さっさとオレを 解放しやがれ」
駆堂の発言を聴いたパカは
「フウ」と 息を吐く。
パカ「ですから」
「そのために
必要な自己紹介と
ホームルームでございます」
パカは駆堂が 先ほど
叩きつけていた鉄パイプを
注意深くブーメラン型に折って
床へ捨てた。 ……素手で!?
駆堂はそれにちいさく舌打ちをする。
パカ「それに駆堂様」
「ワタクシへの
暴力行為はルール違反と
再三申し上げたはずです」
「今後は厳しく処罰しますよ」
パカは警告するように淡々と話す。
駆堂「上等だ」
「やってみろや」
パカ「…今晩から 貴方のお食事」
「お気をつけくださいね」
「ピーマン…
めっちゃ入れますんで…」
あっピーマン嫌いなんだ…。
駆堂「つーかなめやがって
パカの発言によって
駆堂の逆鱗に触れたのか
駆堂はパカの頭を蹴りに、パカは
避けようとしているご様子。
確かにこりゃなめてる。
パカ「えーこちらが 駆堂アンヤ様
このように 格闘ゲーム全般が
得意な実況者様です」
パカは代わりに
アンヤの紹介をする。
…ありがとうございます。
??「アン坊 そのくらいにしときなよ」
すると、最前列の方から
特徴的な女性の声が
聞こえてきた。
白衣の女性「そのアルパカ君に
絡んでも埒があかないよ」
「昨日までさんざん試したじゃないか」
アンヤは共感したのか席にもどる。
逆に話に乗り出した女性は
そのまま自己紹介に。
白衣の女性「次はボクの番だ」
ユズ「路々森ユズ
パズルや迷路
やり込みゲームが 十八番だ」
「趣味で熱帯植物の研究もしている」
……けっこうスゴい方では?この方。
アカツキ「ユズ?」
ユズの自己紹介がおわったあと、
自己紹介を黙々と 聴いていた
アカツキは なにかに気づいたようで
思わず席から立ち上がる。
アカツキ「ひょっとして「ロロロの
やり込み実況」のユズ先輩ですか?」
ユズは その質問に早々と 答えた。
ユズ「そうだが 君は?」
その答えに喜び、アカツキは
自分の席から離れてユズに近づく。
アカツキ「おっおおー!
俺!「あっきー」です
花粉症実況の」
ユズ「おお!あっきーか!」
どうやらお二人は 以前からの
知り合いだったようで、 喜ばしく
お互い両手でハイタッチを交わす。
ユズ「ははっなんだい 」
「君も誘拐されていたか!」
なんだろう…再開の仕方は
物騒だけど 微笑ましい…。
更屋敷「…なによ 知り合い?」
アカツキ「はい!」
「昨年あげた「公園の落ち葉で
全身埋もれる実況」から
仲良くしてもらって」
更屋敷「あ…説明もういいわ」
更屋敷はオブラートにつつみこんで
アカツキの話をとめる。
ユズ「近々コラボ実況をする
予定だったのだよ」
「ちょうどいい」
「向こうのラウンジで
打ち合わせをしようじゃないか」
アカツキ「いいですね」
ユズとアカツキは片手を重ねて
教室から颯爽とでていこうとした。
…よかった止める人
いないかとおもった。
更屋敷「なんだか
アホらしくなってきたわ…」
頬杖つきながら更屋敷は
さっきまでの自分に呆れる。
カリン「私 更屋敷カリン
ホラー中心の実況をしてるわ」
「なんか文句ある」
カリンは嫌々も 自己紹介を終えた。
ホラー実況者か…これまたいい…。
パカ「フフ
更屋敷様はクールですね」
「さすが今年度踏まれたい
女性実況者様 ナンバーワンです
実況時とのギャップがまた」
パカ「次 後列へ」
パカはカリンの圧力に押され、
早急に次の人に進めた。
…次に立ち上がった人は、
クリーム色の髪をしていて
黒いマスクと紫色の瞳が
チャームポイントの
何かが漂う少年だった。
ザクロ「忍霧ザクロ
ステルス系をよくやる」
「…さっさと この茶番を
終わらせてくれ」
パカ「それは貴方がたの
がんばり次第でございます」
ザクロ「俺たちが全員
ナカノヒトゲノムの実況者
だったことはわかった」
「実際聞き覚えのある声の奴もいる」
ザクロは話を続けてパカに問い詰める。
ザクロ「…だが
どうして俺たちを選んだ?」
「一億ビューの達成が
なんになる?」
「お前の本当の目的はなんだ」
パカ「フェ~~」
ザクロ「………ふぇ…?」
パカ「フェ~イ」
ザクロ「フン…簡単には
口を割らないということか」
ユズ「いやザッくん
アレたぶんナメてるだけにゃー」
「クシャアじゃないにゃ」
…てっきりごまかしてるのかと…。
鬼ヶ崎「おう
質問ついでにいいかい?」
