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第二章、十三を読んでいただきありがとうございます。部屋に居るまま、空が見えるって気持ちよさそうですよね。星空を眺めながら眠ってみたいなぁ
「部屋は寝室を含めて五室でして、リビングルーム、キッチン、浴室とひと通り揃ってございます」
とにかく、広さの解放感と、床から家具、壁も照明も何から何まで、全ての高級感が凄い。
なのに、豪華なだけではなくて。
全体的に落ち着いた雰囲気で、気が休まるのは色合いが良いからだろうか。
リビングの絨毯は明度違いのグレーを基調としていて、壁はオフホワイトと薄いグレーが調和している。
ワインレッドの大きなソファにオットマン、ふかふかのクッションたち。
大理石を天板にしたテーブル。
寝室には淡いグリーンが要所に差し込んであって、安心感がさらに増した感じがする。
そしてクイーンベッドが二台と、フットベンチ。
広さはあるけれど、寝室は広過ぎないようにしてあるのかもしれない。
基本を押さえて、特別でありながら日常感がどこかにある。
これはさすがに、一度は泊まってみたいホテルだと、誰もが思うだろう。
「特別を日常に。をコンセプトにしております。お気に召すと良いのですが」
「は、はい。とっても……とっても素敵です」
完璧な紳士は、心から安堵したような微笑みを見せた。
「全部ステキ~! ねぇサラ! この高さでも噴水届いてるぅぅ」
掃き出し窓くらいの大きな窓に際まで寄って、リザは噴き上がって来た水のアートを楽しんでいる。
「そちらもエレベーターと同じく、現在の最高技術を用いたもので当ホテル自慢でございます」
部屋は好みがあるから謙虚に構えていて、けれどそういったものは、しっかりと自慢だと伝えるのは好感度が高い。
――って、お金を払っているわけでもないのに、生意気なことを考えてしまった。
「そしてもう一つ。こちらは好みが分かれる所なのですが……」
彼はそう言って、いつの間にか手に持っていたリモコンをこちらに見せ、そして真ん中のボタンを押した。
すると、この部屋の壁と床を除いた全て――外壁部分と天井が、消えた。
「壁が無くなった訳ではございませんので、ご安心ください」
「うわわわ」
「え~~すごぉい」
私たちは、シェナも含めて全員が飛べるので、恐怖はない。
けれど、何の力も使わず、地に足をつけた状態でこの景色というのは、目を見張るものがあった。
「と、このように、空中ホテルならではの展望をご提供しております」
星空と、水平方向の景色は全て、私たちだけのものになった。
この部屋が最上階で、そして一室しかないらしい。
と言っても、高層ビルは他にもあるので、遠くから覗かれないように気を付けないといけないけれど。
「言い忘れておりましたが、外からはマジックミラーのように、こちらを見られる心配はございません。光学迷彩のように、と言った方が伝わり易いでしょうか」
「なるほど……最新技術、ですか?」
「ええ、でもこれは、十年も前からございました。当時にこれを知り、当ホテル唯一の部屋のコンセプトを思い付いたのです」
「……そういう技術で、戦争も増えたのですか?」
やっと、一番聞きたいことを聞けるタイミングになった。