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部屋に入ってすぐ、リネさんがお茶を入れてくれた。

私も哲人もさっき出されたお茶は飲んでいなかったが、そろそろ喉も渇いてきた。

どうしようかな、と思っていたら哲人が小声で魔法を使った。

「<自分と邪栄と勇人、飲食による攻撃全無効、飲食による状態異常全無効>」

おぉ。

これでお腹壊さなくて済むね。

「どれくらい持つか分からないから、とりあえず食事ごとにするよ」

「ん」

こっそり会話して、ソファに身を沈めた。

私の横にクッションを置いて、それを枕に勇人をそっと寝かせてみた。

起きた。

「んにゃーあ、やああーん、あーん」

「はいはい」

抱っこしたら泣き止んだ。

現金なヤツめ、可愛いな。

「お可愛らしいですね。おいくつですか?」

リネさんが、哲人に聞いた。

「そろそろ7ヶ月になります。可愛いでしょう」

ちょっと哲人、勇人を見てる顔が変態になってるよ。

リネさんがちょっと引いてるじゃないか。

「ええ、可愛い盛りですね。隣の寝室にはお子様用のベビーベッドをご用意しておりますので、お使いください」

おぉ、引き攣ってるけど笑顔を崩さず答えている。

さすがプロですね。

そしてなんと、リビングと寝室の2間続きの部屋を用意してくれていたようだ。

「あぁ、ベビーベッドは使わないので必要ありませんよ」

「それでは、お下げしておきますね。お食事は、こちらに運ばせていただきますので、それまでおくつろぎください」

「ありがとうございます」

「いえ、私は部屋付きですので、当然のことです」


そういえば、勇人のおむつとかおやつとか離乳食とかどうしよう。

布おむつだとめんどくさいけど、なんとかできるか。

離乳食はまだ朝晩の2回くらい。

飲み物はストローじゃないと飲めないから、困るな……スプーンで一口ずつか。

あと、洗濯はどうなるのかな?

ていうか、私たちの着替えとかは用意してもらえるかな。

いつまでも寝間着って辛いし、下着もどうすればいいのやら。

これはリネさんに相談したらいいのかな。

「あの、リネさん」

「なんでしょう」

あ、返事した。

表情と声が冷たいのは気のせいかな?

「すみません、この子のおむつや離乳食についてなんですが」

「こちらの布をお使いください。使い方は分かりますか?」

ちょっと古いタイプの布おむつっぽい。

これなら使えるかな。

「多分大丈夫です。ありがとうございます」

「離乳食ですが、ご指定いただければご用意いたします」

「そうですね……お米ってありますか?」

「米でございますか。南の国の特産品ですが、少しならございます」

「では、水が多めのおかゆをお願いします。ほんの少しだけ塩で味付けをして、長く炊いて舌でつぶせるくらいの柔らかさで。量は、お米がティースプーン1杯程度で充分です」

「……かしこまりました」

めんどくさそうな顔だな。

仕方ないでしょう、ここにキッチンがないのが悪い。

「それから、私たちの着替えや洗濯のことはリネさんに相談すればいいですか?」

「用意してございます。お着替えは寝室の箪笥に。洗濯物はバスルームの籠に入れていただければ、次の日には洗ってお返しいたします」

淡々と述べてるけど返事はきちんと返ってくる。

なんかさっき哲人とやりとりしてたときよりも、こっちの方が平坦だけど生き生きしてる感じがする。

要するに、哲人に対しては猫を被ってるというか、頑張って媚を売ってるというか……?

「分かりました。知らないことが多いのでお手数かけますが、お願いします」

「いえ、これが仕事ですので。では、キッチンに指示を出してまいります」

さっと頭を下げて、部屋を出て行った。

あれ、哲人が固まってる。

「どうしたの?」

「なんか、喧嘩してるみたいな会話だった……」

「そうかな……なんであんなに私に対しては冷たいのかしら」

「俺には若干にこやかだったのにね」

「確かに。私に喧嘩売りたいのかも」

「それはやめて欲しい、切実に」

「どういう意味?」

「だっだ!だーだ、だっだー!」

うん、勇人が応援してくれるなら、お母さんはだいたいの喧嘩に勝てる気がするよ。


寝室の奥には、トイレと、シャワーだけのバスルームが付いていた。

文明の程度がまだよく分からないけど、贅沢な部屋なんじゃないだろうか。

個人的には、湯船に浸かりたいけれど。

寝室の箪笥には、1段目に哲人のものらしい服が2セット、2段目に私のものが2セット、3段目に勇人のものが4セットと布おむつの替えがたくさん入っていた。

下着や服は、ゴムじゃなくて紐でサイズ調整するタイプだ。

勇人の着替えがちょっとめんどくさいけど、贅沢は言えないよね。

ベッドは、セミダブルくらいのものが2つ。

離れていたので哲人がくっつけようとしたが、作り付けらしくて動かなかった。

落ち込んでめんどくさかった。

とにかく、みんな寝間着から服に着替えさせてもらう。

首元がゆったりしたシャツと、哲人はズボン、私はロングスカート。

勇人の服もシャツとズボンだけど、ちょっと大きくて裾を折っている。

靴まで用意してくれていて助かった。

今まで裸足だったものね。

下着も一応あった。

ただ、ブラも伸びない生地だから授乳するときには不便だ。

息子(0歳)は召喚勇者、夫は巻き込まれ系チート賢者、そして私が魔王様

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