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泣き続けたせいで目は腫れ、

鼻も少し赤くなっている。


それでも、若井の胸に顔を

押し付けたまま、呼吸は少し落ち着いてきた。


「……もう大丈夫かな」


震える声で呟くと、若井は軽く笑った。


「うん、もう大丈夫だろ」


腕の中で微かに安心していると、

若井がそっと手を俺の頬に添える。


「……元貴、可愛いな」


言葉にドキッとして顔を上げると、

若井の赤髪が光を受けて鮮やかに見えた。


目が合うだけで、胸の奥が熱くなる。


「……若井……」


小さな声が漏れる。


若井はすぐに唇を近づけ、

今度は軽くキスをしてくれる。


ほんの一瞬、

でもその温もりと優しさが全身に染み渡る。


「……ずっと一緒にいてやるよ」


その言葉に、自然と体が近づく。


肩を寄せ、頭を若井の胸に預ける。

腕の中で、静かに安堵の吐息を漏らす。


若井は微笑みながら

俺の背中をさすり、時折軽く髪に触れる。


「俺はな、元貴の全部が好きなんだ。

喜ぶ顔も、泣きそうな瞳も、俺を呼ぶ声も」


胸がきゅんと熱くなる。


言葉だけじゃなく、その腕の温もり、

息遣い、心臓の音まで

すべてが愛されている実感に変わる。


「……僕も……若井が……好き……」


泣きそうになりながら言うと、

若井はにっこり笑った。


「おう、だから俺もな」


そのまましばらく、部室の静けさの中で

二人きりの時間が流れる。


外の夜風が窓から入り、ギターや譜面の匂いが

混ざる独特の空間で、何も考えず、ただ一緒にいるだけ。


心が落ち着いてくると、自然と笑みも浮かぶ。


涙でぐちゃぐちゃの顔でも、若井は優しく包んでくれる。


泣いたことで、距離が一層近くなったような気がした。


「……元貴」


若井が名前を呼ぶ。


「ん?」


顔を上げると、

若井は少し照れたように笑い、手を差し出す。


「手、つなごうぜ」


その一言で、また胸が高鳴る。


手を重ねるだけで、言葉はいらない。


今はただ、互いの温もりを感じていたい

――それだけで充分だった。


夜の校舎、静かな部室。


ギターの音も、フルートの余韻もないけれど、

二人の間に流れる時間は、何よりも贅沢で、

温かいものだった。

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