テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
勇斗は最近、気づいたことがある。
仁人は。
たぶん、俺のことが好きだ。
いや。
たぶん、ではない。
かなり好きだと思う。
本人から聞いたわけではない。
告白されたわけでもない。
でも、分かる。
そういうものだ。
楽屋。
ソファでスマートフォンを見ていた仁人の隣に座り、勇斗はその画面を覗き込んだ。
すぐに仁人が身体を引く。
「近い近い」
「何見てんの?」
さらに覗こうとすると、また逃げる。
とうとうソファの端まで行った仁人が、じろりと勇斗を睨んだ。
「何でついてくんの?」
少し顔が赤い。
なるほど。
近くにいると緊張するらしい。
好きな男の顔が、急に近づいたのだ。
仕方ない。
勇斗は離れてあげた。
「……何ニヤニヤしてんの?」
「別に」
「気持ち悪」
照れ隠しまで分かりやすい。
昼。
自販機へ行っていた仁人が戻ってくると、勇斗の前に飲み物を置いた。
いつも勇斗が選ぶものだった。
「勇斗、これ」
「俺の?」
「うん。自販機行ったついでに買ってきた」
ついで。
なるほど。
わざわざそこを強調するあたり、相当照れている。
自販機の前で勇斗の顔を思い浮かべたのだろう。
これ好きだったな。
買っていったら喜ぶかな。
そんなところだ。
「ありがと」
「ん」
仁人はそれだけ言って、自分の席へ戻った。
勇斗は少し笑った。
可愛いところもある。
「……何ニヤニヤしてんの?」
「何でもない」
「変なの」
好きな相手に喜ばれて恥ずかしいらしい。
勇斗はそういうことにしておいた。
午後。
仁人は柔太郎と舜太と、明日食事へ行く約束をしていた。
少し離れたところで聞いていると、仁人がこちらを見る。
目が合う。
すぐに逸らす。
しばらくして。
また見る。
勇斗は静かに納得した。
なるほど。
嫉妬してほしいらしい。
なかなか古典的な手を使う。
「明日、三人で行くの?」
「うん」
「楽しんできな」
「うん」
仁人は普通に頷いた。
けれど少しすると、またこちらを見る。
やっぱり。
それだけでは物足りないらしい。
残念ながら、その手には乗らない。
もう仁人の気持ちには気づいている。
余裕が違う。
「……何その顔」
「何が?」
「なんか腹立つ」
仁人が睨んだ。
勇斗は確信した。
嫉妬してくれなくて不満なのだ。
分かりやすい。
その日の撮影。
勇斗と仁人は隣だった。
もう少し寄るように言われ、勇斗は仁人の腰へ腕を回した。
一瞬。
仁人の身体が固まる。
耳も少し赤い。
やっぱり。
好きな男に腰を抱かれたら、そりゃ緊張する。
勇斗は仁人を気遣って、少しだけ腕を緩めた。
すると仁人が小さくこちらを見る。
「撮影中なんだから、ちゃんとしてよ」
勇斗はもう一度、仁人の腰を抱いた。
「これでいい?」
「うん」
なるほど。
本当は離れてほしくなかったらしい。
勇斗は納得した。
やっぱり、相当だ。
ここまで自分のことを好きでいるとは思わなかった。
近づけば赤くなる。
飲み物を買ってくる。
他の男と出かける話をしながら、こちらの反応を確認する。
腰を抱けば緊張するくせに、離れれば戻せと言う。
ここまで来ると。
気づいてしまった勇斗にも、多少の責任がある気がしてきた。
仁人が自分から言えるようになるまで。
少しくらい。
優しくしてあげてもいいかもしれない。
「……何でまたニヤニヤしてんの?」
仁人が怪訝そうに勇斗を見る。
「何でもない」
「今日ずっと変だよ」
「そう?」
「うん」
勇斗は笑った。
照れ隠しだ。
たぶん。
いや。
きっと。
そして翌日から。
勇斗は仁人に、少しだけ優しくすることにした。
もちろん。
仁人が喜ぶと思ったからである。
595
nanana

92
#snjn
y

827
コメント
2件

snさんが自惚れてるだけの可能性あり。
第1話からすごく面白かったです!勇斗が「仁人は俺のことが好き」って確信してるんだけど、その根拠が全部「自分に都合のいい解釈」なのが笑える。照れてる、嫉妬してる、照れ隠し…って、ほんとにそうなのかな?って思わずツッコミたくなる。仁人の「気持ち悪」「腹立つ」「変なの」の言い分のほうが正しそうな気もする(笑)。この二人の認識のズレがたまらないし、続きが読みたい!