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たぶんぬしさんはかみさまなんですね
椅子に座るらっだぁは、さっきからずっとPCをいじっていた。
返信、調整、明日のスケジュール
──忙しいのは分かってる。
でも、
なるせはずっと、視線だけをらっだぁに送っていた。
「……はあ…」
ソファで体育座りをして、わざとらしく溜め息をつく。
本当は気づかれたいのに。 なんでもない顔をしているのがいちばんむず痒い。
「今日も忙しいんだ、流石だわ。人気者は」
ちょっとだけ、拗ねるような口調。
でもらっだぁは、スマホを見ながら返事をする。
「それな〜、ほんと色々来ちゃってさ〜」
「……らっだぁって皮肉とか、気づかなそうだよね、笑」
「え、…今のも皮肉なの?? 俺それ、視聴者にも言われたんよね…」
「ね…笑」
(……今じゃない。今は邪魔しちゃいけないってのは分かってるけど…)
なるせの中で、“今くらい、こっち向いてよ”って気持ちが膨らんでいく。
──でも、
(………もう少しぐらい耐えれる…)
そう自分に暗示をかけるように、息を深く、でも、気づかれないように、静かに吐く。
その、3分後。
なるせはちらりと、また、らっだぁを見た。
そして、そのまた、5分後。
枕を抱えてうずくまりながら、また目だけで追う。
なのにらっだぁは、一向に気づかない。
「……ばーか…」
小さく、口の中で呟いた。
そしたら──
「……ん?笑」
言った瞬間、らっだぁが顔を上げてきた。
「なんか言った今?」
「……気のせいじゃね」
「笑……あ、もしかして、“らっだぁ かっこいい”って言った?」
「……言ってねぇよ……っ」
「そっかぁ〜、なるせがかまって欲しそ〜に呼んだ気がしたんだけどな〜 」
なるせは慌てて顔を背けた。
「べ、別に。なんも言ってねぇって…!」
「うわ、図星やん笑」
そう言いながら、らっだぁがゆっくり近づいてきて、 ソファの隣に座り込んで、
なるせの頬を、指でツンとつつく。
「“かまってほしい”って言えたら、もっと可愛がってあげたのに笑」
一瞬で顔が熱くなった。
「別に、いいし……」
「ふ〜ん。…じゃあ、言えたら、今すぐ抱きしめる。言えなかったら、今日はナシね」
俺は揺さぶられた。
言いたくない。でも、言わないと──このもどかしさは終わらない。
なるせはぐっと唇を噛んで、 目は伏せたまま、ぎゅっと手を強く握った。
(小声)
「……か、かまえ……」
言った瞬間、喉が熱くなった。
顔も耳も真っ赤で、目の奥がちょっと滲む。
悔しいくらい、恥ずかしかった。
でも──
(からかうように)
「笑…なんて?? 声が小さい!笑」
「…っ………かまって!!!」
「笑笑、…よく言えました。えらい。」
言い終わると同時に、腕が伸びてきて、
そっとなるせの身体を引き寄せる。
優しく包まれて、胸の奥がふっと緩んだ。
「……最初っからかまえよ…まじで。…性格悪いわ、お前…」
「いや、なるせが可愛すぎるのが悪くない?笑」
そのまま抱きしめられて、
なるせはぎゅっとしがみついて、目をぎゅっと閉じた。