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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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翌朝。俺たちの姿は第一防壁の入り口にあった。

「凄いな。まるで洞窟だな」

第一防壁はどうやって作ったのか、洞窟のようになっている。つまりそこに小さな岩山があるのだ。

「あそこから入るんだな」

「はい。入り口は狭いですが、中は広いようなので簡単にすれ違えるようです」

「よし。じゃあ俺を先頭にミラン、聖奈、エリーの順番で行くぞ。もし、魔物に挟まれたら聖奈とエリーの位置を入れ替えるんだ」

昨日話し合った布陣でダンジョン内へ向かう。

入り口は全然混んでいない。聞いていた通り、ダンジョンに昼も夜もないようだ。そのお陰で、二万人もの冒険者が使用しても混むことはない。24時間営業だ!

唯一混む可能性があるのは、入り口付近にある買取所だ。



第一防壁の中に入ると、そこは薄暗かった。そして先に明かりが見える。あれがダンジョンの入り口なのだろう。

ダンジョンの不思議な灯りが漏れている為、迷うことはない。

まるで誘蛾灯に誘われる蛾のように冒険者達が光に吸い込まれて行く。

俺達も例に漏れず。



「ここが2階層か…まるで整備された森のようだな」

俺の視界一杯に、森の景色が……ここ洞窟内だよね?

「不思議です。天井はかなり高い所にあるはずですが、見えませんし」

「サングラスしたら見えるのかな?」

空は白い灯りに包まれていて、天井を目視できない。周りは平坦な森のようだ。ようだっていうか、それにしか見えん。

魔力視マジックアイ魔力波マジックウェーブ

いつもの索敵コンビ魔法を使い、周囲の状況の把握に努める。

後ろは階段だ。

簡単に言えば、ダンジョンを逆走すれば必ずここへ辿り着けるように、ここだけが狭くなっている。

「200m先までは反応はないが、それより先にはたくさんあるぞ」

「戦闘は避けられないみたいだから、それも情報通りだね。じゃあ行こう?」

「はい」

「ふー。ふー」

エリー。慣れるんだぞ。その内慣れると思うから。

少し緊張しているエリーを後方布陣して、俺達は慎重に進んでいった。







「右前方に二体の魔力がある」

俺がみんなに伝える。

「見えました。150mほど先です。右の敵は任せてください」

「見えたよ。左は私だね」

画像


ミランは裸眼で、聖奈さんはスコープで捕捉した。

今日は二体までなら、最初の攻撃は2人に任せることにしている。

聖奈→ミラン→エリー→俺の順番に戦闘に参加だ。俺が最後なのは、撃ち漏らせば必ず俺が相手をするからだ。

そしてエリーは、暫くは銃ではなく魔法で戦闘に参加してもらう。

まだまだ先のことだが、銃が効かない相手には魔法を使うしかない。それに慣れてもらうためだ。


パァンッパァンッ

森に銃声が鳴り響いた。かなり木と木の間隔が空いているので、遠くまで狙撃ができる。俺が使う対物ライフルであれば、有効射程はこの階層の殆どだと思う。もちろん木がなければの話だ。

他のメンバーが使っているライフルもそこそこの距離は射程があるはずだ。異世界で使用すれば、最長距離の攻撃手段になるくらいにはな。

「やりました。ストライクです」

「やったね!所詮ゴブなど私達四天王からすれば雑魚なのだよ」

ごめん聖奈さん。何の引用かわからんわ。

ミランは俺が教えた言葉を意味もわからず使っている風だな。

「ナイスヘッドショット。2人ともこの距離なら外さないな」

「凄いです!私も魔法をぶちかましたいです!」

エリー。使い方は間違ってないけど、汚い言葉だからやめなさい。

俺達は問題なくこの階層フィールドを突破した。唯一の想定外と言えば……


「ありました!」

「そうか。まぁ次からは見つからなければ諦めよう」

魔石を見失うことだった。

ゴブリンの魔石は小さく、また複数のゴブリンに遭遇すれば必然的にエリーの魔法が使われる。エリーには中級、上級魔法を満遍なく使ってもらっているので、魔石ごと吹き飛ばしてしまうことが多々あった。

なまじ遠距離なので、見つけるのに苦労する。

ちなみにリポップは魔力波で判明した。倒したところとは場所は違うが、反応がいきなり現れたのだ。

そうじゃないと2万人の冒険者で一瞬で狩り尽くしてしまうからな。





「雰囲気が変わったね」

「そうだな。森は森だけど、木の枝がかなり高い位置にあるし、木と木の間隔も広がったな」

どうやらオークの住みやすいエリア…フィールドに来たようだな。

二層では人とかなりの頻度ですれ違ったが、奥へ進むにつれて頻度が減ってきた。ここは森だから無限のルートが存在してるからな。

奥の方が入り口より広ければ、進む角度が一度違うだけで二度と会うことはない。

「どうしますか?このまま進みますか?」

「一当てしませんか?」

ミランが聞いてきて、エリーが提案してきた。

「一当てしてみよう。問題無ければ帰ろう。問題があれば改善してから帰ろう」

「そうだね。そうしよう?」

「「はい!」」

聖参謀が話を纏め、聖奈総督が決定を下し、我が隊のアイドル達がいい返事をする。

完璧や……






「いました」

ちょっと待て。俺が言う前に見つけないでくれないか?

「左前方220m先です」

木が少ないし敵がゴブリンより大きいから見つけやすい。もはや俺がいらない人に……

もちろん俺にはまだ見えない。

「じゃあ撃つね」

画像


パァンッ

「お見事。やはり一撃ですね」

うん。俺はホントにいらんな。まぁもう少ししたら活躍するからいいよ?

