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「……若井……」
嗚咽混じりの声を胸に押し当てながら、
まだ涙は止まらない。
若井の手がそっと髪を撫で、
肩を抱きしめる力が少し強くなる。
「……もう、泣くなよ……俺の前以外で」
その声が胸に響く。
でも涙は止まらない。
心の奥が震えて、言葉にできない
寂しさや不安が押し寄せる。
突然、若井の唇が俺の額に、そして唇に触れた。
「……元貴……」
軽く息をかけるその温もりに、涙はますますあふれた。
「ん……ん、……」
涙で声にならないまま、ただ胸に顔を埋める。
若井は少し笑ったように聞こえる声で、でも優しく囁く。
「泣きたいなら泣けばいい……俺がそばにいるから」
キスは短く、でも心の奥まで届くような感触だった。
俺は涙を流し続けながら、甘えるように腕にしがみつく。
「……離さないで……」
小さく震える声で訴えると、若井はただ黙って抱きしめ返す。
部室の静寂の中で、二人だけの時間がゆっくりと流れる。
泣き止めないまま、俺は若井の胸の中で震え、甘え続けた。
その背中の温もりと鼓動が、今の俺の全てを包み込む。
泣くことさえ許されるような、優しい時間――。
涙はまだ止まらない。胸の奥がぎゅうっと痛む。
声にならない嗚咽だけが、部室の静けさに響く。
若井はただ抱きしめたまま、
肩に手を回し、優しく背中をさすってくれる。
「……元貴、泣くなって言ったけどさ
……泣きたいなら、もっと泣いていい」
その声は、どこか柔らかく、でも強く俺の胸に届いた。
「……でも……ごめん……弱くて……」
泣きながら、胸に顔を押し付ける。
若井は軽く笑ったように息を漏らす。
「弱いなんて思わないよ。
俺は元貴の全部を見てるんだから」
その言葉に、胸の奥が少しだけ熱くなる。
「……若井……」
小さく呼ぶ声に、若井は唇を軽く触れさせる。
「……俺は、元貴が泣いてる姿も
大事だと思ってる」
その一言で、泣くことへの
後ろめたさが少しだけ薄れる。
涙をこらえるんじゃなく、
甘えてもいいんだ――そう思える温もりがある。
「……ずっと、俺のそばにいて……」
言葉が震える。
涙はまだ止まらないけれど、心は少し落ち着いてきた。
若井は黙って、ただ抱きしめ返してくれる。
「わかった……ずっと一緒だよ、元貴」
胸の中で、若井の鼓動を感じながら。
でもその涙は、寂しさや不安だけじゃなく、
少しだけ安心も混ざっていた。
誰かに全部を受け止めてもらえるって、
こんなに温かいんだ――そう思った。