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『もしもし』
「もしもーし」
また、掛かってきた。
三日前くらいに急に掛かってきた電話を皮切りに、まふゆは寝る前に電話を掛けてくるようになった。みんなで通話してるからいらないのでは、と言ったら微妙な反応をされて流された。迷惑だと感じている訳ではないので、別にいいのだが。
ニーゴの活動もあるし、二人から疑いの目で見られることになるだろう。まふゆが抜けた後に私も抜け、それから電話する。休みの日なんかは私が寝るまで、という名目で電話を繫げるのだが、平日の日はキリがよくなったらなので、また作業に戻らなければならない。追求されることは避けたいが……。
と言ってもまだ始まって三日くらいだし、電話しない日だってあるだろう。あんまり杞憂になることもない。そう思って少し伸びをして、話し掛ける。
「まふゆは今何してるの?」
『ベッドの中。もう寝るだけ』
「一緒一緒。ていうか学校もあるのに夜更ししちゃっていいの?」
『そうだね。眠いし、今日はあんまり話せないかも』
「そっか、わかった」
眠いのに掛けてくるんだ。まふゆも可愛いやつだな。
「予備校も部活もニーゴの活動も、色々あるからね。大変でしょ」
『そうだね。絵名と違って大変』
「今眠い?」
『眠いけど……』
「すらすらと言葉が出てきて私をさりげなく貶したから、眠くないのかと……最近は優しい言葉ばかりだったし」
そんな意図はないんだろうか。もしかして本心。瑞希だったら少しは怒りやすいけど、どうしてかまふゆはかばってしまう。眠いのかもしれない。
そういえば昔はなんだかんだまふゆに棘のある言葉を言われていたことを思い出した。そうか、久しぶりだったから、ちょっと驚いたんだ。
「ふぁ……ちょっと眠いかも」
『絵名も寝ちゃう?』
「ベッドに入るんじゃなかったなあ。もう寝たいかも」
『…………そういえば、あくびってうつるらしいよ』
「へえ、そうなんだ」
『そう。だから私もあくびしちゃった、絵名のがうつったね』
「も〜なにそれ」
どうしよう、本格的に眠くなってきたかも。あんまりまふゆの言ってることが理解できなくなってきた。
「まふゆ……おやすみ」
『うん、おやすみ』
「また、明日……」
目を閉じたら、ゆっくりと意識が飛んでいく。
少し名残惜しいけど、どうせまた明日も話すのだと思ったら、簡単に眠ることができた。