オークを問題なく討伐した所で、俺達は帰還することにした。

今日はお試しだ。初日にみんなの緊張がとれて良かったんじゃないか?

お前は戦闘に参加したのかって?








「お疲れ様〜!今日はみんな活躍したね!特にエリーちゃんの魔法は凄いね!セイくんと違ってもう暗唱出来てるし」

宿に戻り、俺は転移で荷運びを行い、聖奈さんはリゴルドーの家で料理、エリー&ミランはそれぞれの店に。

そしてご飯が出来たので、一同が会して夕食に。

「そうなんです?確かに覚えにくいですが、無理というほどではないですっ!」

くそっ

「ミランちゃんも索敵が凄いね!3階層だとセイくんより早い時があるもんね!」

くそっ

「セイさんは私が見える位置まで来てから教えてくれているので、そんなことはないですよ」

さすリダ。ちゃんと部下の気遣いに気付いてくれる。それに比べて聖奈さんは……

「セイくんは暇でしかたなかったでしょ?」

くそっ

「いや、俺は最後の砦だから、いいんだ」

「そう?じゃあこれからも今日と同じでよろしくね。まだまだセイくんは戦闘お預けだけどごめんね」

そう。俺は一度も戦っていない。ダンジョンは階層主フィールドボスやエリアボスと言われるレアキャラに出会わなければ、基本は三体以下の敵しか現れない。

エリアボスは基本4体以上の集団で現れるみたいだ。もしそれ以下の数で出会えば、それは他の冒険者に仲間を討伐されて逃げている最中か、逆に仲間は犠牲になったが冒険者を倒したかだ。

「まぁダンジョンが新鮮だからいいよ。次からは泊まりがけだしな」

そう。明日からはダンジョンに泊まり込む。これは何もおかしなことではない。浅い階層ではかなり珍しいが、10階層以上潜るときには大抵泊りがけのようだ。

「そうだね。もし、明日の朝が成功したら違うけどね」

聖奈さんの意味深な言葉を後に、俺達は地球へと向かった。

ミランとエリーはこっちでお留守番だ。



地球には貿易のために帰った。異世界のモノを会社に、会社のモノを異世界へ。

それにしても、リゴルドーの家にあるドリトニーの遺産(死んでない)は、いつか盗まれそうだな…財宝に対してセキュリティのレベルの低さよ。




しっかり睡眠を取った翌朝、俺達はダンジョンに行かず、宿の部屋にいた。

「今日でこの部屋ともお別れだね」

「いや、言い方。別に最後かわからんだろ?」

俺達はダンジョンに泊まり込むので、宿を引き払う。まぁ元々荷物もないし、寝るだけの場所だ。

「よし。宿の人にも伝えたし、試すか」

「うん!これが出来たら、もう宿どころかこの街とはおさらばだね!」

俺が紡ぐ言葉はもちろん・・・

『テレポート』




今日もマイナスイオンが凄いな。

「成功です!」

「これでお泊まりは無くなりましたね」

昨日のオークの森に転移した。俺は出来ると思っていなかった……

普通こういうのは、ゲームでもアニメでも制約という名の謎の力で出来なくなるもんだろっ!

ありがとうっ!

「まさか出来ちゃうなんてね」

聖奈さんも同じ気持ちのようだ。

昨日の夜にエリーが転移魔法を使わないのかと言ったことが発端だが、俺と聖奈さんはこういうのはズルせずにクリアしたい派だから触れてこなかったのだ。

しかし、2人が気付いたのなら試さない理由には弱い。


そして、今に至る。


「これは私達が初めてダンジョン攻略しちゃう奴だよね?」

「いや、それは無理だろ?ドラゴンとか出てきたら間違いなく即死だぞ?」

俺達は貧弱だからな。

「じゃあ強くなるために、頑張ろっか!」

「「はいっ!」」



「…」

俺は何をすることもなく、3階層を突破した。


続く4階層は草原だった。


「見通しは良いけど足元は悪いな」

「そうですね。石でもあれば転びそうです」

草原を見た俺の感想に、ミランが同意を示してくれた。

この階層は、膝丈くらいの草が一面にびっしりと敷き詰められていて、足元すら確認しづらい。

「たしかワイルドウルフっていう魔物だったかな?」

「そうです。狼さんです」

狼さん…俺から見えるのは、そんなに可愛らしい見た目じゃないぞ?

「とりあえずやっちゃうね!」

パァンッ

「なぁ。瞬殺が過ぎないか?」

「良いんだよ。これはバトルモノじゃないんだから」

ワイルドウルフは魔石へと変わった。

「いや、どうやらバトルモノになりそうだぞ?」

「どうして?」

俺の言葉に聖奈さんが疑問を持つが、答える時間はあまり残されていない。

「20くらいの反応がこちらに向かってきているからだ。どうやら音か硝煙の匂いに反応したようだな」

距離はばらつきがあるが、こちらへとそこそこの速さで向かってきている。

「とりあえずみんなで迎撃だな。俺はアイスバーンを唱えるから後は任せた」

「はい!私はウインドカッターにするですっ!」

エリーはやはり風魔法と相性がいいのか、ウインドカッターの扱いが一番うまい。俺には出来ない連発が出来るし……


何はともあれ、漸く出番だ!





〓〓〓〓〓〓〓〓小話〓〓〓〓〓〓〓〓


聖奈「索敵はミランちゃんだね!」


ミラン「魔法はエリーさんですね」


エリー「初撃はセーナさんです!」


女性三人「いらない人が『いるね』います」


聖「こうして俺は捨てられたとさ。なんでやねん!」


ミラン「これがコントというものですか?」


エリー「よくわかりません」


聖奈「ちゃんとオチがあるから成立してるよ!やったね!」


聖「コントに現実を混ぜるのはやめないか?」

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