パカ「どうぞ鬼ヶ崎様」
鬼ヶ崎「さっきから
気になってたんだが
こいつァなんでえ?」
鬼ヶ崎はあの花瓶を
親指で軽く指す。
パカ「ああ」
「そちらは第2ステージに
関わる大切なオブジェでございます」
「じきにわかるときが来るかと」
鬼ヶ崎「ふーん……」
「まァ いいや」
カイコク「俺ァ鬼ヶ崎カイコク
戦国統治や 和風なゲームを
主にやってる」
「よろしくな」
カイコクの自己紹介に人 それぞれ
耳を傾け、視界にうつす。
アカツキに至ってはカイコクに
軽くお辞儀をする。
パカ「ありがとうございます」
「ちなみに鬼ヶ崎様は
第1ステージで最多の討伐数を
誇っております」
「討伐ステージでは
大変心強い人材で
いらっしゃいますね」
カイコク「へェ」
「そりゃどーも…」
パカ「では 次の方 」
まめは深呼吸して自己紹介を始める。
イズミ「伊田イズミです
好きなゲームは ノベルやホラー
シュミレーション系などです」
「よろしくお願いします」
パカ「伊田様 ありがとうございます」
「こちらの実況者様は
ノベルゲームがお好きらしく
読み方がお上手 ですのでぜひ
読み聞かせしてもらってください」
アンヤ「俺らは幼児かよ」
パカ「フフフ…」
…ああ…なめられてる。
パカ「それでは最後ですね」
「逢河様」
「逢河様?」
逢河「………」
パカが二度呼びかけても逢河からの
返事は返ってこない。 その状況に、
一体なにが起こっているんだろうと
周囲は 後列にいる逢河の席へ
視線を向ける…が、 逢河は
いびきをかいて うつ伏せで寝だす。
「し 仕方がないですね…」
「彼は逢河マキノ様」
パカ「言葉よりも目で落とす…
恋愛ゲーム実況の
プロフェッショナル でございます」
「ただ 単語実況で知られる通り
彼が長い言葉を発するのは
極めて稀でございます」
アンヤ「実況してねーじゃねーか」
パカ「ともあれ これで
全員の紹介が 終わりました」
パカは名簿を教卓に置く。
パカ「続いて第2ステージの
選出になります 」
「ちょっと!まだ説明が…」
パカ「第2ステージ「取り換え
こっくりさん」実況者数は 4名」
パカはどこからか
クジ引き箱を取り出す。
パカ「こちらにワタクシが
夜なべ して作ったクジがございます」
「パカさんマークを
引き当てたかたが…」
パカ「おや リタイアを ご所望で?」
その時、教室内が薄暗くなり
プロジェクターによって
ある映像が映された。
パカ「その場合失格とみなし」
「こちらゲノムタワー
最下層にあります「白の部屋」へ
強制収監いたします」
映像には今説明されている
「ゲノムタワー」というものが映った。
パカ「ほかの皆様が
一億ビューを達成するまで
ずっとひとり」
「4畳半の密室で
延々待機となりますが」
場面が変わり次は白の部屋に
閉じ込められた人 が 頭を抱え
隅に背を持たれていた。
パカ「こちらは過去
貴方がたと同じように
ダダをこねたお方です」
「実況を放棄した彼は
ずっとこの部屋で 仲間のクリアを
待っておりました」
パカは 今流れている
白の部屋の映像を 早送りにし始めた。
パカ「すでに彼らが達成に
失敗したこともつゆ知らず」
「来るはずもない迎えをずっと」
「ずっと」
気がつけば、その早送りされた
白の部屋の映像には
さっきの人らしき物の
骸骨が映っていた…。
…周りは明らかに凍りつき
怯えきっていた。私も例外ではない。
カイコク「おう」
「さすがにちょっと」
「悪趣味じゃねェかい…」
いつの間にか、鬼ヶ崎さん
駆堂さん 忍霧さん 以上の三名が
パカを床に押さえつけていた。
ザクロ「作り物の可能性は?」
アンヤ「気色わりーもん
見せやがって」
「この人殺し野郎」
パカ「お望みならばご案内しますよ」
「ご遺体は 運び出しましたが
部屋のリフォームは 済んでおりません」
「まだ十分「痕跡」が
残って おりましょう」
アンヤ「…てめ」
「貴方がたは すみやかに」
ご自分が今 置かれている状況を」
パカ「怪我や死亡 当然ございます」
「なにせ リアル実況ですから」
「 現実世界に リトライや
セーブが あるとお思いで? 」
アカツキ「パカさん」
声がした方をみれば
入出さんが 手を上げていた。
アカツキ「それって
立候補アリですか?」
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