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「……なんかすごい言いづらいんだけどさ」
2人でひとしきり泣いたあといっちゃんが口を開いた。
「俺さ、すっげえ麦に誤解させてるかもしんねえ」
えっなに?今更、やっぱお前嫌いだわとか言われたら耐えられないんだけど。
「俺あの日スタジオ出てった時舌打ちしたじゃねえか…」
だからごめんって。ちょっとは手加減して欲しいというか。
「あれ麦に向かって舌打ちしたわけじゃねえんだわ…」
「……ん?」
「いつきくんはむぎちゃんのこと抱いてたおじさん達に舌打ちしたんですよね〜、いつきくんこわあい、えへへ」
「なにそれ知らねえ。俺1番先に出ていっちゃったからその後のこと知らねえ。聞きたかったなあ、いつきの舌打ち。」
「滅多に舌打ちしないもんね、いっちゃん」
「しないだろ普通…葵はするかもな。柚もたまに。」
「しません。断じて。」
柚ちゃんがしてません、とはっきり言った。いつも柔らかな物腰の柚ちゃんが遠回しにせずストレートに、しかもオブラートに包みもせず物事をはっきりと言うのは割と珍しいことで相当不名誉に感じたんだろうな、と思う。 いやでも確かに葵に負けず劣らず舌打ちするぞ、柚ちゃんも。
「で?…お前ら麦茶まだ好き?」
バンドまた、やる気ある?
今その話題を出すのは勇気がいるように思われた。みんながやっと素直に話せたかと思ったが、触れてはいけないそれに触れると一気に熱は覚めると。またばらばらに逆戻りだ。しかしいっちゃんは今日勇気の安売りなのか特売セールなのか勇敢な一面を沢山見せる。
「ったりめーだろ。俺はずっと待ってたんだぜ」
「そうですよ。どこぞの誰かさんが決めつけて怒ってたので僕は気を使って何もできなかったんです」
「俺ももちろんだぜ。あとは麦だな。」
「まだ好きだ…当たり前だろ、…でもいいのかよ、こんな最低なヤツ。」
また麦茶同好会として活動したい。しずえだってそう願ってくれてるし、もちろん俺だってそうだ。
「だからそうやって自分が自分がって考えを自分の中で解決させてんだよ。…麦茶同好会にとってお前は必要だって言ってんだ。さっさと来いよ」
「そうですよ、むぎちゃん以上にいいベーシストは知りません。歌は僕達も負けてないって思いたいですけどね。少なくともむぎちゃんは僕が麦茶同好会に必要だと思うんです。」
「リズム隊だろ?俺たち以上にこいつらのテンポの癖を知り尽くしてるリズム隊はいねえよ。麦、ほら、こっち。今日はお前、よく泣くなあ。」
「ありがとう、ありがとう…ただいま」
みんなで意思の確認。今は幸せで泣いてんだよ。
「じゃあ、あれやるか。」
「久しぶりですね」
「麦がいなきゃ始まんねえだろ?ほらこっち来い。」