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「琴里〜」


翌朝、学校に着いた私が教室に入ると、クラスメイトで仲良しな麻紀まき紀子のりこが元気よく駆けてくる。


「麻紀、紀子おはよ。どーしたの?」

「今日放課後カラオケ行こうよ! 新田にったの奢りだよ!」

「せっかくだけど、私はパス」

「えー? 琴里、最近付き合い悪くない?」

「まさか、男?」


カラオケの誘いを断ると、麻紀と紀子は少しムッとしながら口々に言ってくる。


「まぁ、そんなとこ。だからパスね」

「琴里は本当モテるよね、羨ましい」

「今度はいくつの人? 大学生? それとも同級生?」

「馬鹿ね、琴里の事だもん、大学生か社会人に決まってるでしょ」

「そっか、そうだよねぇ」


私をよそに、二人は勝手にどんどん盛り上がっていく。


私は、友人たちに嘘をついている。


それというのも高校に入って出来た友人たちは皆男遊びの激しいギャルばかりで、最初は話を合わせる為についた小さな嘘が今ではすごく大きくなっていて、気付けば私は恋愛経験豊富なキャラという位置づけになっていた。


「で? いくつなの?」

「それは………」


今までは嘘だったけど、今回は本当に出来た彼氏。


本当なら自慢したい。


けど、律は三十歳。


友人たちの言う社会人の彼氏として相応しい年齢はせいぜい二十代前半。


律の年齢を言ったらきっと、『おじさん』って馬鹿にされるのは分かりきっていた。


大好きな律を馬鹿にされる事が耐えられない私は、「……に、二十代前半………」と更に嘘を重ねてしまう。


友人たちに嘘をつくのは少しだけ心苦しいけど、私にとって高校の友人は皆上辺だけの付き合い。


地味で目立たなかった中学までの自分を変えたくて高校デビューした私にとって、高校では仲間外れにされないようについていくので精一杯なのだ。



放課後、帰り支度をしていた私に、


「琴里、ちょっといいか?」


少し遠慮がちに声を掛けてきたのはクラスメイトの新田。


「何? カラオケなら私はパスしたよ?」

「いや……うん、それは聞いたけど、何つーか、俺、琴里に来て欲しくて麻紀とか紀子も誘ったんだ……。だからさ、少しでもいいから来れねえかな?」

「……悪いけど、予定あるから」


まだ何か言いたげな新田を置いて、私は逃げるように教室を出た。


「琴里、待てよ」


だけど、諦めの悪い新田は私を追いかけてくる。


彼は麻紀たちと一緒につるんでいる仲間の一人。


律に出会うまでは私も一緒になって毎日みんなで街をぶらついたり馬鹿騒ぎしたりしてたけど、正直心の底から楽しんだ事はない。


しかも、新田は私に気があるみたいだって麻紀たちが言ってたけど、好みじゃないし、そもそも眼中に無かった。


それなのに、律と出逢う少し前、偶然二人きりになった時があって、告白すらされてなかったのに、いきなりキスをされてしまい、それから『どうでもいい』が『大嫌い』になった。


だって、私のファーストキスは好きでもない男に奪われてしまったのだ。

キスだけで誤魔化さないで。好きってちゃんと、言ってよね。【完】

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